2023年02月07日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2023年2月

ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介

(調査・編集:主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 1月27~28日に開催された新卒向け就活イベントが、朝日新聞やテレビ東京『ワールドビジネスサテライト(WBS)』などで取り上げられました。このイベントは、インターネット上の仮想空間「メタバース」を使った合同就職説明会で、イベント名称は『メタバース新卒採用EXPO2024』。主催は、人材会社の株式会社ネオキャリアとメタバース事業を展開するスタートアップ企業である株式会社X。コロナ禍以降、合同会社説明会のオンライン化も進みましたが、その多くはタイムスケジュールで各社の会社説明会の時間帯が指定され、予約をした上でその時間に視聴するというものです。
 今回画期的だったのは、メタバース空間で企業の採用担当者と就活生が、「アバター」と呼ばれる自身の分身となるキャラクターを通して自由にコミュニケーションが可能となったことです。従来からの対面式の合同会社説明会会場に足を踏み入れたに近い感覚で、会場を自由に動き回ることができ、学生は匿名のまま採用担当者に質問もできたとのこと。資料のダウンロードでは、自身の氏名やメールアドレス等の情報を公開する必要がありますが、それまでは匿名のままコミュニケーションが取れますので、応募するかもしれない企業の採用担当者に対して、自身の情報を開示しては聞きづらいような質問もできたことが、学生の高評価にもつながったようです。
 ここまで来ると、3年前、Zoom等のオンラインコミュニケーションツールの使い方も満足に分からず、オンラインでの会社説明会や面接に四苦八苦していた頃のことを思うと、隔世の感がありますね。昭和世代の採用責任者や経営者は、この先どこまで世の流れについていくことができるのでしょうか。私も含めてですが…。

内定者フォローだけでなく応募者フォローにも注力

 さて今回は、HR総研が人事採用担当者を対象に2022年11月28日~12月9日に実施した「2023年&2024年新卒採用動向調査」の結果を見ていきます。まずは、2023年卒採用から簡単に振り返ってみましょう。
 「2023年卒採用活動で苦労した点」を聞いたところ、全体では「ターゲット層の応募者を集める」と「応募者の数を集める」がどちらも半数近くに上り、続いて「応募者フォロー」と「内定者フォロー」が23%で並んでいます。また、大学キャンパス内が再び活況を呈してきたこともあり、「大学との関係強化」が5位と上位に食い込んできています[図表1]。なお、今回は図表を見やすくするため、あえて選択肢の全項目をグラフに表示することなく、「全体」での上位10項目に絞って紹介しています。

[図表1]2023年卒採用活動で苦労した点(複数回答、全体のTOP10)

資料出所:HR総研「2023年&2024年新卒採用動向調査」(2022年11~12月、以下図表も同じ)

 企業規模別に見ると、順位の差こそあれ、上位10項目はほぼ同じ顔ぶれです。1001名以上の大企業では、「ターゲット層の応募者を集める」が55%と半数を超えてトップ、次いで「応募者の数を集める」37%、「内定者フォロー」34%などとなっています。採用規模が大きいため、ターゲット層に絞り込んだ応募者集めが重要であるとともに、内定を出した後も入社に至るまでの内定者フォローも重視され、中堅・中小企業より高負荷となっている様子がうかがえます。また、「面接官のスキル向上」を挙げる企業の割合が他の規模よりも多く、オンライン面接での応募者の見極め力や、応募者・内定者へのグリップ力の強化を図りたいとの狙いがあるものと推測されます。
 301~1000名以下の中堅企業では、「ターゲット層の応募者を集める」と「応募者の数を集める」がともに50%で並んで最多となっています。ターゲットに限定されない母集団集めに苦労しているとともに、「内定者フォロー」より「応募者フォロー」の割合がわずかに高く、内定を出す前の選考段階から応募者の離脱(選考辞退)防止を重視している企業が少なくないことがうかがえます。300名以下の中小企業では、「応募者の数を集める」が50%で、「ターゲット層の応募者を集める」の44%を上回っています。中堅企業と同様に、母集団形成や選考辞退に苦労しているようです。

