代表 寺澤康介
(調査・編集:主席研究員 松岡 仁)
ProFuture代表の寺澤です。
10月17日付けの朝日新聞の報道にもありましたが、近年、一部の企業のエントリーシート(応募書類)の項目にある変化が起きているのをご存じでしょうか。
海外では、性差別や年齢差別排除を目的に、早くから「性別」「年齢(生年月日)」「顔写真」の項目のない応募書類が浸透していましたが、日本の新卒採用でも同様な動きが進行しているようです。就職ナビでは既に数年前から「性別」欄がなくなっていますが、個別企業のエントリーシートにおいても上記3項目は基本として、「大学名」をなくしたり、さらには「氏名」欄でも名字だけで下の名前は不要のケースや、企業によっては名字すら明かすことなく、ニックネームでの応募を受け付けているケースもあるようです。海外のさらに一歩先を行く日本独自の取り組みといえます。
「性別」欄をなくしたところで、名前から性別が類推できてしまうことも多く、それすらも排除したいというのが理由で、性別や容姿に惑わされることなく、エントリーシートに記された応募者の考え方だけで判断したいとの思いから始まったとのこと。ただ、日本の新卒採用の場合には、エントリーシートの提出の前に、氏名がすべて入力されたプレエントリーデータが必ず存在しますので、メールアドレスや携帯電話番号をキーに照合が可能な環境にあります。
さらに、大手企業のほとんどは採用管理システムを利用しており、エントリーシートも応募者ごとの「マイページ」から提出しますので、エントリーシートには応募者コードが自動的に附番されています。このあたりはどうなっているのでしょうか。
ヒューマン重視の文系学生
前々回、前回と2回にわたって、HR総研が2023年卒の「楽天みん就」会員を対象として本年6月に実施した「2023年卒学生の就活動向調査」の中から、「内定」や「辞退」に関連したテーマの調査結果について報告してきました。今回は「内定」に至る前段階の就職ステップについて振り返ってみたいと思います。
まずは、「応募先企業を探す際に重視する点」(複数回答)を聞いた結果、文系では1位が「仕事内容」(58%)、2位「給与・待遇」(56%)、3位「休日・休暇・残業」(53%)、4位「福利厚生」(53%)となりました[図表1]。理系も順位こそ少し異なるものの、1位「給与・待遇」(61%)、2位「仕事内容」(60%)、3位「福利厚生」(57%)、4位「休日・休暇・残業」(49%)と、上位4位の顔ぶれは全く同じ結果です。
[図表1]応募先企業を探す際に重視する点(複数回答)
資料出所:HR総研「2023年卒学生就活動向調査」(2022年6月、以下図表も同じ)
理系の上位3位までは、すべて文系よりもポイントが高いものの、4位の「休日・休暇・残業」のみが文系よりもポイントが低く、他の3項目ともややポイントが開いて50%を割っています。大学時代の実験や研究活動では、夜遅くなることや休日にも研究室に出向くことがある生活を送っていたことが影響しているのかもしれません。今回の調査の質問項目にはありませんが、「入社してから許容できる残業時間」についても、毎年文系よりも理系のほうが残業に寛容な傾向が見られています。
その他、文系と理系で差がついた項目を挙げてみると、理系のほうがポイントの高い項目例としては、「業種」(文系32%、理系41%)、「製品・サービス」(文系16%、理系23%)などがありますが、最もポイント差があったのは「専攻・自分の強みとの関連性」で、文系の13%に対して、理系は2倍以上の30%となっています。専攻と就職後の職種を関連させやすい理系ならではの傾向といえるでしょう。
一方、文系のほうがポイントの高かった項目例としては、「社員の人柄・対応」(文系46%、理系39%)、「人事の人柄・対応」(文系38%、理系30%)、「女性の働きやすさ」(文系34%、理系26%)などとなっています。「女性の働きやすさ」は、理系に占める女性の割合が少ないため、このポイント差は必然的ともいえますが、ほかの2項目は「人柄・対応」というヒューマンな部分になっていることが特徴です。文系のほうがデジタルで決められない部分を重視する傾向にあるようです。
