奈良県職員自殺で賠償命令 地裁「業務でうつ病発症」

 奈良県庁に勤めていた西田幹さん=当時(35)=が2017年に自殺したのは過重な業務でうつ病を発症したのが原因として、西田さんの両親が県に計約1億207万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、奈良地裁(寺本佳子裁判長)は31日、計約6811万円の賠償を命じた。過重な業務と、うつ病の発症、自殺との因果関係を認めた。
 西田さんの時間外勤務を軽減する措置を県が講じず、職員の心身の健康や安全に配慮する義務に違反したと指摘した。西田さんの父裕一さん(68)は判決後の記者会見で「敵を討ったと(息子に)伝えたい。(判決に)感謝している」と述べた。荒井正吾知事は「判決内容を精査した上で今後の対応を検討したい」とのコメントを出した。
 判決によると、西田さんは県教育委員会の教職員課に勤務していた15年4月上旬までに、うつ病を発症。16年4月に県砂防・災害対策課へ異動し、17年5月に同県大和郡山市の自宅で自殺した。
 判決は、教職員課で15年3~4月の1カ月の時間外勤務が150時間を超える過酷な業務だったとして、うつ病発症との因果関係を認定。異動後も、時間外勤務が自殺までの半年間で月平均70時間を超え過重だったとして、業務と自殺との因果関係を認めた。
 判決は、自殺の半年前の16年12月に産業医が西田さんに関し、精神疾患の治療中のため長時間勤務とならないよう対策と配慮が必要だと報告したのに、課長らは時間外勤務の軽減措置を講じなかったと指摘。軽減を西田さんの自由意思に委ねるだけだったと県の対応を批判した。自殺も予見できたと言及した。
 賠償額は両親が既に受給した遺族補償分などを減額した。
 地方公務員災害補償基金奈良県支部は19年5月、民間の労災に当たる「公務災害」と認定した。
(共同通信社)