中小企業は「対面主体」で面接が7割以上

 次に、「2023年卒採用で実施したダイレクトソーシング」では、「(ダイレクトソーシングを)実施していない」とする企業は、大企業26%、中堅企業36%、中小企業44%となっており、企業規模が小さいほどダイレクトソーシングを実施していないことが分かります[図表2]

[図表2]2023年卒採用で実施したダイレクトソーシング(複数回答)

 実施している内容を具体的に見ると、すべての企業規模で「逆求人サイトの活用」が最多となり、大企業と中堅企業では3割以上の企業が実施しています。次いで、「社員からの紹介(=リファラル採用)」が多く、大企業では「逆求人サイトの活用」とほとんど変わらないほど実施されています。「内定者からの紹介」は、大企業と中堅企業では1割以上の企業で実施されているのに対して、内定者数が少ない中小企業では4%と低い割合にとどまっています。

 「2023年卒採用で実施した面接選考の形式」について確認したところ、全体では「対面形式のみで実施」19%、「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」と「オンライン形式を主軸に対面形式でも一部実施」がそれぞれ34%・33%で同程度、「オンライン形式のみで実施」が14%となりましたが、企業規模によって実施した形式の割合は大きく異なります[図表3]

[図表3]2023年卒採用で実施した面接選考の形式

 大企業では、「対面形式のみで実施」は1社もなく、「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」が42%、これに対して「オンライン形式を主軸に対面形式でも一部実施」と「オンライン形式のみで実施」を合わせたオンライン派(以下同じ)が58%と、オンライン派のほうが上回っています。
 中堅企業でもオンライン派が62%と優勢ですが、大企業との違うのは「対面形式のみで実施」が17%と2割近くもあることです。中小企業では、「対面形式のみで実施」と「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」を合わせた対面派が75%と4分の3を占め、大企業や中堅企業とは全く異なる結果となっています。

内定者フォローは「オンライン」から「対面」へ

 「2023年卒採用で実施の内定者フォロー」(全体のTOP15)では、最多は「オンラインでの内定者懇親会」の48%ですが、「対面での内定者懇親会」も46%とわずか2%の差しかないほど、対面での内定者フォローが復活してきていることが分かります[図表4]

[図表4]2023年卒採用で実施の内定者フォロー(複数回答、全体のTOP15)

 「若手社員との懇親会」を見ても、「オンラインでの若手社員との懇親会」32%に対して、「対面での若手社員との懇親会」も27%と大きな開きはありません。その他、上位15位までにランクインした項目を見ると、「入社前集合研修」(16%)、「企業・工場見学会」(16%)、「対面での経営者・役員との懇親会」(12%)、「対面でのインターンシップ」(11%)、「対面での管理職社員との懇親会」(9%)と、対面で実施される内容がずらっと並んでいます。面接選考をオンライン主体で進めてきた企業も、内定辞退を防止するための内定者フォローでは、内定者へのグリップ力を高めるためにも「オンライン」から「対面」に切り替えざるを得なくなっている様子がうかがえます。

 2023年卒採用の最後は、「11月末時点での内定辞退率」を見てみましょう。全体では、「0%」が25%で最多、次いで「10~30%未満」23%などとなっており、「30%未満」(「0%」~「10~30%」の合計、以下同じ)は65%と3分の2近くになります[図表5]

