2022年12月06日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2022年12月

ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介

(調査・編集:主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 11月22日、Webテストの「替え玉」受験を理由として初めての逮捕者が出たとの報道がありました。コロナ禍のためテストセンターの利用ではなく、自宅での受験も可としていた企業も増えていた中で、「替え玉」のリスクは絶えず指摘されていたことではありました。Webテスト事業者側も、Webカメラによる監視等による「替え玉」対策はしてきていましたが、それにも限界はあります。今回「替え玉」を依頼していた女子学生のように、外部の代行者と自分のPCと画面共有をし、髪の毛で隠したイヤホンで回答を受けるなどという離れ業をされてしまったら、もうオンライン監視では不可能だといってよいでしょう。ただ、今回の一件は、代行する側にも、代行を依頼する学生側にも一定の歯止め効果をもたらすものだと思われます。
 今回の事件を受けて、就活生にされたインタビューの受け答えを聞いたり、記事で読んだりしましたが、入社試験の「替え玉」を依頼する行為にあまり罪の意識を感じていないことに驚きました。今ではもう過去の遺物となっている、私たちの学生時代によくあった、授業に欠席する学生が友人に出欠確認の「代返」を依頼するくらいの軽い気持ちで行われているようです。Webテストもエントリーシートも面接と同じ、入社に向けた「選考」であり、入社後も見据えたマッチングの一つであることをもっと認識してもらいたいと思います。

インターンシップは今回もニトリが高評価

 今回からは、HR総研が「楽天みん就」と共同で本年6月に実施した「2023年卒学生就活動向調査」の結果を基に、統計データではなく、就活生の本音の声を中心に紹介していきます。
 今回は、テーマごとに「学生の印象の良かった企業」とその理由についてのコメントを取り上げます。なお、本調査は1人1社しか投票できない形で実施していますので、「印象の良かった企業」はすなわち「最も印象の良かった企業」を回答しているに他なりません。1票の持つ意味は重いといえます。

 まずは、「インターンシップ」から見ていきましょう。好感度の高かった企業の上位10位までをランキング形式でまとめたものが[図表1]です。今回はこれまでとは異なる顔ぶれの企業もあります。

[図表1]印象の良いインターンシップTOP10

-票数-

順位 企業名 合計  
文系 理系
1 ニトリホールディングス 42 34 8
2 アイリスオーヤマ 30 25 5
3 楽天グループ 22 16 6
4 りそなグループ 17 16 1
5 Sky 16 9 7
6 NTTコムウェア 15 8 7
7 講談社 14 14 0
7 凸版印刷 14 11 3
7 本田技研工業 14 5 9
7 トヨタ自動車 14 2 12

資料出所:HR総研「2023年卒学生就活動向調査」(2022年6月、以下同じ)

 1位は「ニトリホールディングス」(42票)で、2位には10票以上の差をつけ、今回も断トツのトップです。同社は、インターンシップの種類や受け入れ人数の多さでも有名です。就活支援のプログラムのほか、フィードバックも評価のポイントとなっています。

・業務体験の意味合いが強く、最も実際に働くことをイメージできた(理系・上位私立大)

・早期選考のインターンから、誰でも参加ができるものまで多岐にわたっていた(文系・その他国公立大)

・就活時期のかなり初期の段階で参加しましたが、フィードバックなども細かく、グループディスカッションのレベルを引き上げてくれるようなインターンでした(文系・上位私立大)

・自己分析や企業分析を進めることができ、自分の方向性を定めることができた(理系・その他国公立大)

・社員の方から個別にフィードバックをいただくことができたから。プログラム内容は、実際の業務を体験できるようなグループワークだった(文系・上位国公立大)

・班ごとに担当リクルーターがつき、3日間を通して発表内容や就職活動に関するアドバイスをくださったこと(文系・旧帝大クラス)

 2位は「アイリスオーヤマ」(30票)。前回まではランク圏外でしたが、今回は堂々の2位です。ニトリホールディングスと同様に、多様なプログラムが評価されています。近年の事業の多角化とユニークな商品企画が奏功し、企業そのものが学生からも大きく注目を集めるようになってきています。

・会社の創業時からの歴史を学びながらグループワークができ、楽しかった(文系・上位国公立大)

