2023年02月10日掲載

BOOK REVIEW - 『変化に強く、イノベーションを生み出す ネットワーク型組織のつくり方』

北郷 聡/橋本洋人 著
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 
A5版/328ページ/3000円+税/すばる舎 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 本書で取り上げるネットワーク型組織とは、多くの日本企業における従来の階層型組織とは異なり、チームのメンバーがフラットな関係にある、“人間中心”の設計がされた組織形態である。環境変化が激しい現代において、新たな物事に素早く対応し、イノベーションを生み出すには、このネットワーク型組織が適しているといわれている。一方で、比較的規模の小さいスタートアップ企業などではネットワーク型組織の活用が進んでいるものの、歴史のある大企業では、組織変革へのハードルが高いのが実情だろう。本書では、こうした課題に応えるべく、ネットワーク型組織のつくり方のすべてを解説する一冊である。

■ 本書は全4章で構成されており、第1章ではネットワーク型組織が必要とされる背景と、それを体現する企業の特徴を記している。ここでは、成功企業の事例として、サイバーエージェントやサイボウズといった大企業の事例が紹介されている。続く第2章では、ネットワーク型組織が機能するためのフレームワークに加え、組織設計のアプローチを説明する。具体的なアプローチは、①目的の明確化、②組織構造設計、③権限の設計、④責任・評価設計、⑤情報基盤構築――の五つの段階ごとに作業手順まで詳細に解説されており、約100ページを割く本書の肝となるパートとなっている。

■ 第3章では人材要件を取り上げ、ネットワーク型組織における人材の特性やチーム運営、人材マネジメントなどを深堀りする。そして、最終第4章では、歴史ある企業や大企業で最大のボトルネックになる「既存組織との両立」のための要諦が語られている。ネットワーク型組織の在り方・つくり方のすべてを網羅した決定版となる一冊であり、これからの時代を生き抜く組織を構築するために、ぜひ多くの方に手に取っていただきたい。

変化に強く、イノベーションを生み出す ネットワーク型組織のつくり方

内容紹介
なぜ、今、ネットワーク型組織が注目されるのか?
メリット、デメリットは何か?

ネットワーク型組織の本質を解き明かし、成功要因を事例から抽出。
自社に導入、運用するための手順と留意点を徹底解説。
さらに、人材の要件から人事制度の設計、コンフリクトの解消まで、ネットワーク型組織に関するすべてを一冊に網羅した決定版!

これまでの多くの組織は、生産性やガバナンスを重視した階層型組織と呼ばれるものであった。階層型は、社内における階層に応じて役割分担を定め、上位者が下位者に対して指揮命令を行うことで目的を達成する組織で、モノづくり等の効率的な業務運営に適している。
しかし、社会環境、デジタル化、情報流通の変化、人の考え方・価値観の変化など、企業・組織を取り巻く状況は20年前とは全く異なる。階層型組織とネットワーク型組織の違いは何か。大きく3つの要素において変化している。
(1)“業務中心”から“人間中心”の設計へ (2)“効率性”から“創造性”の重視へ (3)“画一性・標準化”から“差別性・個別化”へ
本書ではこのネットワーク型組織について解説していく。