[図表5]2023年卒採用の11月末時点での内定辞退率

 企業規模別に見ると、「0%」の割合は大企業で高いわけではなく、逆に中小企業が48%で突出して高くなっています。大企業は内定者が多い分、かえって内定辞退リスクは高く、「0%」の割合はわずか5%と最も低くなっています。中小企業は内定者が少ないことから内定辞退リスクが低くなりやすいといえますが、一人でも内定辞退が発生した場合には、内定辞退率が大きく跳ね上がるだけでなく、配属が予定されていた部署からすれば新入社員がいなくなるというリスクを抱えることにもなります。
 企業規模別に「30%未満」の割合で比べてみると、中小企業が77%で最も高く、次いで大企業が全体とほぼ同じ66%、そして中堅企業が50%で最も低くなっています。中堅企業の結果を見ると、最多は「30~50%未満」の29%でどの規模よりも高く、「50%以上」(「50~70%未満」~「90~100%」の合計)の割合も2割を超え、最も高くなっています。中堅企業では、内定者が大企業と競合するケースも多く、内定辞退リスクが最も高くなっているものと思われます。

より「売り手市場」が鮮明に

 ここからは、2024年卒採用の調査結果を見ていきましょう。
 まずは、「2024年卒採用計画数の増減」からです。既に2023年卒採用においても、コロナ禍で採用を凍結していた航空業界をはじめ、新卒採用を復活させる企業や採用計画数を前年より増やす企業が数多く見られましたが、2024年卒採用ではさらにその動きが強まりそうです。
 全体では、「前年並み」とする企業が最多で46%、「採用なし」や「未定」の企業も3割以上あるものの、「(前年よりも)増やす」の16%に対して、「(前年よりも)減らす」はわずか2%に過ぎず、企業の採用意欲はますます旺盛になっていることが分かります[図表6]

[図表6]2024年卒採用計画数の増減

 企業規模別に見ると、大企業では「増やす」が25%なのに対して、「減らす」と回答した企業はありませんでした。中堅企業では、「前年並み」が68%と7割近くを占めるものの、「増やす」の15%に対して「減らす」は2%のみ。中小企業でも、「増やす」の14%に対して「減らす」は3%にとどまるなど、企業規模を問わず「増やす」と回答した企業が「減らす」と回答した企業を大きく上回ります。2024年卒採用は、2023年卒採用以上に学生の「売り手市場」が強まりそうです。

大学ルートの強化が上位に

 次に、「ターゲット層採用のために実施・検討している施策」について見てみましょう。全体では、「インターンシップの活用」が41%でトップ、次いで「キャリアセンター・就職部訪問」(36%)、「大学主催の学内セミナー」(31%)、さらに5位には「研究室訪問」(22%)と、ターゲットとなる「大学」と連携した施策が上位を占めています[図表7]

[図表7]ターゲット層採用のために実施・検討している施策(複数回答、全体のTOP10)

 企業規模別に見ると、大企業では「先輩・リクルーターの活用」が最多で49%と半数近くに及び、20~21%にとどまる中堅・中小企業との際立った違いとなっています。「インターンシップの活用」や「キャリアセンター・就職部訪問」など、全体で上位を占めていた施策は、大企業でも上位にランクインしていますが、他の企業規模と比較してのもう一つの違いは、「リファラル採用(=社員からの紹介)」(23%)が「逆求人サイト」(13%)を10ポイントも上回っていることです。ダイレクトソーシングについては、次項でもう少し詳しく見ていくことにします。
 中堅企業を見ると、「大学主催の学内セミナー」が51%と唯一の半数超えとなっているほか、「インターンシップの活用」、「キャリアセンター・就職部訪問」がともに47%と高い割合となっています。そのほか、「内定者の活用」(30%)、「逆求人サイト」(23%)なども、他の企業規模より高くなっています。
 中小企業では、上位4項目は全体と全く同じ順位となりましたが、「内定者の活用」(8%)、「大学別セミナー・OB/OG懇談会」(8%)の割合は他の企業規模の半分以下となっています。その反面、「新卒紹介」は大企業の3%に対して17%と、比較的高い割合になっています。採用担当者のマンパワー不足を補うためもあるでしょうが、採用人数が少ないために、マスに向けた採用活動を行うよりも「新卒紹介」のほうがコスト的にも効率的だということもあるのでしょう。

 以下、ターゲット層採用のための具体的な施策内容を抜粋して紹介します。大学を通じての施策を挙げるコメントが多く見られます。

・内定者の学校とのつながり強化(301~1000名、不動産)

