新型コロナウイルス対策のマスク着用の指示に従わなかったことを理由に解雇されたのは不当として、マンション管理人の70代男性が、雇用主の近鉄住宅管理(大阪市)に未払い賃金を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は5日、「解雇は社会通念上相当とは言えない」として無効と判断し、約90万円の支払いを命じた。
男性側代理人によると、マスク着用を巡る解雇に対する司法判断は珍しいという。近鉄住宅管理は取材に「コメントは差し控える」とした。
判決によると、男性は大阪府摂津市のマンションで管理人を務め、昨年5月に新型コロナに感染した。復帰した後の翌月、会社側は男性がマスクを着用せずに勤務していると住民から苦情があったとして、賃金が安い他のマンションの清掃員への配置転換を打診した。拒否すると、マスク着用の指示に従わなかったとして解雇通知を受けた。
佐々木隆憲裁判官は、マスクを着用しなかったことは就業規定に違反すると指摘。一方で住民からの苦情は1件にとどまり、マンションで感染が広がった事実もないことから解雇権の乱用に当たると判断した。
男性側は配置転換の打診についても、退職を目的にした違法行為だと主張。判決は「住民に感染の不安を与えないようにするため、配置転換には業務上の必要性があった」と退けた。
(共同通信社)