2022年04月08日掲載

BOOK REVIEW - 『労働組合の「ジェンダー平等」への挑戦』

後藤嘉代 著
労働調査協議会 主任調査研究員 
A5判/147ページ/2000円+税/日本生産性本部生産性労働情報センター 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊

 年齢・性別、国籍や働き方なども多様な人材が安心して働ける職場を実現するために、近年では労働組合の活動においても、「多様化」への対応が求められている。一方で、こと性別の多様化においては、女性役員比率の低さなど、企業と同様に労働組合活動でも課題が山積する。本書では、長年にわたりさまざまなテーマで労働組合の調査を行っている筆者が、ジェンダーに焦点を当て、女性の働き方の変化とともに、労働組合における男女平等参画の取り組みの現状、ジェンダー平等に向けた今後の在り方について考察する。

 本書は第Ⅰ~Ⅲ部から成る本編と補論で構成される。第Ⅰ部は「男女共同参画基本計画」が策定された2000年以降の女性の働き方と、労働組合と女性の関係、非正規労働者の組織化について、各種統計データ、労働組合の取り組み事例をひもときながら課題をあぶり出していく。結婚・出産を経ながら働き続ける女性の増加、また2000年代後半に女性比率が高い非正規労働者の組織化が進んだことによる変化を捉えることができる。第Ⅱ部では、労働組合におけるジェンダー平等の取り組みを解説する。特に女性役員の選出に焦点を当て、筆者の知見から女性役員育成の課題を考察していく。

 第Ⅲ部前半では、高齢者、外国人、性的マイノリティの組合員がそれぞれに抱える課題や、組合活動に参画するための方策を検討する。続く第Ⅲ部後半は、本書を振り返り、ジェンダー平等の実現と、組合員の多様化への対応に向けて、今後の労働組合に求められる機能や役割を論じる。本書の終盤には、補論として企業の社会的責任であるCSRの実現に向けた労働組合の取り組みを扱っている。「男性・正社員」が中心であった労働組合に求められている変化を捉えるために、組合活動に関わる方や人事担当者にはぜひご一読いただきたい。

労働組合の「ジェンダー平等」への挑戦

内容紹介
2000年以降の女性の働き方の変化と、労働組合の男女平等参画の取り組みを振り返り、労働組合運動におけるジェンダーの主流化を実現するための方策について検討。組合員の多様化の現状と課題も取り上げる。

労働組合はこの数年、ジェンダー平等に加え、組合員の「多様性」に応じた活動にシフトしている。これらからの労働組合は、高年齢層や外国人の組合員など、新たなメンバーとともに労働運動を構築していくことが求められている。
本書では、労働組合の男女平等参画、ジェンダー平等、そして組合員の多様化について、企業別・産業別・ナショナルセンター各レベルの労働運動の機能や活動の在り方について検討を試みている。
連合に初の女性会長が誕生した折、2000年代20年間の女性の働き方の変化を振り返り、労働組合におけるジェンダーの主流化を実現させるための一冊。