・大学との関係構築の強化(1001名以上、サービス)

・キャリアセンターへの訪問、大学主催の学内セミナーへの参加(300名以下、メーカー)

・キャリアセンターとの関係強化(301~1000名、IT・通信)

・学校訪問し、学校とのつながりを強化。学内説明会への参加を増やしている(300名以下、IT・通信)

・大学訪問でキャリアセンターの担当者に斡旋してもらう(300名以下、メーカー)

・特定の大学様とのお付き合いが深いため、学内企業説明会⇒個別説明会を密にしている(301~1000名、メーカー)

・学内説明会の充実(301~1000名、サービス)

・学内企業説明会への積極的参加(300名以下、メーカー)

・国公立大学対象の合同説明会への参加(301~1000名、IT・通信)

・人事部門だけでなく内定者を含め社内の人間との接点を増やす(300名以下、サービス)

・説明会のブラッシュアップ(301~1000名、商社・流通)

・中途採用メインへの切り替え(300名以下、運輸・倉庫)

・個社でなく、グループ企業全体としての就職イベント(301~1000名、商社・流通)

・ダイレクトリクルーティング、新卒紹介(300名以下、メーカー)

・リファラル採用(1001名以上、メーカー)

・理系限定インターンシップの実施(300名以下、IT・通信)

ダイレクトソーシングも「ヒト」の時代へ

 前項の大企業のところでも少し触れた、「2024年卒採用で実施予定のダイレクトソーシング」の結果を紹介します。前掲の[図表2]で見たように、「2023年卒採用で実施したダイレクトソーシング」では、すべての企業規模において「逆求人サイトの活用」が「社員からの紹介」を上回っていましたが、「2024年卒採用で実施予定のダイレクトソーシング」では、中小企業を除いて「社員からの紹介」が「逆求人サイトの活用」を上回る結果となりました[図表8]

[図表8]2024年卒採用で実施予定のダイレクトソーシング(複数回答)

 全体ではわずか1ポイント差ですが、「社員からの紹介」が中堅企業では5ポイント、大企業では7ポイントも上回っています。「逆求人サイトの活用」のポイントが、「2023年卒採用で実施したダイレクトソーシング」のポイントよりも微減したことの影響もありますが、それよりも「社員からの紹介」のポイントの上昇が、順位逆転の要因です。例えば大企業では、23年卒32%→24年卒38%と6ポイントも伸びています。
 もう一つ、「内定者からの紹介」もすべての企業規模で伸びています。大企業では23年卒13%→24年卒21%、中堅企業では23年卒12%→24年卒26%、中小企業でも23年卒4%→24年卒9%といった状況です。内定辞退が大きな採用課題となる中、応募学生へのグリップ力をいかに強化していくかが重要です。「ヒト」を介して少しでもつながりのある応募者を増やしたい、また自社をよく知る「ヒト」のフィルターを通すことでミスマッチを減らしたいという思惑が、この変化をもたらせているものと推測されます。
 DX化が進めば進むほど、企業の人事部門には、自社の社員に対してよりヒューマンな対応が求められる、効率化で空いた時間は社員に向き合う時間に充てていくべきだといわれています。採用においても、「よりヒューマンになるべき」という流れは変わらないということなのでしょう。

インターンシップに積極的な中堅・中小企業

 ここからは、インターンシップについて見ていきます。まずは、「2024年卒採用向けインターンシップの実施状況」です。「未定・検討中」とする企業も2割弱ある中で、全体で57%の企業が「実施する」(「前年は実施していないが、今年は実施する」と「前年同様に実施する」の合計、以下同じ)と回答しています[図表9]

[図表9]2024年卒採用向けインターンシップの実施状況

 「実施する」とした割合は、企業規模別に見ると、大企業72%、中堅企業69%と7割前後に達したのに対して、中小企業は40%と差が開いています。2022年3月に実施した「2023年新卒採用動向調査」と比較すると、大企業と中小企業では大きな差異は見られないものの、中堅企業は「実施する」が9ポイントも伸びており、今年は中堅企業も、大企業に負けずに積極的にインターンシップ(=早期から採用活動)に着手している様子がうかがえます。

