2022年06月06日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2022年6月

ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介

(調査・編集:主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 6月に入り、2024年卒生向けの就職ナビ上では各社のインターンシップへの応募受付も開始され、早くも2024年卒採用が本格化しています。「マイナビ」や「リクナビ」といった従来型の就職ナビは、大学団体との関係が依然として深く、学業優先・早期化防止を名目として、インターンシップ応募(企業への応募者情報の提供)やインターンシップイベントへの参加は3年生の6月1日以降との申し合わせを順守していますが、新興の口コミ就職サイトや逆求人型就職サイトは大学団体とのしがらみは一切ありません。そもそも運営する就職サイト自体に、「2023年卒向け」とか「2024年卒向け」といった区分は存在せず、サイトは一つしか存在しません。そのため、就職活動期に至らない大学1年生や2年生が既に登録して利用しているという状況です。
 前回の本稿で取り上げた「最も活用している就職サイト」で、文系・理系ともに2位を獲得した口コミ就職サイト「ONE CAREER」を例に取れば、各企業へのインターンシップには5月からでも応募ができる状態になっていました。インターンシップやエントリー受付の情報には、タイトルの冒頭に【23卒向け】や【24卒向け】が付いており、それによって対象が区別されています。業界説明や就活ノウハウなど、年次を区別する必要のない一般的な読み物記事には、それらの表示はなく、どちらの年次の学生も対象としていることが分かります。「ONE CAREER」を活用する理由としては、過去の選考通過ESや選考体験を挙げる学生が多くなっていましたが、こういった時期の縛りのない情報発信や応募受付が可能なことなども魅力の一つなのでしょう。

課題はターゲット層の応募者集め

 さて、今回はHR総研が、2022年3月9~28日に企業の採用担当者を対象に実施した「2023年新卒採用動向調査」の結果を紹介します。
 まずは、2023年卒採用では何が課題とされていたのかを、前年の同時期に実施した「2022年新卒採用動向調査」の結果と比較しながら見ていきましょう[図表1]。

[図表1]2023年卒採用の課題(複数回答)

資料出所:HR総研「2023年新卒採用動向調査」(2022年3月 以下図表も同じ)

 課題として最も多く挙げられたのは、前年から10ポイントも伸ばした「ターゲット層の応募者を集めたい」で、51%と唯一半数を超えています。企業規模別では(図表略)、1001名以上の大企業で53%、301~1000名の中堅企業で54%、300名以下の中小企業でも48%と、すべての企業規模において最多となっています。
 次いで、「応募者の数を集めたい」31%、「内定辞退者を減らしたい」30%、「大学との関係を強化したい」23%、「選考辞退者を減らしたい」21%と続きます。「応募者の数を集めたい」は中堅企業と中小企業でともに33%と多く、「内定辞退者を減らしたい」は大企業と中堅企業で、こちらもともに35%と多くなっています。
 前年調査と比較して、順位あるいはポイントが大きく変動した項目を見ると、前述の「ターゲット層の応募者を集めたい」(前年41→51%)のほか、「内定辞退者を減らしたい」(同22→30%)、「選考辞退者を減らしたい」(同9→21%)といった、「辞退者の減少」を挙げる企業が多くなっていることが分かります。面接のオンライン化が進み、従来の対面形式での面接と比べて、どうしても企業側担当者の熱意や人柄が伝わりづらく、学生のグリップ力の低下から「内定辞退」や「選考辞退」が増えていることをうかがわせます。
 逆に、「オンライン・Web化対応を進めたい」は、前年の12%から7%へと5ポイント減少しています。コロナ禍での採用活動も3シーズン目を迎え、過去2年間で「オンライン・Web化対応」がある程度対応できているという自信からなのでしょう。

より重要となる施策トップは「採用ホームページ」

 次に、「2023年卒採用でより重要となる施策」を聞いてみたところ、最多は「採用ホームページ」で、前年の30%からさらに8ポイント伸ばして38%、次いで「自社セミナー・説明会」も前年の28%から5ポイント伸ばして33%となっています[図表2]

[図表2]2023年卒採用でより重要となる施策(複数回答)