就活前半は「OpenWork」が躍進
次に、就活ルールで会社説明会が解禁となる3月1日を境として、就職活動期をそれ以前の「前半」と、それ以降の「後半」に分けて、活用した就活サイトを文系・理系別に見ていきます。
就活サイト、特に従来型の総合型就活サイト(いわゆる就職ナビ)の場合、3月1日以前の掲載内容は昨年度の募集情報やインターンシップ情報に限定され、3月1日より翌年入社予定者向けの採用募集要項の掲載が始まるとともに、プレエントリー受付や会社説明会の参加申し込み受付が開始されることになります。そのため、3月1日に掲載情報が一新されることを「グランドオープン」や「正式オープン」などと呼んだりします。ただ、近年は、採用・就職活動がインターンシップからスタートすることが当たり前となっており、3月1日以前に既に企業と学生が多くの接点を持つようになっているため、「グランドオープン」が持つ意味はかつてと比べると随分と様変わりしてきているのが実情です。
まずは、「2月以前の就活前半に活用した就活サイト」(複数回答)から見ていきましょう。文系の結果を見ると、2022年卒調査(以下、「前年」)とほぼ同様となっていますが、順位の変動があったのは、「キャリタス就活」が6位→7位へ、それと入れ替わる形で「OfferBox」が7位→6位へ順位を上げています[図表2]。
[図表2]就活前半(2月以前)に活用した就活サイトの2年比較(複数回答)
ポイントの変化を見ると、「マイナビ」「リクナビ」「楽天みん就」の上位3サイトがいずれも数ポイント減少し、5位「就活会議」、6位「OfferBox」、8位「OpenWork」はいずれも2~3ポイントアップしています。9位の「unistyle」は、順位こそ変動はなかったものの、前年の35%から27%へと8ポイントもの大幅ダウンとなっており、下げ幅としては最大となっています。
次に理系の結果ですが、順位の変動があったのは、「キャリタス就活」が6位→7位、「OfferBox」が7位→8位へと順位を落とし、代わって「OpenWork」が8位→6位へと2ランクアップを果たしています。そのほか、10位の「あさがくナビ」が理系専門サイトの「LabBase」と入れ替わっています。
ポイントの変化では、こちらも「マイナビ」、「リクナビ」、「楽天みん就」の上位3サイトがいずれも数ポイントダウンし、4位「ONE CAREER」、5位「就活会議」はそれぞれ3ポイント、5ポイントのアップとなっています。「就活会議」は、今回の調査で初めて文系・理系とも50%に到達です。今回6位にランクアップした「OpenWork」は、前年の31%から40%へと9ポイントもの大幅アップとなっています。文系では大幅ダウンとなった「unistyle」ですが、理系では逆に1ポイントアップで9位を維持する結果となっています。
就活後半は「楽天みん就」に異変
今度は「3月以降の就活後半に活用した就活サイト」(複数回答)を見てみましょう。文系では、前年順位からの変動は一切ありませんでした[図表3]。
[図表3]就活後半(3月以降)に活用した就活サイトの2年比較(複数回答)
前年からのポイントの動きを見ると、上位4サイトはすべてポイントを落とし、中でも「楽天みん就」は9ポイントものダウンとなり、3位の「リクナビ」との差はごくわずかです(「楽天みん就」66.7%、「リクナビ」66.6%)。9位の「unistyle」は前半と同様に8ポイントものダウンとなっています。
前半との比較では、前半では2位だった「リクナビ」が3位の「楽天みん就」と入れ替わり、「OpenWork」が8位から6位に、その代わりに「OfferBox」と「キャリタス就活」が一つずつ順位を下げています。ただ、上位10サイトの顔ぶれは、前半と後半では全く変動はありません。
理系の結果を見ると、上位6サイトに前年からの順位変動はないものの、「キャリタス就活」が前年7位→9位にダウンし、代わりに「OfferBox」が9位→7位へと順位を上げています。10位は前年の「dodaキャンパス」に代わり、「あさがくナビ」がランクインしています。