・違う内容で何度も参加することができ、多面的に見ることができた(文系・その他私立大)

・若手社員の方が元気よく仕切ってくれたため。またインターン特別ルートが多数存在していたため(文系・上位私立大)

・チームの考えを人事担当者がとても尊重してくださり、チームでアイデアを出し合う楽しさを感じられた(文系・早慶大クラス)

・交通費宿泊費負担だったから(理系・その他国公立大)

 3位は楽天グループ(22票)。職種別のインターンシップが評価されています。また、コメント量の多い回答が目立ったのも同社の特徴です。

・マーケティングに関してコアな部分まで触れられるインターンシップだった。ジョブに特化したコンテンツだったので、「マーケターとして生きる」ことについての考えを深めることができた(文系・早慶大クラス)

・広告のインターンシップに参加した。楽天の持つサービスを組み合わせてクライアントの課題を解決するグループワーク形式のインターンシップだった。実際の業務に近い体験ができ、楽天の魅力であるエコシステムの強さを感じられた。また、社員の方からしっかりとフィードバックをいただけてためになった上、社員の方一人ひとりがとても優秀だと感じた(理系・旧帝大クラス)

・地域課題解決型インターンシップで、ビジネスをつくる難しさを体験できたから。その地域の方々へのヒアリングからチームでの分析、提案まで一貫して経験することができた。また、人事の方からフィードバックを得られたことも自分の課題を見つける上で非常に参考になった(文系・旧帝大クラス)

・トラベル部門でエンジニアの方たちと働くことができた。楽天グループで働くイメージを実際に経験して得られた(理系・中堅私立大)

 4位は「りそなグループ」(17票)。人事の対応や社員の人柄を評価する声が多くなっています。

・人事の人の対応が良かった。人事の人がお客さま役となって、お悩みを聞いてそれの解決策を提案するというものだった(文系・中堅私立大)

・社員の人がとてもいい人だと思ったし、銀行業務について、しんどい面も理解することができた(文系・上位私立大)

・自分自身を成長させることができたから。先輩社員との密接な関わりがあった(文系・中堅私立大)

・内容が勉強になり、人事の方々が優しく企業理解と社風が感じられた(文系・上位私立大)

カゴメが前回の2位からトップへ

 次に「採用ホームページ」について、ランキング上位10社を見てみましょう[図表2]

[図表2]印象の良い採用ホームページTOP10

-票数-

順位 企業名 合計  
文系 理系
1 カゴメ 64 37 27
2 NTTデータ 46 26 20
3 楽天グループ 44 32 12
4 アイリスオーヤマ 40 31 9
5 ソニーミュージックグループ 36 30 6
6 ソニーグループ 35 13 22
7 Sky 30 20 10
7 凸版印刷 30 20 10
9 旭化成 29 17 12
10 ニトリホールディングス 28 24 4

 今回1位に輝いたのは、前回2位だった「カゴメ」(64票)です。2位には20票近い差をつけ、さらに文系・理系から満遍なく票を集め、断トツの1位といってよいでしょう。社員情報の豊富さと、色使いによる見やすいつくりが評価されています。中には、「採用ホームページ」がテーマにもかかわらず、「応募した人に自社商品をプレゼントしている」という、ホームページとは関係のないコメントも複数寄せられています。

・入社何年で分けられていてキャリアプランが作りやすかった(文系・その他私立大)

・ハイテクノロジーな設備を有しているのが伝わった(理系・上位私立大)

・社員の話が豊富で、全体的に見やすかった(文系・旧帝大クラス)

・カテゴリーごとに分かれていて分かりやすかった(文系・上位私立大)

・人事部からのメッセージをはじめ、就活生に寄り添うような印象を受けた(文系・上位私立大)

・「カゴメのひと」という項目があり、働いている人の写真と話が記載されており、自分の働くイメージを想像しやすかった(文系・中堅私立大)

・企業紹介がキャッチーで明るく、企業の雰囲気の良さが伝わってきた(理系・旧帝大クラス)

・色味がカゴメのイメージにマッチしており、情報も見やすかった(文系・中堅私立大)

・カラフルなデザインでイラストも多く見やすかった(理系・その他私立大)

