2022年07月05日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2022年7月

ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介

(調査・編集:主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 6月13日、「就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議」が開催され、政府のインターンシップに関する基本的認識や推進方策を取りまとめた「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(文部科学省、厚生労働省および経済産業省合意。略称:三省合意)が改正されました。内容的には、4月18日に公表された「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」(略称:産学協議会)2021年度報告書「産学協働による自律的なキャリア形成の推進」を踏まえたものになっています。

これを契機にインターンシップは変わるのか

 ここで、簡単に今回の内容を確認しておきましょう。まず、産学協議会ですが、こちらは経団連が2018年10月に「採用選考に関する指針」を策定しないことを決定したことを契機に、Society 5.0 人材の育成に向けて、産業界が求める人材像や採用の在り方、大学教育への期待等について、大学と経団連の代表との間で率直な意見交換を行うための継続的な対話の場として、2019年1月に設置されたもので、経団連会長(住友化学会長)の十倉雅和氏と就職問題懇談会座長(東北大学総長)の大野英男氏が座長を務めています。
 産学協議会は上記報告書の中で、インターンシップで取得した学生情報を広報活動や採用選考活動に使用してはならないとされていた三省合意に対して、インターンシップについて新たな定義を定め、一定の基準に準拠するインターンシップで得られた学生情報については、その情報を採用活動開始後に活用可能とすることで産学が合意したとし、政府に対して三省合意の見直しを要望していました。今回の改正により、それが正式に決定したというわけです。
 改正の対象となるのは、令和5年度(2023年度)実施のインターンシップ(2025年卒対象)からで、それも一定の基準を満たしている必要があります。インターンシップが再定義され、対象となるインターンシップは、以下の類型のうち、タイプ3およびタイプ4です。
 ・タイプ1 オープン・カンパニー
 ・タイプ2 キャリア教育
 ・タイプ3 汎用的能力・専門活用型インターンシップ
 ・タイプ4 高度専門型インターンシップ(試行)

 現在最も多く実施されている「1Day仕事体験」や複数日程でも就業体験を伴わないものは、「タイプ1 オープン・カンパニー」もしくは「タイプ2 キャリア教育」に分類され、今回の学生情報の利用が認められるインターンシップには含まれません。タイプ4は博士課程を対象に試行的に行われているものになりますので、実質的にはタイプ3が採用活動で展開されるインターンシップのタイプとなります。タイプ3であっても、基準となる要件を満たす必要がありますが、そのうちの主な要件を挙げてみます。

・インターンシップ実施期間は、汎用的能力活用型は5日間以上、専門能力活用型は2週間以上とする。

・就業体験は必須で、インターンシップ実施期間の半分を超える日数を職場での就業体験にあてる必要がある。

・実施場所は職場で、職場以外との組み合わせも可。ただし、テレワークが常態化している場合には、テレワークも可。

・実施時期は、学業との両立に配慮する観点から、大学の正課および博士課程を除き、卒業・修了前年度ないし卒業・修了年度(つまり、学部3年・4年、修士1年・2年)の長期休暇期間中に実施。

 近年では、インターンシップはもはや採用活動や就職活動の重要な施策となっており、ほとんどのインターンシップにおいて学生情報は既に採用活動に利用されているのが実態です。今回の三省合意の改正は、インターンシップで得た学生情報の採用活動への利用について、経団連が後追いで政府のお墨付きを得ようとしたに近い構図だと思われますが、いまさら感のほうが強いです。
 現在実施されているインターンシップのうち、今回の改正の条件に当てはまるインターンシップは極めて限られています。きっと、この条件に沿う内容のインターンシップに変えていくべきだという趣旨も含まれているのでしょう。ただし、内容の変更を試みるケースが一部ではあるかもしれませんが、大きな動きになることは到底考えられません。2023年度以降も、1Day仕事体験タイプをはじめ、これまでどおりのインターンシップが大勢を占め、インターンシップでの学生情報を堂々と採用活動に使用する流れはもはや変えられないのではないでしょうか。

学内企業セミナーもオンラインが優勢

 さて、今回も前回に続き、HR総研が、2022年3月9~28日に企業の採用担当者を対象に実施した「2023年新卒採用動向調査」の結果を紹介します。
 まずは、学内企業セミナーへの参加状況から見ていきましょう。[図表1]は、企業規模別に「全体(オンライン形式・対面形式のいずれか)」、「オンライン形式」、「対面形式」での参加大学数をまとめたグラフになります。

[図表1]学内企業セミナー参加状況

資料出所:HR総研「2023年新卒採用動向調査」(2022年3月、以下図表も同じ)