前半との比較では、文系同様に前半2位の「リクナビ」が3位の「楽天みん就」と入れ替わり、7位だった「キャリタス就活」が9位に順位を落としています。ポイントの動きでは、上位3サイトはすべてポイントを減らしています。特に、2位「楽天みん就」は8ポイントもの減少となっており、文系と同様に就活後半における位置づけには今後さらに変動があるかもしれません。
これには、他の口コミサイトの躍進が影響しているものと推測されます。現に、4位「ONE CAREER」、5位「就活会議」は前半と同様に、それぞれ4ポイント、3ポイントとポイントを伸ばしています。
メインサイトとしての利用者が多い「ONE CAREER」
就活サイトの活用状況の最後は、「就活を通して最も活用した就活サイト」です。
まず、文系の結果を見ると、「マイナビ」「ONE CAREER」「リクナビ」「楽天みん就」の上位4サイトに順位の変動はないものの、5位以下はすべて入れ替わっています[図表4]。単一回答のため、4位以下は1ケタ台の僅差となっているため、容易に起こり得る現象です。
[図表4]就活を通して最も活用した就活サイトの2年比較
※理系(2023年卒)の「dodaキャンパス」は、0.42%
ポイントが1%や2%のところの順位にはあまり意味がありませんので、その他のところでポイントの動きを見てみると、2位の「ONE CAREER」が18%から21%へと3ポイント、5位の「就活会議」が2%から4%へと2ポイント伸ばしているのに対して、4位の「楽天みん就」は9%から5%へと4ポイントもダウンしており、5位「就活会議」との差がわずかになってきています。次回調査での逆転もあり得るかもしれません。
理系はというと、こちらは文系の上位4サイトに「就活会議」、「OpenWork」までを含めた上位6サイトは前年と全く同じ順位となりました。7位以下は2%以下となっていますので順位変動は起こりやすいものの、前年7位の「unistyle」が今年も前半・後半ともに20%台の活用度でランクインしていたものの、「通年」ではランク外になってしまったことが気になります。
文系と理系の結果を俯瞰してみて共通しているのは、2位「ONE CAREER」の強さでしょう。前半・後半ともに、複数回答では文系・理系のどちらも4位であるにもかかわらず、単一回答となると「リクナビ」「楽天みん就」を押しのけて、文系・理系の両方で2位です。複数サイトを活用するのが就活の常ですが、「ONE CAREER」ユーザーの約4割がメインサイトとして活用していることになります。
同じことが、もう一つのサイトについてもいえます。それは、「外資就活ドットコム」です。「外資就活ドットコム」は、前半・後半のいずれにも活用した上位10サイトに顔を出していないにもかかわらず、前年も今回も、文系と理系の両方で「通年で最も活用した」上位10サイトにランクインしています。大変興味深い現象です。それだけ根強いヘビーユーザーが、毎年必ず一定数いることを意味しています。
9割の学生が3社以上からアプローチを経験
ここからは、近年、企業・学生の双方の利用度が高まっている「逆求人サイト」について見ていきます。まずは、逆求人サイトの利用度ですが、文系では「利用した」とする学生が53%と半数を超え、理系は43%と文系ほどではないにしろ4割以上の学生が「利用した」と回答しています[図表5]。昨年の同時期調査では、理系のみにこの質問をしたところ、「利用した」と回答した学生は41%でしたので、2%の伸びが認められます。
[図表5]「逆求人サイト」の利用状況
次に、「逆求人サイト」を通して受けたアプローチの社数を見てみましょう。こちらも前年は理系にのみ質問していましたので、参考データとして併記しています。文系・理系ともに最も多いのは「21社以上」で、どちらも33%と3人に1人の割合にもなっています[図表6]。前年の理系の結果を見ると、「21社以上」は23%でしたので、10ポイントも伸びていることになります。「11~15社」、「16~20社」を見ても、理系の割合は今回の調査のほうがポイントは高く、それだけ企業側の利用社数が伸びていることをうかがわせます。「21社以上」に次いで多かったのは「6~10社」で、文系19%、理系で15%となっています。
