2022年05月11日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2022年5月

ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介

(調査・編集:主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 近年、新卒採用においてもAI人材やデータアナリストなど一部の高度スキルを保有する人材に対しては、これまでの同期で横一線の初任給ではなく、700万~1000万円規模の初任給を提示する企業が徐々にですが現れてきています。多くは採用が困難なエンジニア人材を対象としていますが、中にはくら寿司のように海外出店を担えるようなビジネスレベルの英語力と簿記の知識を保有する文系人材をも対象とする企業も出てきています。
 一方、新卒入社者の初任給を一律で大幅に引き上げる動きはあまり見られていませんでしたが、今年、二つの動きが出てきています。一つは、バンダイナムコグループの例です。2022年4月入社の大卒初任給を昨年の22万4000円から29万円へと約30%も引き上げるというものですが、こちらは、業績に連動して上下の変動幅が大きい賞与の年収における比率を下げ、安定的な月額給与の比率を高める報酬制度の見直しに伴うものとのこと。
 もう一つは、日本酒「獺祭」の蔵元である旭酒造の例です。こちらは大卒初任給を昨年の21万円から30万円へと約43%もの大幅な引き上げとなっていますが、同社のケースは、年収に占める賞与比率の見直しではなく、純粋に給与の引き上げによるものです。既存社員については2021年10月に先行して引き上げを行っており、入社2年目以上の社員の給与が今春入社者を下回ることはないとのこと。また、同社は2022~26年の5年間を処遇改善期間と位置づけ、基本給の倍増を計画し、毎年大幅な引き上げが予定されています。総額人件費の大幅な上昇が見込まれますが、採用力の強化、エンゲージメントの向上、技術の確実な継承等が、好調な業績のさらなる向上に必ず寄与するものと信じた経営者の英断です。
 2000年代初頭に大卒平均初任給が20万円を超えて間もなく20年が経過しようとしていますが、その間の金額の上がり幅はわずか2万円にも満たないものです。同社の試みが停滞する初任給相場に一石を投じ、人的資本経営が叫ばれ始める中、若年層への投資がより積極的に進むと面白くなりそうですね。

対面形式のインターンシップ参加は約半数

 さて、今回も前回に引き続き、HR総研が「楽天みん就」と共同で2022年3月に実施した「2023年卒学生の就職活動動向調査」の結果を紹介します。前回は、2023年卒学生の就職意識を中心に取り上げましたが、今回は具体的な就職活動の状況について見ていきましょう。
 まずは、「インターンシップ」からです。インターンシップの参加社数、そのうち対面形式とオンライン形式のインターンシップ参加社数を文系・理系別に示したものが、[図表1]です。

[図表1]インターンシップ参加社数

資料出所:HR総研「2023年卒学生の就職活動動向調査」(2022年3月、以下図表も同じ)

 文系を見ると、全体で「0社」(「応募をしていない」と「応募はした」の合計、以下同じ)は16%ですから、残りの84%はなにがしかのインターンシップに参加したことになります。社数別では、「10社以上」が27%で最も多く、次いで「4~6社」が20%となっています。4社以上(「4~6社」から「10社以上」の合計、以下同じ)は57%と6割近くにも上ります。
 実施形式別に見ると、オンライン形式の「0社」は21%ですから、残りの8割近くは参加した経験があるのに対して、対面形式の「0社」は52%と過半数に及び、参加経験のある学生は半数以下ということになります。4社以上の参加割合を見ても、オンライン形式の49%に対して、対面形式はわずか6%しかなく、オンライン形式のインターンシップの割合が圧倒的に多いことが分かります。
 理系も文系と同様の傾向が見られ、全体で「0社」は文系より少ない12%に過ぎず、残り88%はインターンシップに参加した経験を持っています。オンライン形式の参加率85%(「0社」15%の残り)、対面形式の参加率50%(「0社」50%の残り)は、いずれも文系をやや上回ります。4社以上のインターンシップに参加した割合では、全体が59%、オンライン形式が51%と文系よりもわずかに多いものの、対面形式は4%と文系をわずかに下回っています。
 対面形式では、「1社」の割合が文系の22%に対して理系は30%と大幅に上回っており、複数日程で開催されることの多い対面形式のインターンシップには、理系は企業を絞って参加している傾向が見られます。理系は卒業研究・論文、学会への参加等で、文系よりも時間的な余裕の少ないことが起因しているものと推測されます。