 2位は「NTTデータ」(46票)。こちらも文系・理系から均等に票を集めています。

・他の会社にはない、唯一無二の価値を提供していることが伝わってきて、この会社で働きたいと感じることができた(理系・旧帝大クラス)

・自分が行きたい業界なこともあり、さまざまな言葉や知識をホームページで知ることができた(文系・上位私立大)

・見やすいUIと、企業の強みが書かれていたため、志望理由をまとめやすかった(文系・中堅私立大)

・情報が分かりやすくまとめられていて、他社のように情報が点在していて見にくいとは感じられなかった(文系・早慶大クラス)

・選考基準の高さが分かりやすかった(理系・上位私立大)

・仕事内容に関する説明が豊富(理系・上位国公立大)

・NTTデータの歴史や日本・世界に与える影響を事細かに説明していた(文系・上位私立大)

 3位は「楽天グループ」(44票)。有価証券報告書よりも分かりやすいとの声も。

・会社がやっている事業、求めている人材が分かりやすかった(理系・その他国公立大)

・業績開示に加えて、リスク情報などに関しても詳細に開示されており、有価証券報告書よりも圧倒的に分かりやすい記載があったので。またESG関連情報も充実していた(文系・中堅私立大)

・企業情報の発信が見やすかった。やるべきことがリスト化されていて見やすかった(文系・旧帝大クラス)

・規模や事業などについて数字を用いて明確に示してあったため、分かりやすかった(文系・上位私立大)

・ホームページの色が鮮やかで、内容も簡潔明瞭(文系・旧帝大クラス)

・楽天経済圏の説明が分かりやすかった(文系・上位国公立大)

 4位は「アイリスオーヤマ」(40票)。多くのショート動画(YouTube)の投稿が評価されているようです。

・タイプ別診断があり、自分に合った職種を探せるようになっているなど、就活生に寄り添った内容だと感じた(文系・旧帝大クラス)

・採用部の方がショート動画をたくさんYouTubeに投稿されていて、企業理解や社風への理解が深めやすかった(文系・その他国公立大)

・学生がさらに企業について知ることができるように何個も動画を配信されていました(文系・その他私立大)

・採用情報や採用コンセプトがしっかり記されていて、好感を持てた(文系・中堅私立大)

・分かりやすくも明確な方針や目標が書かれていた(理系・上位私立大)

アイリスオーヤマが大躍進

 続いて、「セミナー・会社説明会」での高評価上位10社です[図表3]。対面で実施された小規模のものを評価しているコメントもあるかもしれませんが、大半はオンラインで開催されたプログラムに対するコメントだと思われます。

[図表3]印象の良いセミナー・会社説明会TOP10

-票数-

順位 企業名 合計  
文系 理系
1 アイリスオーヤマ 51 42 9
2 旭化成 37 23 14
3 ニトリホールディングス 35 30 5
4 NTTデータ 31 20 11
4 ソニーグループ 31 13 18
6 楽天グループ 30 23 7
6 アクセンチュア 30 18 12
8 味の素 28 13 15
9 カゴメ 24 12 12
10 バンダイナムコエンターテインメント 22 18 4

 1位は「アイリスオーヤマ」(51票)で、2位には10票以上の差をつけています。人事の印象の良さや、選考のポイントやスケジュール説明などが評価されているようです。

・人事の方の雰囲気が良かった、説明会の内容もユーモアに溢れていた(文系・早慶大クラス)

・説明が分かりやすく、質問に対し真摯(しんし)に答える人事(文系・その他私立大)

・入社後のギャップがないように多くの質問に答えていただけた(文系・中堅私立大)

・企業が目指す方向性など具体的で分かりやすかった(文系・その他私立大)

・人事の方が明るく楽しませてくれる説明会だった(文系・中堅私立大)

・選考のポイントを教えてくれた(文系・上位国公立大)

・つまらないと思った瞬間や、長いと思ったことがなかった(文系・早慶大クラス)

・クイズなどを挟んでいたから(理系・その他国公立大)

・社員の方が本当に企業のことが好きなんだなということが伝わった(文系・上位私立大)

・参加選択できる日程が多かった。内容が充実していた(文系・早慶大クラス)