 「参加した」(「1~10校」から「101校以上」の合計、以下同じ)割合を見ると、1001名以上の大企業では「対面形式」が65%なのに対して、「オンライン形式」では71%になるなど、いずれの企業規模においても「対面形式」よりも「オンライン形式」のほうが参加した企業の割合が高く、参加大学数も多くなる傾向が見られます。新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着きを見せ、これまでのオンライン授業中心からキャンパスでの対面授業中心へと大きく舵を切ったのは、本年4月の新学期からという大学が多く、3月時点ではまだ「対面形式」での開催準備が間に合わなかったことも影響しているのでしょう。ただ、今後は「対面形式」での学内企業セミナーが増えてくるものと思われます。
 また、「参加した」割合を「全体」で比べてみると、300名以下の中小企業では49%なのに対して、301~1000名の中堅企業で69%、大企業では76%と4分の3を超えるなど、企業規模が大きくなるほど参加した企業の割合が高くなっています。また、参加大学数を「1~10校」と「11校以上」(「11~20校」から「101校以上」の合計)で分けて比較してみると、大企業ではいずれも38%で同程度となっていますが、中堅企業では「1~10校」46%に対して「11校以上」23%、中小企業に至っては「1~10校」41%に対して「11校以上」はわずか7%となるなど、参加大学数においても企業規模による差が大きいことが分かります。

 2023卒採用のために参加した大学数を前年との比較で回答してもらったところ、全体では「変わらない」とした企業が71%で最も多いものの、「減少」5%に対して「増加」は24%と、参加大学数が増えた企業のほうが大きく上回っています[図表2]。キャリアセンターにおいても対面式での学内企業セミナーが再開されるなど、受け入れる大学側の環境の変化も影響しているものと推測されます。

[図表2]学内企業セミナー参加学校数の増減

 企業規模別で比べてみると、いずれの規模でも「増加」は21~26%とある程度同様の傾向となっているのに対して、一方の「減少」を見ると、大企業はゼロなのに対して、中堅企業で3%、中小企業では9%と1割近くに及ぶなど、規模が小さくなるほど「減少」の割合が高くなっています。企業の採用意欲の回復ぶりが伝えられる中、中小企業では他の規模の企業と比べて、業績の回復が遅れている企業の割合が高いことも影響しているものと思われます。

大企業は半数以上がセミナーのオンライン開催を維持

 次は、各企業が独自に開催するセミナーや説明会(以下、セミナー)の開催時期を見てみましょう。セミナーを開催した月、および開催予定の月を複数選択で回答してもらった結果が[図表3]です。

[図表3]個別企業セミナー・説明会の開催時期

 全体では、「22年3月」が最多で43%、次いで「22年4月」33%、「22年5月」31%と続き、「22年2月」は28%で「22年6月」と並んでいます。これに対して、企業規模別に見ると、規模による違いが鮮明に出ています。大企業では、「22年3月」と「22年4月」がともに最多で50%と半数の企業がセミナーを開催し、次いで「22年2月」が「22年5月」と同じく44%で続き、「22年6月」はそれよりも少ない38%となっています。「21年12月」と「22年1月」もそれぞれ26%、29%と3割近い企業が開催しています。前年の同時期調査では、「21年1月」と「21年2月」はともに15%しかなく、「1月」で14ポイント、「2月」に至っては30ポイント近く増加していることになります。大企業の活動早期化が顕著に表れています。
 中堅企業では、「22年3月」が60%と全企業規模を通じて最も多くなっているものの、「22年2月」、「22年4月」、「22年5月」、「22年6月」などは大企業よりも少なく、「22年3月」に開催が集中していたことが分かります。中小企業では、開催月としての最多は他の企業規模と同様に「22年3月」ではあるものの、31%と中堅企業の半分程度にとどまります。「22年1月」や「22年2月」は2割にも届かず、「22年4月」から「22年6月」も23~26%と2割台です。中小企業で最も多かった回答は「開催しない」で、41%と4割を超えます。前年同時期調査では、「開催しない」とした中小企業は32%だったので、10ポイント近く増えていることになります。最初から個別対応、あるいは面接からスタートしてしまう企業が多くなったものと推測されます。

 続いて、セミナーの開催形式を見ると、こちらも企業規模による違いがはっきりと見られます[図表4]。「すべてオンライン形式で開催」の割合は、中小企業で31%、中堅企業で40%、大企業では55%と半数を超え、中小企業と大企業では20ポイント以上の開きがあります。