春季休暇はもはやインターンシップ参加のピークにあらず

 続いて、インターンシップへの参加時期を「対面形式」と「オンライン形式」の形式別に比べてみましょう[図表2]。対面形式とオンライン形式の割合の差を捉えるために、母数は形式ごとの参加者数ではなく、インターンシップ全体での参加者数を共通の母数として扱っています。

[図表2]実施形式別インターンシップ参加時期(複数回答)

[注]「インターンシップ全体での参加者数」を共通の母数として実施形式別の割合を算出した。

 対面形式から見ていくと、「2021年8月」20%、「2021年9月」19%の夏季休暇中がピークとなりますが、それでも参加率は2割以下です。「2021年12月」が18%でそれに続きますが、「2021年7月」から「2022年1月」までは、他の月でも参加率は11~15%を維持しており、コンスタントに1割以上の学生が参加していることが分かります。
 一方、オンライン形式を見ると、最多はやはり「2021年8月」で55%、次いで「2021年9月」50%となっています。「2021年12月」45%がそれに次ぎますが、「2022年1月」43%、「2021年10月」42%、「2021年11月」41%もそれほどの差がなく、長期休暇に関係なく参加している実態が浮かんできます。
 経団連が就職ルールを主導していた時代は、夏季休暇の8・9月よりも、3月1日の会社広報解禁日を目前にした春季休暇の1・2月のほうが、企業のインターンシップ開催数も、学生の参加数も多い傾向にありましたが、政府主導に代わった2021年卒採用以降は、採用活動の前倒しがより顕著となり、夏季休暇中の開催数・参加数のほうが多くなる傾向にあります。「2022年2月」に至っては34%となっており、平常月である「2021年10月」や「2021年11月」を大きく下回っています。もはや2月は、インターンシップに参加する時期ではなく、面接選考を受ける時期になってしまっているようです。

コロナ禍で復権の兆しを見せる就職サイト

 今度は、学生が活用している就職サイトについて見てみましょう。就職サイトは、従来からの総合型の就職ナビに加えて、逆求人型就職サイト、クチコミ就職サイトまでを含みます。
 まずは、「活用している就職サイト」を複数選択方式ですべて選択してもらったところ、「マイナビ」が昨年同時期調査よりもポイントを伸ばしてトップを維持し、文系・理系ともに77%(昨年 文系:74%、理系:72%)と8割近い学生に活用されています[図表3]

[図表3]活用している就職サイトTOP10(複数回答)

[注]「―」は、2022年卒調査の選択肢になかったことを示す([図表4]も同じ)。

 2位から4位までも文系・理系ともに同じ順位となっており、2位は「楽天みん就」で文系・理系ともに64%、3位は「リクナビ」で文系63%、理系61%、4位はクチコミ就職サイトの「ONE CAREER」で文系51%、理系52%と昨年よりもポイントを伸ばして半数超えを果たしました。逆求人型就職サイトの代表格である「OfferBox」も昨年よりもポイントを伸ばし、文系は43%と4割を超えて5位、理系も34%で6位につけています。
 その他、2021年6月調査から選択肢に追加したクチコミ就職サイトの「OpenWork」と「unistyle」が文系・理系ともにランクしたのをはじめ、理系に特化した逆求人型就職サイト「LabBase」も理系の10位にランクインしています。TOP10にランクインした就職サイトのほか、ランク外の多くの就職サイトが昨年よりもポイントを上げ、逆に「就職ナビや逆求人型サイトは利用していない」はポイントを下げる結果となっています。
 オンライン化の波の中で対面形式の合同セミナーや合同会社説明会が減少し、キャリアセンターの活用や、先輩や友人とのリアルな情報交換もできない中、企業へのエントリーや説明会申込みだけでなく、就活ノウハウや過去のエントリーシート、面接選考内容などの情報源として、従来型も含めた就職サイトのニーズが再び高まっているものと考えられます。

 次に、「最も活用している就職サイト」を一つだけ選択してもらった結果を紹介します[図表4]
 文系・理系ともにトップは前項と同様に「マイナビ」で、文系48%、理系39%を占めています。2位から5位までも文系・理系ともに同じ順位で、2位「ONE CAREER」、3位「リクナビ」、4位「楽天みん就」、5位「OfferBox」となっています。

[図表4]最も活用している就職サイトTOP10(単一回答)