 社員と応募学生との対面での接触機会を設定しづらい中、「採用ホームページ」での仕事紹介や社員紹介を充実させていく必要性を感じているものと推測されます。そのほか、「学内企業セミナー(3月以降)」(前年14→16%)、「キャリアセンターとの関係強化」(同11→15%)、「新卒紹介」(5→10%)などが前年からポイントを伸ばしています。多くの大学がオンライン授業から対面型授業へと大きく舵を切り直したことで、学生がキャンパスに戻って来ており、キャリアセンターの位置づけが再び見直されてきたということなのでしょう。
 一方、「就職ナビ」(同26→19%)、「Web面接(オンライン会議方式)」(同23→16%)は前年から大きくポイントを落としています。ポイントを落とした従来型の「就職ナビ」に対して、ポイント自体は低いものの「逆求人(オファー型)サイト」(同6→7%)は前年から微増となっています。学生の活用率だけでなく、企業での活用率でも明暗が表れてきているようです。「Web面接(オンライン会議方式)」については、前項の2023年卒採用の課題でも「オンライン・Web化対応を進めたい」がポイントを落としていたことに連動しているものと思われます。

2割の企業が採用予算アップ

 今回、採用予算の増減についても聞いてみたところ、企業規模による違いはあまり見られず、2割が「増える」(「かなり増える見込み(20%以上)」と「やや増える見込み(20%未満)」の合計)、7割強が「ほぼ変わらない」とし、「減る」(「やや減る見込み(20%未満)」と「かなり減る見込み(20%以上)」の合計)とした企業は1割弱という結果でした[図表3]

[図表3]2023年新卒採用活動の総予算の増減

 リクルートワークス研究所の「2023年3月卒業予定の大卒求人倍率」では、2022年卒の1.50倍から1.58倍へと0.08ポイント上昇し、採用活動を復活させる企業があるなど企業の採用意欲が回復へと向かう中、採用する側の企業としてはより採用難になることを見越して、予算を増額した企業のほうが多くなっているようです。
 では、どのような施策に対して予算を増やそうと考えているのでしょうか。全体の採用予算が増えた企業だけでなく、いずれか予算増の施策があると回答した企業に対して、予算増の施策を複数選択で回答してもらった結果が[図表4]です。

[図表4]2023年新卒採用活動で予算が増える施策(複数回答)

 最も多かったのは、前記の「より重要となる施策」でもトップの「採用ホームページ」で、すべての企業規模でトップとなっており、全体では34%と3分の1の企業が回答し、2位以下を大きく引き離しています。特に中小企業では41%と4割を超えます。
 次いで多かったのは、「より重要となる施策」では大きくポイントを落とした「就職ナビ」で、全体では17%ながら、大企業では22%と2割を超えます。続く「インターンシップ」も全体では13%にとどまるものの、大企業だけに限れば「就職ナビ」と同じく22%の企業が選択しています。
 図表が細かくなるため、企業規模別データの図表は本稿に掲載していませんが、上記の3施策以外で企業規模別にポイントの高かった項目を見ると、大企業では「適性検査」(17%)、中堅企業では「新卒紹介」(17%)、「学内セミナー(3月以降)」(13%)、中小企業では「学内セミナー(3月以降)」「就職ナビ主催の合同説明会(3月以降)」「入社案内」がいずれも15%となっています。

ダイレクトソーシング実施企業は4分の1

 続いて、企業規模別に「ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)」の実施状況について紹介します。本稿ではこの後、幾つかの項目について、「ダイレクトソーシング」の実施の有無をキーにしたクロス集計の結果も見ていくことで、「ダイレクトソーシング」を導入している企業の特徴を探っていきたいと思います。
 全体では、ダイレクトソーシングを「実施している」企業は24%と4分の1ほどとなっていますが、企業規模別に見ると、中小企業では19%と2割に満たないのに対して、大企業では26%、さらに中堅企業では33%と3社に1社の割合になっています[図表5]。大企業と応募者が競合しがちな中堅企業が最も新卒採用活動では苦戦しているといわれており、「ダイレクトソーシング」という「攻め」の施策についても積極的に取り組もうとしている様子がうかがえます。

