2022年09月09日掲載

BOOK REVIEW - 『人的資本の活かしかた 組織を変えるリーダーの教科書』

上林周平 著/田中研之輔 監修
株式会社NEWONE代表取締役社長/法政大学キャリアデザイン学部教授 
四六判/269ページ/1600円+税/アスコム 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 2021年6月の東証のコーポレートガバナンス・コード改定により、上場企業は「人的資本」の情報開示が求められることとなった。また、2022年5月に「人材版伊藤レポート2.0」(経済産業省)が、同年8月には「人的資本可視化指針」(内閣官房)が発表され、人材戦略の策定と実践、情報開示は企業価値の重要な判断要素として位置づけられている。このように日本企業が人的資本経営に向け変革を志向する中で、本書は現場のリーダー・管理職が「TMO(Team Management Officer):チーム経営責任者」として活躍する必要性を説く。

■ 第1章と第2章では「人的資本」の概念を整理する。人的資本経営を進めるに当たり、管理職は人的資源の「やりくり型」ポジションから、人的資本を元に利益を生み出す「レバレッジ型」ファンクションへ転換が求められるという。一方で、昨今の「人的資本経営」の潮流において、日々の業務に忙殺され置き去りにされる管理職の実態を踏まえ、管理職がTMOとして活躍するために身につけるべき力として「チーム経営力」を挙げる。これは、チーム経営力は七つの能力(キャリア支援力・強み発見力・仕事アサイン力・チームビルディング力・人材獲得力・オンボーディング力・全体俯瞰力)から構成される力を意味する。

■ 第3章から第9章は七つの能力を一つずつ解説する。例えば、第4章の「キャリア支援力」は、キャリアを個人の自由な成長ととらえる「プロティアン・キャリア」の考え方をベースとしており、本書監修の法政大学田中教授の研究内容も踏まえた解説に注目したい。その上で、最終第10章では、人的資本経営が陥りやすい五つの罠を詳解する。五つの罠の克服に向けて、人事部門や経営層が持つべき視点についても述べられている。人的資本経営に当たり、自組織のあり方を考えるすべての人材にとって必読の一冊だ。

人的資本の活かしかた 組織を変えるリーダーの教科書

内容紹介
人的資本を活かすマネジメント能力は、あらゆる業界・組織で求められる希少で強力なプロフェッショナルスキルになる。調整役の中間管理職から、価値を生み出すリーダーに代わる方法を伝授する。

これから企業にとって避けられない課題になる「人的資本経営」。でも、人的資本って何? 今までのマネジメントと何が違うの? そんな疑問を抱える経営者、人事担当者、マネージャーに送る新時代のリーダーになる方法。

●与えられた人材(資源)を効率よく使う「やりくり型」組織から

●組織の枠を越えて人材(資本)から利益を生み出す「レバレッジ型」組織へ

Apple、Amazon、Microsoft……世界のトップ企業は、なぜ人の知識やスキルなど目に見えない資本を価値に変えられるのか。

本書では、そもそも「人的資本」とは何かを読み解きながら、
・エンゲージメント
・オンボーディング
・ダイバーシティ&インクルージョン
・リクルーティング
・チームビルディング
・キャリア支援
など、人的資本の最大化のための具体的手法を解説。

大手玩具メーカーや通信会社、鉄道会社などで多数の研修を行ってきたコンサルタントによる、全リーダー必携の一冊。