 ただ、注目すべきは、選択肢を増やしたことも多少影響しているかもしれませんが、「ONE CAREER」を除いて、いずれの就職サイトも前年調査結果をわずかながら下回っていることです。唯一「ONE CAREER」だけが、文系:昨年13→15%、理系:同14→19%と伸びを見せています。6位以下は、前年調査結果からポイントを上げた企業と下げた企業が混在しています。それだけ就職サイトの多様化が進んでいるといってよいでしょう。
 上位の就職サイトについて、選択理由を抜粋して紹介します。

【マイナビ】

・情報量の多さとアプリの使いやすさ(理系、上位私立大)

・学校が推奨していたから(理系、その他国公立大)

・WEBテストや就活対策の動画もあり、充実しているから(文系、上位国公立大)

・説明会・セミナーのスケジュール管理や、エントリー済みの企業を一括管理できるから(文系、早慶大クラス)

【ONE CAREER】

・過去の選考通過ESや選考フローが詳しく掲載されており参考になるから(理系、旧帝大クラス)

・口コミが充実しているのと、ONE CAREERが開催しているオンラインイベントも多様であること(文系、上位私立大)

・各選考段階前に確認して、面接のイメージをつかむため(文系、旧帝大クラス)

・内定者の選考体験をほとんどの企業について見ることができるから(文系、早慶大クラス)

【リクナビ】

・オンラインでの業界研究セミナーが多かったから(理系、旧帝大クラス)

・オープンエントリーシートが便利で企業も多い(理系、中堅私立大)

・最も早い時期から利用しており、毎日開く癖がついていたから。また、セミナーなどの参加特典を高確率でもらえたから(理系、その他国公立大)

・多くの企業が掲載されており、ページが分かりやすい。予定管理などもできるため便利である(文系、その他私立大)

楽観派が増えてもプレエントリーは減らず

 就職サイトや志望企業の採用ホームページでプレエントリーした社数を、文系・理系別に前年調査結果と比較した結果が[図表5]です。

[図表5]プレエントリー社数の2022年卒との比較

 文系・理系ともに傾向は同様で、まず目を引くのは「0社」が大きく伸びていることです。プレエントリーを1社もしていない学生の割合が、文系は昨年4%→10%へ、理系は同6%→12%へと2倍、あるいはそれ以上に増えているのです。
 前回の報告で、2022年卒よりも就職活動に対して「楽観派」が増えていると書きましたが、それが理由であれば次の「1~20社」の割合も増え、「21社以上」(「21~40社から「101社以上」の合計、以下同じ)の割合が減少しそうなものです。ところが、「1~20社」の割合を見ると、文系は昨年53%→48%、理系も同65%→58%へと減少し、逆に「21社以上」を見ると、文系は昨年42%→43%、理系も同28%→31%へと微増しています。就職活動を楽観視した結果としてプレエントリー社数は減少してもよさそうなものですが、現実にはそうなっていません。
 「0社」が増えた理由は、楽観視した結果と考えるよりも、プレエントリーをする前にインターンシップやセミナーに参加した企業の早期選考が開始され、プレエントリーをする必要性がなくなったと考えたほうがよさそうです。

対面形式の個別説明会参加者は半数以下

 ここからは、企業が個別に開催するセミナーや会社説明会(以下、個別説明会)への参加状況を見ていきましょう。個別説明会の参加社数、さらに個別説明会参加者(参加社数「0社」以外の選択者)を対象に、そのうち対面形式とオンライン形式の参加社数を文系・理系別に表示したものが[図表6]です。