[図表4]個別企業セミナー・説明会の開催形式

 ただし、前年同時期調査では、「すべてオンライン形式で開催」した企業の割合は、中小企業45%、中堅企業50%、大企業では64%に及びましたので、いずれの企業規模でも徐々にオンライン形式から対面形式へのシフトが進んでいることがうかがえます。
 新型コロナウイルスの感染がやや落ち着きを見せる中でも、大企業では集客規模が大きくなることもあり、対面形式に踏み切れずにオンライン形式を維持した割合が多かったようです。中には、会場費などの開催コストや労力の低減、遠方学生の参加のしやすさなどを考慮して、オンライン形式のみとした企業もあるでしょう。これらの企業は、コロナ禍がさらに収まったとしても、もはや対面形式には戻さない可能性も少なくないと思われます。

 オンライン形式のセミナーを開催した企業を対象に、セミナーの配信形式を確認したところ、いずれの規模の企業においても「ライブ配信」が7~8割以上と圧倒的なシェアとなっています[図表5]

[図表5]オンラインセミナー・説明会の配信形式

 さらに、「ライブ配信と録画配信の両方」と回答した企業も、ライブ配信した内容をそのまま録画して配信しているものが大半で、録画配信用にわざわざ収録した企業は少ないものと推測されます。それも合わせれば、ほぼすべての企業がライブ配信で行っていると考えてもよさそうです。学生が好きな時にいつでも視聴できる「録画配信」は学生には便利であるものの、企業としては一方的な説明の垂れ流しになってしまう「録画配信」ではなく、参加学生との質疑応答が可能な双方向の「ライブ配信」のほうが重宝されているということなのでしょう。
 人事担当者向けのオンラインセミナーでも、いつでも見られる「録画配信」は、申し込みはしても結局はいつまでも見ないという、採用担当者自身の経験が反映されているのかもしれません。実際、弊社が主催する人事担当者向けのオンラインセミナーも、「ライブ配信」と「録画配信」では、申込者数に対する視聴者数の割合は、圧倒的に「ライブ配信」のほうが高くなります。「録画配信」の視聴可能期間が1カ月間設けたとしても同様です。

面接開始時期でも大企業が先行

 ここからは面接について取り上げます。
 まずは、面接の開始時期を企業規模別に比較してみたところ、大企業での最多は「22年4月」の24%ながら、「22年1月」21%、「22年3月」の18%、さらには「21年10月以前」も15%と多くなっています[図表6]

[図表6]面接の開始時期(企業規模別)

 政府の就活ルールにおける採用広報解禁前の「22年2月」までに面接を開始した企業は50%とちょうど半数にも及びます。採用選考解禁後の「22年6月」以降を予定している企業はわずか6%です。中堅企業では、最多は「22年3月」で27%、次いで「22年7月以降」が19%、「22年1月」と「22年4月」がともに15%で続きます。「22年2月」までに開始した企業は35%と大企業より少なく、逆に「22年6月」以降は19%と大企業の3倍ほどにもなっています。中小企業ではこの違いがさらに拡大し、最多は「22年7月以降」で23%となり、「22年4月」が20%で続きます。「22年2月」までに開始した企業は24%と、大企業の半分にも及びません。逆に、「22年6月」以降は36%と大企業とは30ポイントもの差がついています。
 他の企業規模と比較して、大企業における選考面接開始の早さが顕著となっていることが分かります。中堅企業や中小企業では、早期から選考して内々定を出しても、後から内々定を出した企業にひっくり返されるという懸念から、早期よりも「22年6月」以降に選考時期の重点を置く企業が多くなっているようです。

 次に、面接の開始時期を「ダイレクトソーシング実施の有無」で比較してみましょう[図表7]

[図表7]面接の開始時期(ダイレクトソーシング実施の有無別)

 ダイレクトソーシングを「実施している」企業群では、面接開始時期の最多は「22年1月」と「22年4月」で21%、次いで「22年3月」17%、「21年10月以前」、「21年12月」、「22年7月以降」がともに10%で続きます。「22年2月」までに開始した企業の割合は52%と半数を超え、前述した大企業の割合よりも高くなっています。「22年6月」以降は12%で、大企業と中堅企業の中間程度の割合となっています。
 一方、ダイレクトソーシングを「実施していない」企業群を見ると、最多は「22年7月以降」で22%、次いで「22年3月」21%、「22年4月」19%と続き、「22年2月」までに開始した企業は26%と、「実施している」企業群のちょうど半分程度となっています。「22年6月」以降は30%と、中小企業ほどではないもののそれに近い割合となっています。前回の本稿では、ダイレクトソーシングを活用している企業群ほど、インターンシップの開催時期が早いことをお伝えしましたが、インターンシップと同様に、面接も早期に開始されていることがうかがえます。