[図表6]「逆求人サイト」を通して受けたアプローチ社数
注目したいのは、「0社」や「1社」、「2社」といった少ない企業からしかアプローチのなかった学生の割合です。アプローチが全くなかった「0社」と回答した学生は、文系で5%、理系では3%にとどまり、ほとんどの学生は何がしかのアプローチを受けたということになります。「0社」に「1社」と「2社」を加えた合計でも、文系で10%、理系で12%となっており、残りの約9割は「3社以上」の企業からアプローチがあったことになります。利用する学生層は、いわゆる上位校と呼ばれる大学の学生たちばかりが多いわけではなく、満遍なく幅広い層の学生たちが利用しています。学生にとっては従来型の就職ナビでは出会えなかった、新しい企業との出会いの機会を得られているようです。
では、アプローチを受けた後、学生はどのくらい企業への応募につながっているのでしょうか。「逆求人サイト」からのアプローチをきっかけに実際に応募した企業数を聞いてみたところ、最多は「0社」で文系33%、理系で34%と3分の1程度となっています[図表7]。
[図表7]「逆求人サイト」からのアプローチがきっかけの応募社数
ただ、こちらも前年の理系の結果を見ると、「0社」は41%と4割を超えており、アプローチをきっかけに実際に応募した学生は確実に増えていることが分かります。アプローチしてくれる企業が増えれば、それだけ学生が気になる企業と出会う確率も高まっているといえるでしょう。
「0社」を除いて、実際に応募したことのある学生の中での社数を見ると、「1社」(文系15%、理系19%)、次いで「2社」(文系17%、理系14%)あたりが多くなっていますが、「3社以上」(「3社」~「21社以上」の合計)という学生が文系で35%、理系でも34%いるなど、有益な就活ツールとなっているようです。
オンラインセミナー・説明会の未経験者はわずか1%
続いてここからは、各企業が個別で開催するセミナー・会社説明会について見ていきましょう。
まずは、「セミナー・会社説明会の参加社数」からです。文系の最多は「10~14社」で19%、次いで「4~6社」15%が続き、「30社以上」が13%で、なんと3番目に多くなっています[図表8]。
[図表8]個別企業セミナー・説明会参加社数
一方、理系で最も多かったのは、「4~6社」で19%、次いで「10~14社」18%、「1~3社」16%が続きます。「30社以上」と回答した学生は7%と文系の約半数にとどまるなど、「10~14社」以上は理系のほうが文系よりも割合が少なく、逆に「0社」~「7~9社」といった少ない社数では文系よりも理系のほうが多く、明らかにセミナー・会社説明会への参加社数は文系のほうが多くなっています。
ここでは前年のデータは掲載していませんが、前年と比較すると文系はやや参加社数が減少し、逆に理系はやや参加社数が増加傾向にあります。これでも今年は、文系と理系の活動量の差がやや縮まったということになります。
次に、セミナー・会社説明会への参加時期(複数回答)を「全形式」「対面形式」「オンライン形式」の3タイプに分けて見ていきたいと思います。
「対面形式」と「オンライン形式」の両方を対象とした「全形式」では、ピークは文系・理系ともに「2022年3月」で、それぞれ76%、68%にも上ります[図表9]。次いで「2022年2月」がそれぞれ65%、61%と6割を超えています。3番目は、文系が「2022年4月」の57%であるのに対して、理系は「2022年1月」の52%となります。
[図表9]個別企業セミナー・説明会参加時期(全形式・複数回答)
「2021年5月以前」から「2022年1月」までは文系と理系はほぼ同程度の参加率でしたが、「2022年2月」からは文系の参加率が理系を上回るようになり、「2022年4月」以降は10ポイント以上の開きが出るようになっています。それだけ理系の選考のほうが早く進み、会社説明会へ参加する学生が減少するのも早かったものと推測されます。