[図表6]個別企業セミナー・説明会参加社数

 まず、文系を見ると、全体では「0社」が9%で、残りの91%は既に個別説明会に参加しています。社数は「6~10社」が最多で21%、次いで「4~5社」17%、「11~15社」13%、「21社以上」が12%で続きます。「6社以上」(「6~10社」から「21社以上」の合計、以下同じ)の個別説明会参加者が53%と過半数を占めます。
 個別説明会参加者の対面形式への参加状況を見ると、「0社」が55%と半数強を占め、対面形式の個別説明会に参加した経験を持つ学生は45%と半数に満たないことが分かります。参加社数でも「3社以下」(「1社」から「3社」の合計、以下同じ)が38%を占め、「6社以上」はわずか2%に過ぎません。
 一方、オンライン形式への参加状況を見ると、「0社」は5%にとどまり、個別説明会参加者のほとんどはオンライン形式の説明会への参加経験を持っています。参加社数でも「6~10社」が20%で最も多く、「4~5社」16%、「2社」13%が続き、「6社以上」の割合は46%と半数近くに及び、「3社以下」は33%と3分の1程度です。
 次に、理系を見ると、全体では「0社」が8%で、こちらも92%と大半の学生が個別説明会に参加しています。社数では「6~10社」が23%で最も多く、「4~5社」が21%で続きます。ただ、「21社以上」6%、「16~20社」4%と、大量社数の割合はそれぞれ文系の半分程度にとどまり、「6社以上」は43%と文系よりも10ポイントほど低い数字となっています。
 個別説明会参加者の対面形式への参加状況を見ると、「0社」が文系よりも10ポイント多い65%に及び、参加経験者は35%と3分の1強にとどまります。参加社数でも「3社以下」が31%と大勢を占め、「6社以上」はわずか1%です。
 オンライン形式への参加状況では、「0社」は文系より少ない4%にとどまり、文系と同様にほとんどの学生はオンライン形式の個別説明会に参加しています。参加社数でも「4~5社」21%が最も多く、「6~10社」20%が続きます。文系と比べると「3社以下」の割合が高く39%と4割近いものの、「6社以上」も35%を占めています。
 個別説明会の参加形式としては、文系・理系ともに圧倒的にオンライン形式が多く、参加社数では文系が理系を上回る状況となっていることが見て取れます。

 次に、個別説明会に初めて参加した時期を前年同時期調査と比較してみましょう[図表7](文理合計)。まず目につくのは、「前年6月以前」の大幅な伸びです。2022年卒では10%でしたが、2023年卒では18%へと8ポイントも伸び、全期間を通して最も多い割合となっています。「前年7月」「前年8月」も微増しており、この3項目の合計では10ポイントの増加となります。

[図表7]個別企業セミナー・説明会に初めて参加した時期の2022年卒との比較

 逆に2023年卒が下回っている月で顕著なのが、「当年2月」と「当年3月」です。「当年2月」は2022年卒では最多の15%でしたが、2023年卒では10%と5ポイントのマイナス、「当年3月」は2022年卒では2番目に多い12%でしたが、こちらも10%と2ポイントのマイナスとなっており、2項目を合計すると7ポイントの減少となります。
 これらの変化はその月にだけに現れるのではなく、初めて個別説明会に参加した月以降は、ずっと他の企業の個別説明会にも参加していた可能性が高く、その月以降にも影響が続くということです。2023年卒の個別説明会参加時期がいかに前倒しされていたかがお分かりいただけると思います。

前倒し傾向が鮮明な面接開始時期

 続いて、面接の状況について見てみましょう。面接受験社数、そのうち対面形式とオンライン形式の受験社数を文系・理系別に表示したものが[図表8]です。なお、[図表6]とは異なり、対面形式とオンライン形式の受験社数の割合は、面接受験者を分母としているわけではなく、すべての学生を分母としていますので、ご注意ください。

[図表8]面接受験社数

 まず、文系を見ると、全体では「0社」が30%で、残りの70%は既に面接を受けています。社数では、「4~5社」が最多で、次いで「2社」、「1社」がそれぞれ14%で続きます(四捨五入の結果、すべて14%で表記されていますが小数点以下が3項目ともすべて異なります)。「3社」も12%と多く、「5社以下」(「1社」から「4~5社」までの合計、以下同じ)で53%と過半数を占めます。中には「21社以上」という学生も2%ほどいます。
 実施形式別に見ると、対面形式の面接経験者は37%(「0社」63%の残り)なのに対して、オンライン形式の面接経験者は66%(「0社」34%の残り)と、面接においてもオンライン形式が主流であることが分かります。また、社数でも、対面形式は「1社」と「2社」で大半を占めるのに対して、オンライン形式では「1社」から「4~5社」の割合がいずれも12~18%と多いものの、「6社以上」の割合も13%と1割を超えます。
 次に、理系を見ると、全体では「0社」が22%で、残りの78%が既に面接を経験しており、個別説明会の参加社数は文系よりも少ないものの、面接経験者の割合は8ポイントほど高くなっています。面接社数では、文系同様に「4~5社」が19%で最も多く、「1社」18%、「2社」15%が続きます。「5社以下」の割合は63%と文系よりも10ポイントほど高くなっています。
 実施形式別に見ると、対面形式の面接経験者は31%(「0社」69%の残り)なのに対して、オンライン形式の面接経験者は74%(「0社」26%の残り)と、文系と比べて対面形式の面接経験者は少なく、オンライン形式の面接経験者はさらに多くなっています。理系のほうがオンライン形式の面接実施率が高いということなのでしょう。ただ、面接社数を見ると、オンライン形式でも「16~20社」「21社以上」は1%未満となっており、個別説明会と同様に、文系よりも少なくなっているようです。

