2022年04月22日掲載

BOOK REVIEW - 『実務 中国労働法 ―日中対比で学ぶ最新労務管理』

五十嵐 充、姚 珊 編著代表 森・濱田松本法律事務所中国プラクティスグループ 著
A5判/214ページ/2000円+税/経団連出版 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 「中国のサラリーマンは何歳で定年?」「中国駐在員の労務トラブルで準拠する法は?」――。日本から中国へ3万社を超える企業が進出している中で、中国における労働問題に頭を悩ませている日本企業の人事担当者も多いのではないか。その理由の一つは、中国の労働法の運用実態が定かでないことであろう。法令の規定が分かっていても、実務での適用における「勘どころ」が分からなければ、現場での問題を解決することは難しい。本書は、中国における労働者の採用から労働条件の設定・変更、労働契約の終了に至るまで、全13章にわたって分かりやすく解説し、労働問題の解決の糸口をつかめる実践的な内容となっている。

■ 各章は、重要な基礎知識の解説に始まり、実務Q&A、日本と中国の法制度・運用や慣習の違い、近年問題になりやすいトピックを解説するコラムで構成される。例えば、日本では現在男女とも60歳を定年としているが、中国では男性が60歳、女性は管理職が55歳、一般職が50歳定年となっており、定年再雇用する際の注意点もそれぞれのケースで異なる。また、基本的な労働法の他に地方独自のルールが定められているケースが多いことも中国の特徴だ。最低賃金額の算定に際して、社会保険料の個人負担分を北京市や上海市では「含めない」、江蘇省では「含める」などの違いがあるという。日本の担当者が扱う機会も多いだろう、現地における「外国人雇用」については、「日本人をはじめ外国人に対しては異なる労働規制が適用される場合がある。特に就労許可に関する制度は変化も激しく、地方によって運用も異なるため、注意しなければならない」と指摘している。

■ 既に中国に進出している企業や検討中の企業も含めて、人事労務担当や現地法人の責任者が中国での雇用管理を適切に行うために、問題や疑問を解決する実践書として本書を活用してほしい。

実務 中国労働法 ―日中対比で学ぶ最新労務管理

内容紹介
◆日本との違いや実務対応がわかる
◆地方ごとのルールを詳述
◆根拠規定や人民法院(裁判所)判例、参考条例を網羅

日本から中国へは3万社を超える企業が進出しています。それら日系企業が、社会主義に基づいた独自の法体系が採用されている中国でビジネスを進めるにあたっては、トラブルに巻き込まれることも少なくありません。実際、労働者の権利意識の高まりもあり、中国における労働紛争案件は増加傾向にあります。そこで本書では、企業運営にとって欠くことのできない人事労務案件に焦点を絞り、適切な対応法を探っていきます。
中国の人事労務関連の基本的な法律としては、「労働法」「労働契約法」があげられますが、毎年のように変更されるため、適切に対応することが重要です。また、地方ごとのルール(地方性法規等)が制定されていることが多く、例えば私傷病による休暇日数は、北京市と上海市ではルールが異なります。地方性法規等と法律との間に齟齬がある場合には、どちらの効力が優越するかが問題となります。原則的には法律が地方性法規等に優越しますが、実務上は、地方性法規等が優先適用される場面もありますので、具体的な行動の前に、必ず労働行政当局に現地の運用を確認しなければなりません。加えて、日本人をはじめ外国人に対しては異なる労働規制が適用される場合があります。特に就労許可に関する制度は変化も激しく、地方によって運用も異なるため、注意が必要です。
中国でビジネスを展開するうえでの実務書としておすすめします。