 ところで、「対面形式」と「オンライン形式」といった面接の形式によって、面接の内容に差異はあるものでしょうか。今回、面接形式を分けて、どんな面接内容を実施したのか(実施する予定なのか)を確認したところ、意外にも差はあまり見られませんでした[図表8]

[図表8]形式別面接の内容(複数回答)

 最多は当然ながら「個人面接」で、いずれの形式でも9割以上の企業が実施しています。「個人面接」の実施割合において、「対面形式」よりも「オンライン形式」のほうが低くなっているのは、「個人面接」で行うことが多い最終面接を「対面形式」に切り替える企業が多くなったことが理由の一つではないかと推測されます。採用活動オンライン化の初年度だった2021年卒採用では、面接官を務める企業側も学生側もオンライン対応にまだ不慣れだったこともあり、グループ面接やグループディスカッションといった同時に複数の学生対応が必要とされる面接内容については、「オンライン形式」で実施する例は少なかったように思います。ただ、オンライン化3年目ともなると「オンライン形式」でも「対面形式」と全く同様に実施されていることがうかがえます。
 ただ、「個人面接」を除き、その他の内容はすべて1~2ポイントの差しかない中で、唯一、5ポイントもの差が見られたのが「技術・専門面接」です。「対面形式」の8%に対して、「オンライン形式」では3%にとどまりました。「オンライン形式」であれば、参考資料をモニター横に置くなどのカンニング行為も可能だと判断されたのかもしれません。

「コミュニケーション能力」が不動の位置に

 学生の入社志望度の形成においては、面接官やセミナーに登壇する社員など、学生の就職活動に接点を持つ社員の言動・印象が大きく影響するといわれています。では、企業はその対策として、面接に携わる現場の管理職や社員に対して、採用活動の重要性や面接の役割、自社の求める人物像、学生に伝えたい企業メッセージ、面接での禁止事項など、どの程度共有することができているのでしょうか。面接官へ面接前に実施している施策について、複数回答で選択してもらった結果が[図表9]です。

[図表9]面接官へ面接前に実施している施策(複数回答)

 「特に何もしていない」と回答した企業は、大企業でも24%と4社に1社に及び、中堅企業31%、中小企業に至っては39%と4割近い企業に上ることが分かります。実施されている施策の中で最も多いのは「説明資料の配布、メール送信」で、大企業では62%と6割を超えます。ただ、「外部講師を招いた面接官研修を実施」までとなると、大企業でも6%、中堅企業・中小企業に至ってはそれぞれ2%と1%に過ぎません。
 インターンシップに始まり、就職ナビや合同説明会、個別に開催するセミナーと、採用活動前半でのプロモーション活動にはそれなりに注力しているものの、採用活動の締めくくりであり、かつ最も重要な「面接」が軽んじられているように思えてなりません。「面接」の内容や、それに携わる社員の教育研修にこそ、もっと注力すべきだと思います。結果的にそれが入社志望度の維持・向上に寄与し、採用力のアップにもつながるものと思われます。

 次に、面接やインターンシップを通して見ている「学生に求める能力」について、前年同時期調査と比較しました。トップは今回も「コミュニケーション能力」で78%(前年77%)と2位以下に倍以上の差をつけて、不動のポジションを築いています[図表10]。2位は、前回3位だった「チームで働く力」35%(同34%)となりましたが、得票割合自体は前回とほとんど変わりません。ただ、3位以降には少し変動があります。

[図表10]学生に求める能力(前年比較、複数回答)

[注]「プログラミングスキル」「データ解析能力」は、2022年卒調査の選択肢になし。

 今回3位は「適応力」で、前回の19%から10ポイント増の29%、4位は「前に踏み出す力」でこちらは逆に前回の36%から9ポイント減の27%となりました。その他で得票割合の変動が見られたのは「基礎的な学力」で、前回の16%から9%へと7ポイントの減となっています。その他、前回と比較して微増となった項目は、5位「目標達成指向」(23→25%)、6位「論理的思考力」(22→24%)、7位「考え抜く力」(20→23%)などです。
 なお、DX人材ニーズが高まっていることもあり、今回から「プログラミングスキル」と「データ解析能力」の二つの項目を追加してみましたが、それぞれ3%、2%と低調な結果となりました。一部の部門の社員だけに必要な能力と捉えられているのか、全社員に必要な素養だとしてこれから注目していく企業が増えてくるのか、次回以降の調査結果を注視していきたいと思います。