 次は「2024年卒採用向けインターンシップの実施時期」です。全体では、「2022年8月」が52%で最多、次いで「2022年12月」51%、「2023年1月」49%と続きます[図表10]。これまでは、「8月」「9月」の夏季休暇中に一つ目のピークを迎え、次のピークは「翌1月」「2月」の後期試験終了後になるケースが通例でしたが、今回は少し様子が異なります。一つ目のピークである「8月」から「9月」にかけて実施率の落差が大きいこと、さらに二つ目のピークが「1月」から「12月」に前倒しになっていることです。

[図表10]2024年卒採用向けインターンシップの実施時期(複数回答)

 企業規模別に見ると、もう一つの違いが見られます。それは、大企業に比べて中堅企業の実施割合がおしなべて高いことです。「2022年6月以前」という早期こそ、中堅企業は大企業の半分程度の実施率にとどまっていますが、「7月」以降はほぼすべての月で大企業を上回ります。中でも「8月」と「12月」はともに60%にも上り、最多となっています。これは大企業より15ポイント前後も高い割合です。中小企業においても、「8月」と「12月」は大企業を上回る50%となっているほか、「2023年1月」が最多で、中堅企業をも上回る58%となっています。
 インターンシップの実施率でこそ、大企業・中堅企業と中小企業では差がありましたが、実施する企業だけに絞っての積極性という観点で見れば、中堅・中小企業が大企業をしのぐ勢いであることが分かります。

対面へ戻り始めたインターンシップ

 コロナ禍以降、セミナー・会社説明会や面接だけでなく、インターンシップにもオンライン化の波が打ち寄せていましたが、2024年卒採用ではどうなるのでしょうか。
 「2024年卒採用向けインターンシップの実施形式」を「すべて対面形式で実施」、「対面形式とオンライン形式を混合して実施」、「すべてオンライン形式で実施」の3択で回答してもらった結果は[図表11]のとおりとなりました。全体では、「対面形式とオンライン形式を混合して実施」が最多で38%、次いで「すべてオンライン形式で実施」と「すべて対面形式で実施」がそれぞれ32%、30%で拮抗しています。

[図表11]2024年卒採用向けインターンシップの実施形式

 ただ、企業規模別に比較すると、規模によって全く異なる様相を呈しています。大企業では、半数が「対面形式とオンライン形式を混合して実施」、「すべてオンライン形式で実施」35%に対して、「すべて対面形式で実施」は15%と、オンライン派が優勢です。中堅企業になると、「すべて対面形式で実施」が25%と伸び、オンライン派との差は減少し、中小企業に至っては「すべて対面形式で実施」が52%を占めるなど、圧倒的に対面派が多くなっています。
 ここ数年のオンライン化の中で受け入れ人数を大きく伸ばしてきた大企業にとって、対面形式での実施は新型コロナ感染症対策を講じなくてはならないという対応の手間もありますが、それ以上に同規模の対面形式への切り替えは会場や運営体制の確保など、物理的に難しくなっているのではないかと思われます。

対面とオンラインで同じ内容のケースも

 続いて「2024年卒採用向けインターンシップの日数タイプ」について見てみましょう。対面形式か、オンライン形式かによって、開催日数の傾向は大きく異なります。オンライン形式で実施されるインターンシップでは、「半日程度」が56%で圧倒的に多く、次いで「1日程度」31%、「2~3日程度」27%と短期間のタイプが多くなっています[図表12]

[図表12]2024年卒採用向けインターンシップの日数タイプ(複数回答)