・社員の方のスケジュールについて、写真を交えて説明してくれたのでイメージしやすかった。また、実際の会社の良いところと悪いところをしっかり教えてくださった(文系・上位私立大)

 2位は「旭化成」(37票)。メーカーでは理系の得票が多くなりがちですが、文系のほうが10票近く多いという珍しいケースです。さまざまな職種や属性ごとのセミナーが評価されています。

・さまざまな職種の方が出演しており、自身のキャリアに対してさまざまな考えを持つことができたから(文系・早慶大クラス)

・多くの職種について、詳しい説明がなされていた(理系・その他国公立大)

・若手社員や中堅社員等、各属性の社員を集めたセミナー(トークセッション)を複数回開催していただけたことで、さまざまな目線で企業分析できた(文系・早慶大クラス)

・学歴フィルターなど聞きにくいことを明確に話していた(文系・上位国公立大)

・社員の方が個性的で、社風にも魅力を感じた(文系・上位私立大)

・若手社員が入社してから現在までの仕事を紹介してくれた(理系・旧帝大クラス)

・人事の人がフレンドリーだった(理系・旧帝大クラス)

・個別質問時間を設けてくれた(文系・早慶大クラス)

 3位は「ニトリホールディングス」(35票)。会社説明会への社長の登壇だけでも評価が高くなるものですが、さらに社長への質疑応答まであったようです。

・社長のお話を聞くことができたから(文系・上位私立大)

・社長に質問する機会があったり、自己分析の方法を教えてくれたりと、就活生に対して親身な印象を持った(文系・旧帝大クラス)

・ただの企業説明会でもライブ配信で社長が出演してくださり、採用に力を入れている気がした。貴重な話を聞くことができた(文系・その他国公立大)

・質疑応答に着実に答えてくれる姿勢(文系・その他私立大)

・良いところも悪いところもすべて答えてくださった(文系・その他私立大)

・笑顔や声の張り方など、オンラインに慣れていて第一印象が良かった(理系・上位国公立大)

 4位には「NTTデータ」と「ソニーグループ」(ともに31票)が並びました。まずは、「NTTデータ」へのコメントです。社風を感じられるプログラム構成が評価されるとともに、ライブ配信した内容をアーカイブとしていつでも視聴できるようにするなどの配慮もポイントのようです。

・非常にフランクな雰囲気で、また、多様な事業の現場社員の方のお話を伺えた(文系・旧帝大クラス)

・社員の方が穏やかで、社風もとてもホワイトであることが伝わった(理系・旧帝大クラス)

・説明会に加えて座談会も開催していただき、複数の社員さんのお話を聞けるようにしていただけた(理系・上位私立大)

・リアルタイムとアーカイブの配信との両方があった(理系・旧帝大クラス)

・年次ごとの社員での座談会の様子をビデオとして流して見せてくれた(文系・中堅私立大)

・社員さんの楽しそうな雰囲気と、正直に業務や会社について話されていた印象を感じた(文系・上位私立大)

 続いて「ソニーグループ」へのコメントです。プログラムのタイムテーブルが事前に開示され、見たいところだけ見られる仕組みが高い評価を受けています。また、ソニーOBがパネラーとして登場するなどの斬新さを挙げる学生もいるようです。

・パネルディスカッションで、ソニーを辞めた人を呼んだりしていて、新鮮だった(文系・その他私立大)

・会社のビジョンなどが明確にされており、自分の就活の軸を決めることができた(文系・早慶大クラス)

・ライブの後、オンデマンドとして配信があり、より理解を深められた。社員の方のぶっちゃけた話も多く聞くことができて、入社したい気持ちが湧いた(文系・その他私立大)

・質問に対する受け答えが内定者の意見も交えてあり、詳しくて参考になった(文系・上位私立大)

・グループ合同の企業説明会を行っており、単に「ソニーで働きたい」でなく、ソニーのどの部門がいいか、さらにはソニーにこんな仕事があったのかと発見できる場になっていた。タイムテーブルが組まれており比較的参加しやすく、こちらのカメラもオフなので気軽に参加できた(文系・上位私立大)

・規模が大きく、たくさんの部門の社員の話を自分の聞きたい部分だけ視聴するスタイルが良いと思った(理系・上位国公立大)