9月までに採用活動を終了予定は、大企業でも7割以下

 ここからは「内定(内々定)」について見ていきます。
 まずは、内定を出し始めた時期(予定含む)の対前年比較です[図表11]。企業規模に関係なく、8~9割の企業が「ほとんど変わらない」と回答するも、「遅くなる」との回答は全体でわずか1%にしか過ぎず、残り14%は「早まる」(「1カ月超早まる」から「1週間以内早まる」の合計、以下同じ)と回答しています。

[図表11]内定(内々定)の開始時期の対前年比

 早まる期間も「1カ月超早まる」が7%、「2週間超~1カ月早まる」が6%で、「1週間超~2週間早まる」と「1週間以内早まる」はそれぞれ1%以下と、2週間超早まるとする企業が大半を占めています。
 企業規模別に見ると、「早まる」企業が最も多いのは中堅企業で21%と2割を超え、中小企業(9%)の2倍以上となっています。「遅くなる」と回答した企業は中小企業の1%のみでした。
 「早まる」理由として多く挙げられたのは、「同業他社の動向を踏まえて」や「早期選考を行っており、選考期間が間延びしないようにするため」などですが、中には「希望者の安心感」を挙げる企業もあります。

 次に、具体的に内定を出し始めた時期(予定含む)を企業規模別に比べてみましょう[図表12]

[図表12]内定(内々定)の開始時期(企業規模別)

 大企業では、「22年3月」と「22年4月」が最多でともに24%、次いで「22年1月」と「22年7月以降」が12%で続きます。「21年12月」までに内定を出し始めた企業は9%ながら、「22年1月」以降は内定を出し始める企業が増加し、「22年3月」までに50%と半数に達します。中堅企業では、「22年4月」が27%で最多で、次いで「22年7月以降」が21%、「22年5月」も15%などと続き、「22年3月」までに内定を出し始める企業は29%と、大企業とは20ポイント以上も少なくなっています。中小企業では、「22年7月以降」が34%で最多となったほか、「22年4月」18%、「22年6月」13%など、「22年4月」以降を選択する企業の割合が高く、「22年3月」までに内定を出し始める企業は、中堅企業よりも少ない24%にとどまります。
 セミナーの開催時期や面接開始時期で先行していた大企業が、内定を出し始める時期でも他の企業規模の企業を大きく引き離していることが分かります。

 内定を出し始めた時期についても、「ダイレクトソーシング実施の有無」別に比較してみたところ、ダイレクトソーシングを「実施している」企業群での最多は「22年4月」31%、次いで「22年3月」が29%で、この2カ月で6割を占める大きな山を形成しています。「22年3月」までに内定を出し始めた企業の割合は、前述の大企業と全く同じ50%に達します[図表13]

[図表13]内定(内々定)の開始時期(ダイレクトソーシング実施の有無別)

 一方、ダイレクトソーシングを「実施していない」企業群を見ると、最多は「22年7月以降」で30%に達し、次いで「22年4月」19%、「22年6月」14%と続き、「22年3月」までに内定を出し始めた企業の割合は25%と、ダイレクトソーシングを「実施している」企業群のちょうど半分になります。ダイレクトソーシング活用企業ほど、内定を出し始めるタイミングが早く、活用していない企業群には大企業や中堅企業も含まれるにもかかわらず、中小企業と同様なペースで進行していることがうかがえます。

 最後に、採用活動の終了予定時期について、企業規模別に見てみましょう[図表14]

[図表14]採用活動の終了予定時期

 大企業では「22年7月」が24%で最多となっており、次いで「22年12月」が18%で続くものの、「22年9月」15%や、「22年6月」、「22年8月」がどちらも12%となるなど、就活ルールで内定出しが正式解禁となる「22年10月」前に採用活動を終了する予定の企業が68%と7割近くに達します。
 中堅企業では、最多は「23年1月以降」の17%、次いで「22年6月」「22年7月」「22年9月」「22年12月」がいずれも13%で続くなど、大きな山がないまま推移していく見込みです。「22年9月」までに採用活動を終了する予定の企業は54%で、大企業より14ポイントも少なくなっています。
 最後に、中小企業では、「23年1月以降」とする企業が最多で37%と4割近くにも及ぶ一方、「22年6月」までに終了予定とする企業も20%あるなど、二極化の様相を呈しています。「22年9月」までに採用活動を終了する予定の企業は45%と半数に満たず、「22年10月」以降が55%となるなど、「22年9~10月」を境に、見事に二分されるのも中小企業の特徴といえそうです。

 次回は、2023年卒の採用活動および就職活動をテーマに、採用担当者、就活生の双方から寄せられた「採用川柳・短歌/就活川柳・短歌」を紹介します。お楽しみにしてください。

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
https://www.hrpro.co.jp/