佐藤博樹、武石恵美子、坂爪洋美 著/佐藤博樹、武石恵美子 責任編集
A5判/224ページ/2500円+税/中央経済社
A5判/224ページ/2500円+税/中央経済社
BOOK REVIEW ―人事パーソンへオススメの新刊
■ 「ダイバーシティ経営」とは、多様な人材を受け入れ、それぞれが保有する能力を発揮できるように支援するマネジメントを指す。多様な能力や特長を活かし、経営成果として結実させるという戦略をもって組織を運営することが、ダイバーシティ経営の目的となる。日本国内でも2010年代後半から関心が高まっている。ただ、社員の同質性・均一性を重視することで効率的な人材マネジメントを実現してきた日本企業にとって、ダイバーシティ経営を推進することは、人事戦略の抜本的な見直しを伴い、難易度が高いと考えられる。本書は、日本企業が直面している課題を踏まえ、多様な人材の能力発揮を経営価値の向上につなげるために不可欠な人事管理や社員に求められる取り組みを紹介する。
■ 日本企業がダイバーシティ経営を実現するためには、人事管理システム改革と働き方改革がカギになる――と本書は主張する。「メンバーシップ型雇用」と特徴づけられる人事管理システムの改革のためには、「ジョブ型雇用」への安易な転換を行うだけではなく、キャリア形成の形をいかに「企業主導型」から「企業・社員調整型」へ移行できるかが重要だ。働き方改革に関しては、働く時間・場所を柔軟にするのと同時に、社員自らが仕事と生活の「境界」を適切に管理し、「リカバリー経験」を実現することも大切だ。また、ダイバーシティ経営の実現には、前提として「自律的なキャリア形成」を行う新たな社員モデルが求められる。そのため、自律的なキャリア形成・開発を支援し、自律的なキャリア決定を受け止め、自発的な学びや経験の拡大を促す観点から人事制度を検討すべきである。
■ 本書では、ダイバーシティ経営の定義や成果、メカニズムについて、先行研究の豊富なデータを紹介しているほか、欧州企業6社のインタビューを通して日本企業への示唆も示している。ダイバーシティ経営を実践に移すことに戸惑いがある人事リーダーであっても、データや生の声に裏打ちされた本書の主張には納得できるはずだ。
内容紹介 日本企業が直面している課題を踏まえ、多様な人材の能力発揮を経営価値の向上につなげるために不可欠な人事管理、求められる社員像やそれに関連する取組みを紹介する。 |