2022年07月08日掲載

BOOK REVIEW - 『しなやかで強い組織のつくりかた ―21世紀型マネジメント・イノベーション―』

ピーター・D・ピーダーセン 著
NPO法人NELIS代表理事、大学院大学至善館教授、丸井グループ社外取締役、
株式会社トランスエージェント会長 

四六判/270ページ/1800円+税/生産性出版 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 社会・経済・環境が激変する時代において、変化に柔軟に対応できる組織のみが生き残れる市場になりつつある。そこで筆者は、しなやかで強い組織=レジリエント・カンパニーこそが新しい時代をつくれる会社であり、日本企業が目指すべき姿だと主張する。レジリエント・カンパニーを目指すに当たって、「3つのトレード・オン」の実現こそが"最終ゴール"だとする。これは、「トレード・オフ」とされてきた①企業の発展と健全な社会・自然環境、②組織の発展と個人の充実、③仕事と家族の幸福度――を両立させようとする概念だ。

■ レジリエント・カンパニーを実現するために最も必要なことは、マネジメントの在り方や組織運営そのものに革新を起こす「マネジメント・イノベーション」であるという。そして、マネジメント・イノベーションを進める上で、社員の心を共通目標に向けて束ねる「アンカリング」、自己変革を続けるための組織的能力「アダプティブネス」、社外と社内の間の社会性「アラインメント」から成る「トリプルA」が行動原則になると本書は提案している。

■ 筆者は「すべての役職者は、自分が見ている仕事や部下の範囲の中で、常にマネジメント・イノベーションを起こす可能性を持っているだけでなく、それが役職者の重要な職務の一つ」であると指摘する。そして、マネジメント・イノベーションの実践に必要な三つの心構えとして「主体性」「建設的思考」「行動重視」を挙げる。現在の日本的組織において変革に向けた行動はとりにくいかもしれないが、それゆえに大切だ。本書では、現場でもすぐに実践できるトリプルAを通じたマネジメント・イノベーションの具体策も示されている。最初は不安に感じるかもしれないが、肩書きに関係なく、とにかく小さな行動でも起こしてみると、組織によい波及効果が生まれるだろう。

しなやかで強い組織のつくりかた
―21世紀型マネジメント・イノベーション―

内容紹介
マネジメントの深層変革のための実践書。日本的組織の光と影に焦点を当て、人間を活かし、事業目的を達成し、社会的善を生み出し続けるレジリエント・カンパニーへの道を実体験に基づいて具体的に解説する。

目指すは「しなやかで強い人間集団」=レジリエント・カンパニー

マネジメントのあり方や組織運営そのものに革新を起こすことが、日本企業にとっての最重要課題。レジリエント・カンパニーに近づくために、マネジメント・イノベーションを起こす【トリプルA】3つの原則と9つの企業行動を明示します。