2022年04月08日掲載

BOOK REVIEW - 『シニア人財を戦力化する人事・賃金・報酬制度の作り方 ―ジョブ型人事制度を見据えた70歳雇用延長への対応―』

菊谷寛之 著
株式会社プライムコンサルタント 代表 
A5判/260ページ/2700円+税/第一法規 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊

 2021年4月施行の改正高年齢者雇用安定法は、65歳までの雇用確保措置の義務に加えて、新たに70歳までの高年齢者就業確保措置を講じる努力義務を企業に求めている。ただ、ノウハウや人的余裕、資金力がない大多数の企業にとって、70歳までの就業確保措置は「何から、どのように検討すればいいか分からない」のが現状ではないか。そこで本書は、法律知識や賃金制度設計の勘どころを押さえた、実務的な解決のためのガイダンスを提供する。

 企業が雇用による措置の中で「70歳までの就業確保措置の努力義務」に対応するために、「定年延長、定年廃止、60歳定年制または定年延長と継続雇用制度の組み合わせ、のいずれかを選択」することになる。ただし、現状の年功的な賃金体系を温存したままで、定年延長・廃止や65歳までの定年延長と70歳までの継続雇用との組み合わせへと移行するとなれば、貢献度に対する賃金がオーバーコストになるなどの問題も多い。そこで筆者は、60歳定年の下で正社員に役割給を導入することを前提に、「シニア社員制度」や「全員同一基準での65歳定年延長」を導入することを提案している。

 本書は、前述の対策を実践している中小企業2社を紹介しており、新制度を検討する際の参考になる。また、複雑さを増す改正高年齢者雇用安定法の法律・省令・指針・Q&Aなどの各種資料を体系的に読みやすく整理したほか、日本の賃金制度の基礎知識や沿革を紹介した上で、日本企業の典型的な賃金・人事制度の基本パターンなど、ベーシックな内容も解説している。今後、70歳雇用延長が、現在の「努力義務」から「義務」となることも見据えて、対応策を検討するヒントとして本書を活用してほしい。

シニア人財を戦力化する人事・賃金・報酬制度の作り方
―ジョブ型人事制度を見据えた70歳雇用延長への対応―

内容紹介
60歳以降の高年齢者を戦力化するための人事・賃金・報酬制度の作り方について、「ジョブ型雇用」の人事制度への移行がしやすい「役割給」の視点から、豊富な図表や事例を交えて解説。

70歳までの雇用延長措置を主旨とする改正高年齢者雇用安定法の内容と60歳以降の高年齢者を戦力化するための人事・賃金・報酬制度の作り方について、「ジョブ型雇用」の人事制度への移行がしやすい「役割給」の視点から豊富な図表や事例を交えて解説
○改正高年齢者雇用安定法に基づく「70歳までの就業機会の確保」について理解できる!(2021年4月1日施行)
○能力・技術のある高年齢者を戦力化(=人財化)するための人事・賃金・報酬制度について「ジョブ型人事制度」への移行がしやすい「役割給」の視点から具体的なモデル賃金額等の数字や賃金テーブル等豊富な図表や企業事例を交えて解説!
○悩むことが多い「報酬金額の妥当性」について、厚労省賃金統計値を基にした解説で現実的な制度設計ができる!