 「1週間以上」(「1週間程度」~「1カ月以上」の合計、以下同じ)は24%にとどまります。ただ、オンライン形式でも「2週間以上」(「2週間程度」~「1カ月以上」の合計)実施する企業が2割近くあることには少々驚きました。学生にとっては将来の在宅勤務の予行演習になっており、オンラインではありながらも本来のインターンシップ(=就業体験)の趣旨に合致しているともいえそうです。
 一方、対面形式では、「1日程度」が41%で最多、「半日程度」、「2~3日程度」、「2週間程度」がいずれも24%で並びます。「1週間以上」は48%と、オンライン形式のちょうど2倍になるなど、対面形式は短期から長期まで幅広く実施されているのが特徴です。

 では、最後に「2024年卒採用向けインターンシップの内容」を実施形式別に見てみましょう。対面形式では、「実務体験」、「業界・事業紹介」、「ケースワーク/グループワーク」、「社員との交流」、「会社/現場見学」が、いずれも5割前後の企業で実施されています[図表13]。これに対して、オンライン形式では、「業界・事業紹介」(80%)と「ケースワーク/グループワーク」(73%)の二つが突出しており、「会社/現場見学」(13%)や「実務体験」(29%)は実施企業が極めて少なくなっています。オンライン形式で実施する場合には、オンラインに向いている内容と不向きな内容がはっきりしており、結果的に会社説明会とあまり代わり映えのしない内容に陥ってしまっている企業も少なくないものと思われます。

[図表13]2024年卒採用向けインターンシップの内容タイプ(複数回答)

 対面形式とオンライン形式で実施した、それぞれの具体的な内容を抜粋して紹介します。対面形式の内容をそのままオンライン形式に置き換えたケースや、オンラインでは映像視聴しか実施できない工場見学を外して構成したケースなども散見されます。「対面形式とオンライン形式を混合して実施」と回答した企業の中には、一人の学生に対して対面形式とオンライン形式で異なる二つの内容のプログラムを提供するケースと、同じプログラムを両形式で展開し、学生にはどちらかに参加してもらうケースの二通りあることが分かります。

【対面形式】

・ビジネスゲーム(301~1000名、不動産)

・設備設計の実務研修を通し、設備設計の魅力を伝える(300名以下、建設・住宅)

・実際に設計業務を経験させる(1001名以上、メーカー)

・当社で開発したアプリなどの説明と、それにまつわるグループワーク(301~1000名、商社・流通)

・営業体験シミュレーション(1001名以上、商社・流通)

・社員と同行で、客先との打合せ・現場作業、オフィスにて図面作成など(300名以下、建設・住宅)

・業界・会社紹介、グループワーク、社員との交流(301~1000名、運輸・倉庫)

・作業所見学、先輩社員との座談会(301~1000名、建設・住宅)

・各職種別のグループワーク(301~1000名、建設・住宅)

・会社説明、工場見学、グループワーク(301~1000名、メーカー)

・実際の仕事の簡単なところを体験してもらう(300名以下、IT・通信)

・プログラミング(300名以下、IT・通信)

・開発会議参加(300名以下、メーカー)

【オンライン形式】

・当社で開発したアプリなどの説明と、それにまつわるグループワーク(対面形式と同じ内容/301~1000名、商社・流通)

・業界・会社紹介、グループワーク、社員との交流(対面形式と同じ内容/301~1000名、運輸・倉庫)

・会社説明、グループワーク(対面形式の内容から工場見学をカット/301~1000名、メーカー)

・事前に配布したワークシートを使った個人ワーク、少人数で模擬提案を行う体験型グループワーク(300名以下、サービス)

・ワークショップとフィードバック(1001名以上、建設・住宅)

・業界紹介とグループワーク(1001名以上、メーカー)

・自社で発生しうる事案を例に参加者に議論していただき、業務を疑似体験していただく(1001名以上、サービス)

・業界理解を目的とした、グループディスカッション(1001名以上、サービス)

・ゲーム制作の要素(企画・デザイン・プログラム)の各工程を実務者のアドバイスを受けながら課題を解く実践形式(301~1000名、IT・通信)

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
https://www.hrpro.co.jp/