2022年11月11日掲載

BOOK REVIEW - 『戦略的人的資本の開示 運用の実務』

一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアム 編
香川憲昭、岩本 隆、安藤光展、浅野敬志、中島夏耶、民岡 良、大木清弘、小川高子、トラン・チー 著 
A5判/288ページ/2400円+税/日本能率協会マネジメントセンター 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 米国証券取引委員会が人的資本に関する情報開示を義務化したことをきっかけとして、欧米企業で人的資本開示が進んでいる。日本も、欧米の動きに遅れまいと検討を加速し、2022年8月には、"新しい資本主義"実現のための最重要施策として、内閣官房が「人的資本可視化指針」を公表した。本書は「指針」の詳細な解説をはじめとして、人的資本経営と開示に取り組むために必要な知識を、各分野の第一人者が紹介している。

■ 本書の特徴は、人的資本に関するルール全般の解説はもちろん、開示に向けた実践的かつ具体的なアプローチが盛り込まれている点である。例えば、国際標準化機構が発表した人的資本に関する情報開示のガイドラインであるISO30414への対応を解説した章では、概要や注目を集める背景にとどまらず、「世界の主な認証機関」「認証取得の3つのステップ」まで掘り下げている。また、人的資本に対する投資家の関心のありかについても、資本市場の有識者へのインタビュー等を交えながら解説している。日本・アジアで初めてISO30414の認定を取得したリンクアンドモチベーショングループなど、企業インタビューが複数含まれていることも参考になる点だ。

■ 昨今の注目度の高まりを背景に、人事畑に身を置く担当者の中には、「人的資本開示」に関する業務を新たに命じられ、体系的な知識を求めている方もいることだろう。本書の前編に当たる『経営戦略としての人的資本開示』では、人的資本に関するよりベーシックな知識を紹介している。2冊を通読することで、人的資本開示の基礎から実践に役立つ各論まで、幅広い知見を得ることができるだろう。

戦略的人的資本の開示 運用の実務

内容紹介
2022年8月内閣府公表の開示ルール「人的資本可視化指針」の内容を中心に、投資家や経営者が必要とする知識を体系的に整理。開示戦略の策定ポイントを具体的に解説する。「経営戦略としての人的資本開示」の続編。

岸田内閣が掲げる「新しい資本主義」実現に位置付けられた「人的資本開示」は、2023年度から全ての上場企業に法的義務として課されます。その状況下、上場企業やその関連会社及び上場準備企業の経営者と関係部門の実務担当者は、まず例外なく、2022年8月末に内閣府より公表された開示ルール「人的資本可視化指針」に基づいた企業価値向上のための準備を進めることとなります。
そこで本書では、「人的資本可視化指針」の内容を中心に投資家や経営者が必要とする知識を体系的に整理。また、実務者にとって有用な開示戦略の策定ポイントが事例や図表類で具体的にわかります。