2022年10月28日掲載

BOOK REVIEW - 『リデザイン・ワーク 新しい働き方』

リンダ・グラットン 著/池村千秋 訳
ロンドン・ビジネス・スクール経営学教授 
四六判/370ページ/1900円+税/東洋経済新報社 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ コロナ禍をきっかけに、私たちは大きな選択に直面している。それは、昔の(コロナ以前の)働き方に再び戻るのか、それとも、やりがい・生産性・充実感を高められるように仕事の在り方を根本から設計し直すのかという選択だ。本書は、この選択を行うために、「人生100年時代」というキーワードをつくり出した中心人物のリンダ・グラットンが、自身やほかの研究者の研究に基づく思考の枠組みと現場の知見を紹介する一冊である。

■ 筆者は、社員一人ひとりの働き方と会社の業務の進め方を見直す(仕事をリデザインする)上で、「理解する」「新たに構想する」「モデルをつくり検証する」「行動して想像する」という4段階のプロセスを提唱しており、各章でそれぞれのプロセスを具体化し、解説している。「理解する」の章では、「生産性を支える行動と能力」「社員が仕事と会社に期待すること」など検討すべき四つのテーマを紹介。これを土台として、次章では仕事の在り方を「新たに構想する」ための五つのテーマを詳しく論じる。

■ 「モデルをつくり検証する」の章では、未来にも通用するか、テクノロジーの変化を支えられるか、公平で正義にかなうものか――という3要素に照らして検証することを提唱する。「行動して想像する」の章では、上記モデルを自社の企業文化に根づかせるためのキーとなるリーダー(マネジャー)の役割を説明する。全体を通して企業事例や実務担当者の発言、検討のための問いを豊富に紹介している点が本書の特徴であり、冒頭の大きな選択を行う上で必要な、自社の「パーパス」(存在意義)を育み、強化するためのヒントになるだろう。

リデザイン・ワーク 新しい働き方

内容紹介
働く人を大切にする職場にこそ、人は集まる。
ロンドン・ビジネス・スクール経営学教授が、「仕事のあり方」「働く意味」「人生の豊かさ」の“リデザイン(再設計)”を描く。

「人生100年時代」の生き方を構想し、「日本社会のこれから」の指針を示した、世界のトップ経営学者リンダ・グラットン。
彼女が本書で描くのは「働き方の今」と「近い未来」だ。

新型コロナが私たちの働き方にもたらした変化は重大だったが、まさに現在進行で現われつつある「大きな潮流」を詳らかにし、また、世界中のさまざまな企業の現場事例をもとに、私たちの「仕事のあり方」、ひいては「働く意味」「人生の豊かさ」を“リデザイン(再設計)”していく。