2022年03月11日掲載

BOOK REVIEW - 『ジョブ型人事で人を育てる ―人的資本経営の実践書』

内藤琢磨 編著
株式会社野村総合研究所 経営DXコンサルティング部 
人事戦略・チェンジマネジメントグループ グループマネージャー 上席コンサルタント 

A5判/192ページ/定価2200円+税/中央経済社 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊

 近年、各メディアで取り上げられている「ジョブ型人事」だが、その多くはこれまで「人件費のコントロール」「年功打破」「専門人財の確保」といった側面でしか捉えられてこなかった。本書ではジョブ型人事を「人を育てるための人財戦略」と再定義し、企業の人財力強化の突破口とすべく提言を行う。

 旧来の「職能型人事制度」と比べ、ジョブ型人事では、等級・給与や雇用の在り方以上に、「人の育て方」に鮮明な違いが現れているという。社員のキャリア形成に関しても、職能型では実質的に会社に委ねられる一方、ジョブ型では社員個人が主導するもので、意思さえあればチャンスを獲得できる範囲が格段に広い。こうした社員のチャレンジ(=リスキリング)を促し、予測不能な経営環境の変化に対応できるように、マネジャーには自組織に「学びのカルチャー」を醸成し、変化に柔軟に対応できるケイパビリティを具備するという新たな役割が求められている。こうした"ジョブ型で人を育てる"国内の先進事例として、ソニーグループ、パーソルグループ、りそなグループを紹介している。

 さらに、経営層と人事部門がそれぞれの立場で主導すべき役割を整理している。特に人事部門は、役割が職能型人事の時代と大きく変化したことを示した上で、ジョブ型人事を適切に運用し人を強く育てていくために、自らの役割を大きく変えていく必要があると指摘する。その上で、これからの人事部門に求められる能力は、「ビジネスHRスキル」「HRエンジニアスキル」「デザインスキル」に集約されるという。また、こうした提言以外にも、日本企業が90年代、2000年代に直面したジョブ型人事の検討局面など歴史の振り返り、シーメンスやAT&Tといった欧米企業の事例にも触れている。ジョブ型人事の導入・運用を検討している担当者はもちろん、改めて「ジョブ型とは何か」を学ぶ際にも役立つだろう。

ジョブ型人事で人を育てる ―人的資本経営の実践書

内容紹介
ジョブ型人事でチャレンジ機会を増やし、人財投資を加速して「多様」で「自律」した「強い」人をつくる!

ジョブ型人事でチャレンジ機会を増やし、人財投資を加速して「多様」で「自律」した「強い」人をつくる。
ソニーグループ、パーソルグループ、りそなグループ、シーメンス、AT&Tなどの先進事例を紹介。
ジョブ型人事を“人を育てるための人財戦略”として再定義することで、人財力強化の突破口になるよう提言する。