[図表5]ダイレクトソーシング実施状況

 「ダイレクトソーシング」導入企業を対象に、具体的な施策を回答してもらったところ、最多は「逆求人サイト」で58%、次いで「社員からの紹介(リファラル採用)」49%と続き、3位以下は1割前後にとどまることから、この二つの施策が「ダイレクトソーシング」の代名詞といえそうです[図表6]。

[図表6]実施しているダイレクトソーシングの内容(複数回答)

 これらの施策の実施率を企業規模別に見ると、大企業では「社員からの紹介」56%に対して「逆求人サイト」は44%と、順位が逆転していることが分かります[図表7]。3位には「逆求人セミナー」(22%)がランクインしています。中堅企業と中小企業では、1位と2位は全体と同じく「逆求人サイト」(中堅:67%、中小:61%)、「社員からの紹介」(中堅:53%、中小:44%)となっていますが、3位については、中堅企業の「取引先等からの紹介(27%)に対して中小企業は「SNSの活用」(11%)と、全く異なる傾向となっています。

[図表7]実施しているダイレクトソーシングの内容TOP3(企業規模別)

 

ダイレクトソーシング活用企業はインターンシップの実施率が高い

 ここからはインターンシップについて見ていきます。まずは、インターンシップの実施状況を企業規模別とダイレクトソーシング実施の有無別でまとめたデータが[図表8]です。

[図表8]インターンシップの実施状況(企業規模&ダイレクトソーシング実施の有無別)

 まず、企業規模別に比較してみると、大企業では「実施した」(「前年は実施していないが、今年は実施した」と「前年同様に実施した」の合計)が71%に達するのに対して、中堅企業では60%、中小企業では38%と4割以下となっています。中小企業でのインターンシップ実施率が、大企業や中堅企業と比較すると顕著に低いことが分かります。
 また、中小企業では「前年は実施したが、今年は実施していない」が13%にも及び、大企業の3%、中堅企業の6%と比べると格段にその割合は高くなっています。前年にインターンシップを実施した企業を母数にした割合[13%/(33%+13%)]から考えれば、中小企業では28%とさらに高くなり、3割近い企業がインターンシップの継続実施を取りやめていることになります。それだけインターンシップを実施することの負担の大きさに対して、実施したことによる成果がそれに見合わないという判断からなのでしょう。

 次に、企業規模に関係なく、「ダイレクトソーシング実施の有無」でインターンシップの実施状況を比較してみると、インターンシップを「実施した」の割合は、ダイレクトソーシングを「実施している」企業群では65%と3分の2近くになっているのに対し、「実施していない」企業群では46%と半数未満となっています。この結果より、ダイレクトソーシングを実施する企業ほど、インターンシップ開催にも積極的に取り組む傾向にあることがうかがえます。

逆求人サイトの活用の有無により異なるインターンシップ開催時期

 次に、インターンシップの開催時期の違いを見てみましょう。まずは企業規模別に比較してみたものが[図表9]です。

[図表9]インターンシップ開催月(企業規模別・複数回答)

 大企業では、「21年8月」と「21年9月」がともに54%で最も多く、次いで「21年10月」と「21年12月」がともに42%で続きます。「21年6月以前」や「21年7月」といった早期も他の企業規模よりも多くなっているのに対し、「22年1月」や「22年2月」など年明け以降は一転して他の企業規模よりも少なくなっています。
 中堅企業では、「21年9月」が48%で最多となるものの、次いで多いのは「22年1月」41%、「21年12月」38%となっており、「21年8月」は34%と大企業と20ポイントもの差がついているのをはじめ、「21年6月以前」や「21年7月」は10%強にとどまるなど、早期の割合が高かった大企業とは異なる傾向を表しています。
 さらに、中小企業では、「21年8月」こそ「22年1月」と同じく42%と高くなるものの、「21年9月」から「21年11月」は19~25%に落ち込みます。「22年2月」が36%で2番目に多い月となるなど、夏期よりも冬期のほうが主流となっている様子がうかがえます。早期はまだ前年度の採用活動がピークの時期を迎えている企業が少なくないことや、あまりに早期に学生と接触しても選考活動期まで学生をつなぎ止められないなどの懸念が背景にあるものと推測されます。

