2022年09月30日掲載

BOOK REVIEW - 『部下のやる気はいらない 「一歩踏み出す」からはじめるコーチング』

岩崎徹也 著
株式会社PABLO 代表取締役 
四六判/236ページ/1650円+税/日本能率協会マネジメントセンター 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 「部下のやる気がない」と悩む、マネジャー職のビジネスパーソンは多いのではないだろうか。とかく仕事には"やる気"が不可欠だと思われがちだ。しかし、本書が説くのは、部下の"やる気"に依存しないマネジメントと、それを実現するコーチングの手法である。コーチング会社を設立し、毎月300回以上のコーチングセッションを実施している著者が、その経験から得られたコーチングのエッセンスをまとめている。

■ 序章で"そもそもコーチングとは何か"について説明し、コーチングに関する誤解を解いた上で、第1部ではコーチングを行う前に必要な準備について解説する。上司と部下が自己開示して信頼関係を構築すること、自分の強みと弱みを言語化すること、目標設定と行動計画の策定など、多くの場合「やらされている」状態からスタートする相手に対しての、コーチング前の意識のすり合わせ方について詳しく触れている。続く第2部では、コーチングの意義である"「経験」を「学び」にできる人材を作る"ための、「経験学習サイクル」に焦点を当てたコーチング手法を解説。成功体験・失敗体験の振り返りや、それらの経験から得た教訓の生かし方など、部下の"やる気"に頼らず自立自走できるようなコーチングの方法を順序立てて説明している。

■ 本書の大きな特徴は、具体的なコーチング事例として上司と部下の会話例を豊富に掲載していることだ。コーチングの経験がない人でも、効果的な問いかけや課題設定の方法がよく理解できる構成になっている。部下のマネジメントに悩んでいる方には、ぜひ参考にしていただきたい一冊だ。

部下のやる気はいらない 「一歩踏み出す」からはじめるコーチング

内容紹介
まず一歩踏み出し行動する。それを振り返り、内省し、次の一歩を設定する。このサイクルを伴走することで、部下は徐々に業務へ熱中していくようになる――。やる気の有無を問わず、部下のやる気を創出するメソッドを紹介する。

■やる気のない部下を嘆くマネジャー
「部下のやる気がなくて困っている」、このような悩みがマネジャーから多く寄せられる。
実際、本来やる気が高いはずの若手社員のワークエンゲージメントが低く、マネジャーはこの現状を不満に思い、やる気のない若手を嘆いているケースは多く見られる。

ただ、脳科学の世界では「何かに取り組んだり行動したりするのにやる気は必要ない」と言われている。人間の「やる気」は、脳内で分泌される神経伝達物質・ドーパミンによって引き起こされるのだが、それは実際に行動を起こさなければ分泌されないのだ。

■やる気に左右されず部下が成果を上げるコーチングメソッド
本書で紹介するのは、脳科学で言うところの「実際に行動を起こす」を促すための方法。「やる気<一歩踏み出す」のコーチングメソッドである。
やる気より大切なのはまず一歩踏み出し、行動すること。そしてその一歩を振り返り、内省し、次の一歩を設定する。そのサイクルを伴走することで、部下は徐々に業務へ熱中していくようになる。結果として、やる気に依存しないこのコーチングメソッドは、部下の業務へのマインドを向上させ、成果を創出することができる。