2022年03月11日掲載

BOOK REVIEW - 『M&A後の組織・職場づくり入門 ―「人と組織」にフォーカスした企業合併をいかに進めるか』

齊藤光弘、中原 淳 編著/東南裕美、柴井伶太、佐藤 聖 著
A5判/324ページ/2400円+税/ダイヤモンド社 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊

 Mergers and Acquisitions(企業の合併・買収)の頭文字をとった言葉であるM&Aは、日本企業が関わる件数に限っても急増しており、近年では日常的に飛び交う用語となっている。基本的には企業の成長スピードを速める手段、また、事業継続を意図して行われるM&Aであるが、「M&A後の組織・職場づくり」がうまくいかないといった「もったいない」事例が実に多いと筆者らは指摘する。本書は、この問題に対処すべく、コンサルタントや事業継承ファームのマネージャーとしてM&Aに関し豊富な知見を持つ齊藤光弘氏と、人材開発・組織開発等の研究者である中原 淳氏が中心となり、組織・職場づくりの観点から調査データ等に基づいた提言をしていくものである。

 第1章はM&Aの概要や市場の背景等を説明し、続く第2章でM&A後の統合(PMI:Post Merger Integration)がうまくいかない理由について、日本特有の課題にも触れながら探る。第3章は、PMIのプロセスで発生する人と組織の課題を"組織づくり(組織変革・組織開発)のレンズ"を通して見て、必要な取り組みの理解を進めている。また、社会心理学者クルト・レヴィンの「組織づくりの3段階モデル」(解凍―変化―再凍結)が、M&A後の組織・職場ではどのようなプロセスで進むかについて説明する。

 第4~6章は前章の3段階を「解凍(M&A前夜)」「変化(M&A直後)」「再凍結(M&A後3カ月以降)」とし、各段階の具体的なアクションを解説する。第7~8章では実務家による事例と有識者によるアドバイスを示し、終章では"組織づくりのレンズ"をPMIに生かすためのポイント(「情報を共有する」「対話する」「意味づける」「主導する」「文化を育む」)を提示して、全体を締めくくっている。各セクションは架空の人物による会話から始まるため、とても読み進めやすい。自社でM&Aの話が出た際にぜひ本書を活用いただきたい。

M&A後の組織・職場づくり入門 ―「人と組織」にフォーカスした企業合併をいかに進めるか

内容紹介
M&Aを失敗させる「人と組織」の問題に
データに基づいた解決策を示す

■社員の不安や葛藤をマネジメントするには
■異なる組織文化をどのように統合するか
■統合プロセスに「対話」が効果的な理由
■現場マネジャーによる社員の定着支援

人材開発・組織開発の専門家によるアクション提案!
人事担当者、現場マネジャーにも読んでほしい一冊