・オンラインでさまざまな業種へのアクセスができ、そのブースで仕事の中身を実際に聞ける。文系、理系、働き方ややりたいこと(営業、事務、製造)でセミナーが分かれており、自分に合ったものをピンポイントで見つけられる(文系・上位私立大)

話しやすい環境づくりが評価された楽天グループ

 次は「面接官」が好印象だった上位10社を見てみましょう[図表4]。学生から見れば、面接官は人事部門の方なのか、人事以外の部門の方なのかは判断できませんので、「人事」の評価ではなく、あくまでも「面接官」に対する評価、コメントになります。

[図表4]印象の良い面接官TOP10

-票数-

順位 企業名 合計  
文系 理系
1 楽天グループ 26 19 7
2 ソニーグループ 18 2 16
3 アイリスオーヤマ 16 9 7
4 東京海上日動火災保険 15 14 1
4 ニトリホールディングス 15 10 5
4 旭化成 15 9 6
7 アクセンチュア 13 6 7
8 凸版印刷 12 7 5
9 伊藤忠テクノソリューションズ(CTC) 11 5 6
9 日鉄ソリューションズ 11 2 9

 1位は「楽天グループ」(26票)。話しやすい雰囲気づくり(アイスブレイク)や逆質問への対応が評価されています。

・面接に入る前に緊張をほぐすため、軽い雑談をしてくださったから。言葉に詰まっても、自分の想いを理解しようと努めてくれた(文系・旧帝大クラス)

・自分の話を熱心に聞いてくれ、自分の良さを引き出そうとしてくれた(文系・旧帝大クラス)

・非常に和やかな雰囲気を作ってくださった。話を真剣に聞いてくださっていることが非常に伝わりました。また、逆質問の時間にも真剣に答えてくださった(文系・上位私立大)

・2次面接の面接官の方の印象がとても良かった。逆質問の時間に、企業や仕事に関するいろいろなお話を聞くことができ、働くイメージを持つことができたため志望度が上がった(文系・中堅私立大)

・自分の考える疑問点をすべて回答してくださり、なおかつ正直な意見を聞けた(理系・中堅私立大)

・私の意見を肯定してくれた(文系・上位私立大)

・距離感が丁度良かった(理系・その他国公立大)

 2位は「ソニーグループ」(18票)。穏やかさとじっくり対話をしようとする姿勢が好印象を与えているようです。

・技術者の方は研究内容を的確に理解してくださり、的確な質問をしてくださった。人事の方も管理職の方もこちらの話を正確に理解しつつ聞いてくださった感じがした(理系・旧帝大クラス)

・始終和やかでこちらの話や人間味を引き出そうとしてくれ、面接内でしっかりと対話することができた(理系・上位国公立大)

・「ありのままのあなたで面接に臨んでほしい」と、個人を非常に尊重してくださったので。服装なども自由で非常にフランクではありつつ、企業とのマッチ度を意識した面接だと感じた(文系・中堅私立大)

・配属先社員が、私の研究に心から興味を持ってくれていると感じた。「以前こんな研究を見た」という話までしてくれて、雰囲気のいい研究室のような職場なのかなと思った(理系・中堅私立大)

・制限時間が40分と長めだったのもあるが、非常に緊張していた際に、「今日はあなたの話をじっくり聞かせてください。詰まっても全然大丈夫ですから」と励ましてくださって心が楽になった(理系・早慶大クラス)

・面接官の圧力がなく、穏やかであり話しやすかった(理系・旧帝大クラス)

・面接官が自分の話を引用して話されたときに、話を聞いてくれているんだと感じた(理系・旧帝大クラス)

 3位は「アイリスオーヤマ」(16票)。明るさ、笑顔、そして面接後のフィードバックが評価されています。

・明るくハキハキと、面接でどこが良かったのか、悪かったのかを説明してくださいました(文系・その他私立大)

・笑顔が多く、場を和ませてくれた(理系・上位私立大)

・明るい、話を最後まで聞いてくれる(理系・その他私立大)

・真摯に向き合ってくれた(文系・その他国公立大)

ESで不動の地位を築いたカゴメ

 最後は少し趣向を変えて、良しあしではなく、あくまでも印象に残った「エントリーシート」をランキングにしてみました[図表5]