「対面形式」でのセミナー・会社説明会への参加状況は、ピークの「2022年3月」ですら、文系25%、理系15%にとどまり、次いで多いのは「全形式」で多かった「2022年2月」ではなく、「2022年4月」で文系18%、理系9%となっています[図表10]。
[図表10]個別企業セミナー・説明会参加時期(対面形式・複数回答)
つまり、理系で2ケタに到達したのは「2022年3月」だけです。「2022年2月」は3番目に多いものの、文系12%、理系7%とピークの「2022年3月」の半分以下となっています。「2022年1月」までは、文系・理系ともにすべて1ケタ台にとどまるとともに、「対面で参加したことはない」とする学生が、文系で46%と半数近く、理系に至っては64%と6割を超えています。「対面形式」への参加、ひいては企業側の「対面形式」でのセミナー・会社説明会の開催数が圧倒的に少なかったことが分かります。
一方、「オンライン形式」でのセミナー・会社説明会への参加状況を見ると、ピークは「2022年3月」で文系71%、理系63%に達しています[図表11]。「2022年2月」がそれに続きますが、3番目は「全形式」で見たように、文系と理系では傾向が異なっています。「オンラインで参加したことはない」とする学生は文系・理系ともにわずか1%となっており、「全形式」とほぼ同じ形のグラフを形成しています。
[図表11]個別企業セミナー・説明会参加時期(オンライン形式・複数回答)
服装を気にしなくていい「録画方式」
セミナー・会社説明会に関するトピックの最後は、「好ましいオンライン配信方式」です。リアルタイムで配信する「ライブ方式」と、事前に収録してのオンデマンド配信となる「録画方式」について、どちらが良いかを聞いたところ、「ライブ配信」を支持する学生が、文系55%、理系59%で、「録画方式」の文系26%、理系24%の2倍以上となっています[図表12]。
[図表12]好ましいオンライン配信方式
それぞれの理由を、以下に抜粋して紹介します。「ライブ方式」は、リアルタイムでの質問と緊張感・集中力を挙げる学生が大半となっています。「録画方式」の理由として、時間制約がないことや繰り返し再生は想定されたものの、「服装を気にしなくていい」とする回答が散見されたことは新たな発見です。
【ライブ方式】
・会社や人事の熱意を感じられる(上位私立大、文系)
・質問にリアルタイムで答えてもらえる(早慶大クラス、文系)
・他の就活生の質問に対する答えを聞いて、企業に対する情報を得たり、印象をつかむことができる(上位私立大、文系)
・緊張感があっていい(旧帝大クラス、理系)
・本当の雰囲気が伝わる(その他私立大、文系)
・録画形式だと集中できなかった(上位私立大、文系)
・ライブ形式のほうがリアルタイムで説明を聞けるので、理解もしやすいし、質疑応答など、柔軟な説明会になる(上位国公立大、理系)
・録画形式だと面倒くさくなって見なくなる可能性もあるため、ライブ形式で、かつ顔出しアリの説明会のほうが集中できます(旧帝大クラス、文系)
・ライブ形式のほうが説明する側も伝わりやすいように、聞き逃しがないようにという意識になるから(その他国公立大、理系)
・生の声を聞けていると感じる(中堅私立大、文系)
・説明している人が事務的でない(上位私立大、文系)
・ライブ形式に参加した者のみが得られる特典のようなものがある場合が多いので、ライブ形式のほうが良い(その他私立大、理系)
・録画だと意識が簡単に違うところに飛んでしまうこともあり、理解が浅くなってしまい、同じところを何度も見返すことになった(上位私立大、文系))
【録画方式】
・時間の制約を受けないから(早慶大クラス、文系)
・ライブで見逃してしまった部分も、止めながら確認できる(早慶大クラス、文系)
・何度も見返すことができる上に、倍速など自分に適した視聴方法が選択できるため(その他国公立大、文系)