 インターンシップの開催時期について、「ダイレクトソーシング実施の有無」で比較してみたものが[図表10]です。ダイレクトソーシングを「実施している」企業群では、「21年8月」と「21年9月」の夏期がピークで、ともに52%と過半数がインターンシップを実施しています。一方、ダイレクトソーシングを「実施していない」企業群では39%、36%と4割にも満たない状況です。

[図表10]インターンシップ開催月(ダイレクトソーシング実施の有無別・複数回答)

 冬期の「21年12月」と「22年1月」は、ダイレクトソーシングを「実施している」企業群ではそれぞれ29%、33%と3割前後であるのに対し、「実施していない」企業群では41%、43%と4割以上となっています。つまり、ダイレクトソーシングを「実施している」企業群では、そうでない企業群より、夏期インターンシップを積極的に実施する企業が多いことがうかがえます。
 こうした背景には、ダイレクトソーシングの主力施策である逆求人サイトを、夏期インターンシップへターゲット層の学生を呼び込むためのツールとして活用している企業が多いことが考えられます。これらの活用方法を見越して、逆求人サイト側でも、採用シーズン早期の利用と中盤以降の利用では、料金体系そのものを区別しているところもあるようです。

7割近くが「対面形式」のインターンシップを支持

 次に、「望ましいインターンシップの形式(対面orオンライン)」を聞いたところ、全体では「圧倒的に『対面形式』が良い」が最多で43%、「やや『対面形式』が良い」の23%と合計すると、「対面形式が良い」が66%で7割近くとなっています[図表11]。一方、「オンライン形式が良い」(「圧倒的に『オンライン形式』が良い」と「やや『オンライン形式』が良い」の合計)はわずか11%で、顕著に「対面形式が良い」とする企業が多いことが分かります。

[図表11]望ましいインターンシップの形式

 企業規模別に見ると、「やや『対面形式』が良い」と「どちらともいえない」の割合はどの規模でも23~24%で変わりませんが、「圧倒的に『対面形式』が良い」の割合は企業規模により違いが見られます。最多は中堅企業の50%で、「やや『対面形式』が良い」の23%と合計すると、「対面形式が良い」は73%と4分の3近くにも達します。「圧倒的に『対面形式』が良い」が最も少なかったのは大企業で、30%と中堅企業とは20ポイントもの差があります。大企業では、コロナ禍になってからの2年間、対面形式でのインターンシップを全く実施できていない企業も多く、「対面」と「オンライン」の比較自体が難しいといった現状があるのかもしれません。

「望ましいインターンシップの形式」として選択した理由を、フリーコメントによる主な意見を抜粋して紹介しましょう。対面形式を推す声は、特にメーカーに多いようです。

■圧倒的に「対面形式」が良い

  • 職場の雰囲気を、実体験を通して感じられるから(1001名以上、メーカー)
  • 職場環境や働く先輩たちの姿をじかに見てもらうことは入社の動機につながりやすい(1001名以上、商社・流通)
  • 熱量を伝えるため(1001名以上、商社・流通)
  • 各人の性格等も見やすく、またこちらからの応答もしやすい(301~1000名、サービス)
  • 機械操作などの実務体験が可能だから(301~1000名、メーカー)
  • 来社してもらい当社の一日を経験してもらうほうが、選考辞退者が少ないから(301~1000名、メーカー)
  • 対人援助職については、特に現場での他者とのリアルな関わり方が観察できるから(301~1000名、サービス)
  • 職種がら、在宅勤務は困難な業務のため、オンライン選考可=勤務もリモートで可能という誤解を招かないためにも対面が良い(300名以下、メーカー)
  • 設備設計の実務に近いことを、技術者がフォローしながら2週間実施。オンラインでは対応ほぼ不可能(300名以下、メーカー)
  • インターシップの行動性や、雰囲気などオンラインでは判断が難しい。特にサービス・営業など(300名以下、サービス)
  • 短時間でプログラム内容を多くできるためです。オンラインだと、一つひとつ状況を確認しつつ進めることになり、時間がかかります(300名以下、メーカー)
  • 双方向のコミュニケーションを密に取ることが可能(300名以下、メーカー)