[図表5]印象に残っているエントリーシートTOP10

-票数-

順位 企業名 合計  
文系 理系
1 カゴメ 47 30 17
2 アクセンチュア 40 27 13
3 旭化成 36 25 11
4 アイリスオーヤマ 25 16 9
5 味の素 24 13 11
6 講談社 23 23 0
7 楽天グループ 22 16 6
8 花王 21 6 15
9 ソニーミュージックグループ 20 14 6
9 伊藤忠テクノソリューションズ(CTC) 20 10 10

 1位は、もはや不動といっても過言ではない「カゴメ」(47票)で、ネットと手書きの2種類のエントリーシート併用や、同社独自のユニークな設問とその分量の多さが学生にインパクトを残しているようです。

・得意教科やベストバイなど個人の趣味趣向を聞いてくる質問が多かった(理系・旧帝大クラス)

・野菜に関することや健康に関することなど、企業の業務内容に合ったエントリーシートで印象に残りました(文系・上位私立大)

・さまざまな職種、年齢、性別の方のコメントを見ることができたこと。その感想を書くところもあり、印象に残った(理系・中堅私立大)

・自由記述欄があり、就活生の中身を本気で見定めようとしていると感じた(文系・上位私立大)

・自分自身を紙一枚に自由に表現することができるエントリーシートだった(理系・上位私立大)

・ネット提出に加えて手書きのエントリーシートを提出した(文系・その他私立大)

・職種別だからか、職種にまつわる特殊な質問があった(文系・上位国公立大)

 2位は「アクセンチュア」(40票)。こちらも同社独自の設問構成とその分量の多さ、さらには時間制限まであることが学生に強烈な印象を残しています。

・文字数が多かったものの、質問の意図が分かりやすかった(文系・旧帝大クラス)

・回答に要求される文字量が多く、質問もざっくりとした感じではなかった(文系・上位私立大)

・質問が多いし、時間制限により入力した内容も消される可能性がある(文系・旧帝大クラス)

・企業理念から一つ選びエピソードを書くものは初めてだった(文系・上位私立大)

・自分自身の価値観を問われるような設問が多く、特徴的だと感じた(理系・旧帝大クラス)

・会社独自の質問が多く、しっかりと企業研究が必要であった(理系・旧帝大クラス)

・コンサルにしてはESの設問がしっかりしていた(文系・上位私立大)

・面倒くさい質問が多かった(文系・早慶大クラス)

 3位は「旭化成」(36票)。「セミナー・会社説明会」での得票数と同様に、こちらも得票数では文系が理系を大きく上回っています。毎年キーワードを替えて出題される自由作文が、今回も学生の印象に深く刷り込まれています。

・九つの単語のうち三つを組み合わせて自由に文章を作れ、という設問は旭化成にしかなかった(文系・旧帝大クラス)

・お題の語をいくつか使用して文を作りなさい、という質問が印象的であった(文系・早慶大クラス)

・面接で一切関係ない質問をされた(文系・早慶大クラス)

・詩を書く設問があった(文系・上位私立大)

・ポエムを書くタイプのエントリーシートは初めてであった(理系・その他国公立大)

・説明会の内容への感想も聞かれて、珍しいエントリーシートだった(理系・その他国公立大)

 以上、「インターンシップ」「採用ホームページ」「セミナー・会社説明会」「面接官」「エントリーシート」の五つのテーマで、学生に印象の良かった(「エントリーシート」については印象に残った)企業を聞いた結果を、得票数でランキング化し、それぞれ上位10社を見てきました。
 すべてのランキングに顔を出した企業が2社だけあります。1社は「楽天グループ」で、毎年の調査でも常連となっている企業になります。そしてもう1社は、今回の調査で突如として現れた「アイリスオーヤマ」です。「アイリスオーヤマ」について、前回の調査データを振り返ってみると、いずれのテーマでも1桁台の得票にとどまっていました。今年の新卒採用市場において大きく化け、採用ブランディングに大成功したといえるでしょう。ユニークな商品企画だけでなく、新卒採用市場における今後の同社の動向に注目していきたいと思います。

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
https://www.hrpro.co.jp/