・自分の見たいところ、聞きたいところを何回も見られるから。逆に興味のない部分は飛ばすことができるから(中堅私立大、理系)
・好きな時間に好きな服装で緊張することなく説明を聞くことができる。メモをしやすい(その他私立大、文系)
・時間、場所、自分の服装を気にしなくていいから(中堅私立大、文系)
・要点がよくまとまっており、ESを書く際に見返しやすい。また、2倍速で見ることができる(中堅私立大、文系)
最終面接は「対面型」へ大きくシフト
最後に、面接に関するトピックから二つのデータを紹介します。コロナ禍で、セミナーや会社説明会と同様にオンライン化が一気に進んだ面接ですが、かつての対面型の面接時と比較すると、内定学生に対するグリップ力が低下したと感じる企業が少なくありませんでした。その結果、2023年卒採用では、非常事態宣言のような行動規制もなかったことから、対面型面接の復活を模索した企業が多かったようです。今回、学生側の視点から、実際に受けた「一次面接」と「最終面接」の形式について、回答してもらいました。
まずは、「一次面接の形式」から見ていきましょう。文系・理系ともに最も多かったのは「オンライン:対面型=10:0」、つまり受験したすべての企業がオンライン面接だったとの回答で、文系で40%、理系に至っては59%とほぼ6割に及びます[図表13]。ここでの文系と理系の差は、理系のほうが研究・実験等で多忙だろうとの企業側の配慮もあるでしょうが、グリップ力をあまり考慮する必要のない推薦応募の学生への対応によるものだと推測されます。
[図表13]一次面接の形式
次いで多い順に「オンライン:対面型=9:1」(文系25%、理系19%)、「オンライン:対面型=8:2」(文系9%、理系5%)が続きます。ここまでの3項目を合わせた「すべて、あるいはほぼオンライン型」(以下同じ)は、文系で74%、理系では82%にも達します。逆に「オンライン:対面型=0:10」、つまり受験したすべての企業が対面型面接だった割合は、文系・理系ともにわずか4%です。「オンライン:対面型=1:9」と「オンライン:対面型=2:8」を加えた「すべて、あるいはほぼ対面型」(以下同じ)でも、文系12%、理系では7%にとどまります。一次面接は依然として、オンライン型が大勢を占めていることが分かります。
一方、「最終面接の形式」を見てみると、様相はガラリと変わります。最も多かったのは、「オンライン:対面型=0:10」で、文系35%、理系でも22%と2割を超えます[図表14]。「すべて、あるいはほぼ対面型」では、文系は49%と約半数に、理系も32%と3割を超えます。逆に、「オンライン:対面型=10:0」は、理系でこそ27%と3割近くありますが、文系は半分以下の13%に過ぎません。「すべて、あるいはほぼオンライン型」で見ても、理系は40%と4割に及ぶものの、文系は22%と半分の2割程度にとどまります。
[図表14]最終面接の形式
最終面接においては、文系は対面型が主流、理系はまだオンライン型のほうが優勢であるものの、一次面接と比較すれば大きく対面型へシフトしてきていることが分かります。この流れは、2024年卒採用ではさらに顕著なものとなるでしょう。
ただ、学生の立場からは、それまで「オンライン型」で進んでいた面接が、最終面接でいきなり「対面型」に切り替わることへの戸惑いの声が多数寄せられています。最終面接前にも対面型の面接なり、フォロー面談なりを挟むなどの工夫をして、学生に「対面型」に慣れる場を提供してあげることが必要かと思われます。そのほうが最終面接で、より学生の本来の姿を確認できるはずです。
寺澤 康介 てらざわ こうすけ ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長 86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。 著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。 https://www.hrpro.co.jp/ |