 次に、初めて面接を受けた時期を前年同時期調査と比較したものが[図表9](文理合計)です。「前年6月以前」から「当年1月」まで、2023年卒のほうがほぼ毎月1~4ポイント上回り、「当年2月」になって初めて2022年卒より4ポイント下回り、「当年3月」に至っては12ポイントも減少し、2022年卒と比較して半減しています。

[図表9]面接を初めて受けた時期の2022年卒との比較

 2022年卒では「当年2月」(25%)と「当年3月」(24%)の2カ月間がピークを形成し、この2カ月だけで49%とほぼ半数を占めていたのに対して、2023年卒では「当年2月」(21%)のみがピークを形成し、「当年3月」は一気に減少して「前年11月」と同程度の12%となっています。「当年2月」のヤマも2022年卒より4ポイント低くなっています。2023年卒では「前年12月」までに全体のちょうど50%に達し、個別説明会の参加時期が前倒しになるのと合わせて、面接も約1カ月の前倒し傾向となっています。

逆求人型就職サイトとインターンシップが早期内定を助長

 最後に、3月中旬時点での内定取得状況を文系・理系別に確認したものが、[図表10]です。内定を取得した社数だけでなく、逆求人型就職サイトを経由した企業からのアプローチをきっかけにして内定取得につながった社数、そしてインターンシップへの参加をきっかけに行われた早期選考が内定取得につながった社数を合わせて聞いています。

[図表10]3月中旬時点の内定取得社数

 まず、文系を見ると、内定社数「0社」は68%で、残りの32%は最低1社の内定を取得していることになります。つまり、内定率は32%ということです。逆求人型就職サイトからのアプローチをきっかけにした内定を持つ学生は9%(「0社」91%の残り)で、1割に届きません。一方、インターンシップ参加をきっかけにした内定保有者は24%(「0社」76%の残り)で、ほぼ4人に1人の割合となっています。
 逆求人型就職サイトからのアプローチをきっかけにインターンシップに参加した例や、それぞれをきっかけに2社以上から内定を取得した例もあるでしょうから、両施策をきっかけにした内定保有者は単純に両者を合計した数字にはなりません。そこで、回答結果のRAWデータにまでさかのぼって確認したところ、逆求人型就職サイトからのアプローチ、またはインターンシップに参加したことをきっかけに早期の選考に臨み、結果的に早期内定につながった学生の割合は27%でした。内定率は32%でしたから、内定者に占める割合は27/32となり、実に84%に達します。
 では、理系の状況はどうでしょうか。まだ内定を取得していない学生(「0社」)は58%で、残り42%が既に内定を保有しています。内定率は、文系より10ポイントも高い42%ということです。また、「4社以上」(「4~6社」から「10社以上」までの合計)の内定を取得した学生が5%もいます。
 逆求人型就職サイトからのアプローチをきっかけにした内定を持つ学生は文系と同じく9%(「0社」91%の残り)です。インターンシップへの参加をきっかけにした内定保有者は33%(「0社」67%の残り)で、文系よりも9ポイント高く、3人に1人の割合になっています。また、既に「2社以上」(「2社」から「10社以上」の合計)の内定を保有する学生が15%(文系8%)もいるなど、内定率および内定保有社数では理系が文系をリードしている形になっています。
 文系同様に、逆求人型就職サイト、またはインターンシップをきっかけに内定につながった割合を確認してみたところ、文系よりも多い36%となりました。内定率が42%でしたから、内定者に占める割合は36/42となり、文系よりもさらに高い86%に及びます。これにより、逆求人型就職サイトやインターンシップが早期内定を助長しているという論調は、あながち間違いではないことが分かります。
 2025年卒採用からは、「5日間」など一定期間以上のインターンシップについて、採用活動と結びつけることを容認する形の就職ルール変更が行われる見通しとなっており、早期内定の動きはさらに加速することになるでしょう。

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
https://www.hrpro.co.jp/