2022年05月13日掲載

BOOK REVIEW - 『人事の企み~したたかに経営を動かすための作戦集~』

海老原 嗣生 著
雇用ジャーナリスト、ニッチモ代表取締役 
A5判/312ページ/2000円+税/日経BP 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 経営を考える上で、「人」は重要な問題である一方、「人」に関する話は間違いが多く、そして見えにくいことが多い。例えば、「少子化で良い大卒社員が採れない」といった日本の雇用環境に関する話題や、「中小企業だから採用ができない」「次世代リーダーはグローバル経験が必須」といった自社での採用や育成、組織開発に関する固定観念も、掘り下げて考えていくと必ずしも事実ではない場合がある。このような"よくある現場の声"を挙げた上で、そう思い込んでいるだけで実態は違うのではないか――と著者は投げかける。ロジック、データ、事例、具体策を示しながら、「人」に関わる重要テーマについて、間違いがちな点、見え(にく)い点を一つひとつ解きほぐしていくのが、本書の読みどころとなっている。

■ 本書では、大きく分けて四つのテーマを取り上げ、それぞれのテーマで経営を動かしていくための"作戦"を描いていく。第1作戦「経営環境編」では、少子化や女性活躍、AIの活用など日本の雇用環境を取り巻く変化を解説。続く第2作戦は「組織風土」を取り上げ、組織風土改革を進める上で陥りがちな落とし穴と、打開策を論じていく。第3作戦は「採用編」として、中小企業や無名企業でも採用に成功するための秘訣(ひけつ)を伝授する。最後となる第4作戦「組織設計と育成編」では、自社の「キャリアの型」に合った育成手法や、リーダー育成の本質を解説する。

■ 同著者の前作『人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~』に続き、日本の人事を論じた一冊であるが、前作では理論にフォーカスしていたのに対して、本書は人事の現場で使える実践的な内容を豊富に紹介しているのが特徴だ。雇用ジャーナリストである著者の鋭い切り口で、雇用・人事の実態を描いた本書は、これからの人材戦略を練り、現場に展開していく際の一助となるだろう。

人事の企み~したたかに経営を動かすための作戦集~

内容紹介
少子化で良い大卒社員が採れない、現場の若手育成にも人事は関与すべき…。
間違いがちで見え難い「人事」に関するテーマを、ロジック・データ・事例・具体策で解きほぐし、強い組織を作る人事労務の戦術・作戦を伝授する。

「人」に関する話は、「間違っている」ことや「見えにくい」ことが多いもの。この本では、そうした俗諺を、ロジック、データ、事例、具体策で、一つひとつ解きほぐす。新卒社員の質の低下、AIによる失業、社員の高齢化とモチベーションの低下……。巷で言われる課題は、本当に大きな問題なのか。逆に「良い人を採用すれば業績は上がる」「変革にはリーダーが必要」など"常識"に死角はないのか。
前作『人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~』でジョブ型雇用の問題に鋭く斬り込んだ雇用ジャーナリストの海老原氏が、再び人事の虚妄を断つ。表層的な「戦略」に終わらず、現場で役立ち、会社を変える実践的な戦術と作戦を教示する。雇用のご意見番、濱口桂一郎氏による解説も!