■やや「対面形式」が良い

  • 対面では多くの学生の見極めが可能であるため(1001名以上、メーカー)
  • 対面とオンラインとの併用。座学に関してはZoom等の対応で可能だが、現場体験型だとオンライン開催は難しい。またディスカッション等にしても対面式のほうが話は盛り上がるのではないかと思う(301~1000名、メーカー)
  • 受講意欲など画面越しではよく分からないことも多く、内容も限られてしまうが、地方学生が簡単に参加できるなど間口を広げる意味ではオンラインも良い(301~1000名、サービス)
  • 長期インターンシップにおいて、現在ほぼフルリモートで行っており、定期的に対面の場を設けたほうが良いと感じることが多々あるため(300名以下、サービス)

■どちらともいえない

  • 職種によって違う(1001名以上、サービス)
  • インターンシップの定義自体が諸外国と異なるが、日本的なインターンシップでいえばオンラインでも遜色ない。とはいえ企業としては直接会って優秀な人財を感じたいし、口説きたい(1001名以上、情報・通信)
  • どちらのコンテンツでも適した形で実施できればより良い効果を発揮する。逆に中身が伴わなければどちらでやっても効果が出ない(301~1000名、運輸・不動産)
  • 学生のコロナ不安を鑑みると、学生参加意欲の維持できる開催手法が望ましいと思料(300名以下、サービス)

■やや「オンライン形式」が良い

  • 地方の学生の参加率が高まった(1001名以上、情報・通信)
  • 学生の移動時間短縮でき、参加数が増えるから(301~1000名、メーカー)
  • インターン・会社双方にとってお互いの理解が進みやすく、コストが掛からない(300名以下、メーカー)
  • コロナ対策(300名以下、メーカー)

■圧倒的に「オンライン形式」が良い

  • 会場準備等の手間がない(300名以下、情報・通信)
  • 在宅業務可能(300名以下、サービス)

中小企業の4割以上はESの利用なし

 最後に、エントリーシートの利用状況を紹介します。全体では54%と半数以上の企業が「Webエントリーシート」(「Webエントリーシート/書類選考あり」と「Webエントリーシート/書類選考なし」の合計)を利用しており、「紙(PDF)エントリーシート」(「紙(PDF)エントリーシート/書類選考あり」と「紙(PDF)エントリーシート/書類選考なし」の合計)は16%にとどまることが分かりました[図表12]

[図表12]エントリーシートの利用状況

 かつてのエントリーシートといえば、プレエントリー者の自宅に郵送されてくるか、応募者マイページからPDF形式のエントリーシートをダウンロードして、学生は手書きや写真を貼ったりして欄を埋め、締め切り日までに郵送する必要がありました。大企業では私書箱を利用するケースも多く、締め切り間際でも宅配便の利用は認められませんでした。紙にこだわったのは、空白欄を埋める創造性や、手書きの文字を確認したいという企業側の思惑によるものでしたが、近年はそれよりも効率性のほうが優先されているようです。
 もともとは企業独自の設問項目をたくさん設けることで応募のハードルを上げ、自社への志望度が高い学生だけに絞り込むこともエントリーシートを導入する目的の一つでした。しかし、形式が統一されていない各社バラバラのエントリーシートを作成することが、学生に多大な負担をかけていると問題視されると、リクナビの「OpenES」やマイナビの「My CareerBox」のような統一フォーマットのエントリーシートサービスが登場し、いまでは大企業でも多くの企業が利用しているのが現状です。
 エントリーシートの利用状況を企業規模別に見ると、大企業では88%と9割近い企業が「Webエントリーシート」を利用しており、「紙(PDF)エントリーシート」はわずか3%、「エントリーシートは利用していない」は9%と1割未満です。中堅企業では、「Webエントリーシート」60%、「紙(PDF)エントリーシート」21%で、「エントリーシートは利用していない」は19%と、大企業の2倍、2割近くになっています。中小企業では、「Webエントリーシート」39%、「紙(PDF)エントリーシート」18%で、「エントリーシートは利用していない」は43%と、中堅企業のさらに2倍以上、4割を超えます。中小企業ではエントリーシートで応募のハードルを上げることを避け、とにかく応募者を確保することを優先したいという切実な思いが伝わってきます。

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
https://www.hrpro.co.jp/