リクルートワークス研究所 主任研究員、一般社団法人スクール・トゥ・ワーク代表理事
新書判/256ページ/900円+税/中央公論新社
BOOK REVIEW ―人事パーソンへオススメの新刊
■ 「叱られることもなく、理不尽なことも言われず、残業も少ない」――このようにとても働きやすく、人によっては"ゆるい"と感じてしまうような職場を辞める若者が、近年増えているという。本書は、従来の"キツい職場からの退職"とは異なるこの問題について、経済産業省で産業人材政策などに携わったあとリクルートワークス研究所で主任研究員を務める著者が、その理由と対処法を解説していくものである。
■ 第1章では、2010年代後半以降における労働関連の法整備により、若者側ではなく職場側が"ゆるく"なったことを指摘し、続く第2章では、「このままではスキルが身に付かず転職できないのではないか」といった"不安"が原因で若者が辞めてしまう状況を解き明かしている。第3章以降では、職場における過去の育て方が通用しなくなっていることを踏まえ、効果的な育成方法や若者と職場との新たな関係を提示していく。例えば第6章では、「理不尽さや高い関係負荷を排して仕事の質的負荷だけをどう上げていくか」という若手育成上の難問について、縦ではなく横の関係(=同期・同僚)で育てる取り組みの有効性などを紹介している。
■ せっかく働きやすい環境を整えているにもかかわらず、それが原因となって若者が辞めてしまうのであれば、企業にとっては非常に頭の痛い問題だろう。しかし、もはや職場環境を過去の姿に逆行させることはできないし、それが望ましいわけでもない。こうした状況下で思い悩む企業側の担当者にとって、若者の新たな育成方法やキャリア形成を考える上で、本書は有用な知見を与えてくれるはずだ。
内容紹介 「今の職場、“ゆるい”んです」「ここにいても、成長できるのか」。そんな不安をこぼす若者たちがいる。2010年代後半から進んだ職場運営法改革により、日本企業の労働環境は「働きやすい」ものへと変わりつつある。しかし一方で、若手社員の離職率はむしろ上がっており、当の若者たちからは、不安の声が聞かれるようになった――。本書では、企業や日本社会が抱えるこの課題と解決策について、データと実例を示しながら解説する。 |