2023年03月10日掲載

BOOK REVIEW - 『副業・兼業の実務上の問題点と対応』

堀田陽平、亀田康次、宇賀神崇 著
A5判/304ページ/3500円+税/商事法務 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 政府の副業・兼業推進施策を受け、企業においても副業・兼業を積極的に進める動きが活発になっている。もはや副業・兼業は“普通”のこととなったが、正確な法的理解を欠いたまま推進されている側面もあることは否めない。本書は、労働分野に精通する第一線の弁護士3名が、行政解釈や学説、裁判例を分析して理論的な検討を行い、副業・兼業に関する実務上の問題点と具体的な対応を解説する内容となっている。

■ 第1章は「総論」として、これまでの政府による政策の展開を整理し、副業・兼業の現状を明らかにしている。続く第2章では、使用者による副業・兼業の禁止・制限の可否とその限界について、企業が取るべき対応を示している。以降は個別のテーマに沿って内容が展開し、「労働時間法制の適用」(第3章)、「安全配慮義務」(第4章)、「業務命令権や人事権の行使」(第5章)、そして「副業・兼業で得たノウハウの活用と情報管理」(第6章)について、それぞれにおける問題の所在と行政解釈、実務上の対応を解説している。第7章で労働保険と社会保険の基本的な考え方に触れた後、最終章となる第8章では、副業・兼業を推進する観点から、今後、政策的に取られるべき対応について提言している。

■ 本書は、豊富な裁判例や学説を掲載しており、具体的な判決から法的論点への理解を深めることができる構成となっている。とはいえ、学術的内容に偏ることはなく、テーマごとに記載された「実務上の対応」のコーナーでは、企業実務の現場で使用者が取るべき対応を具体的に明示している。副業・兼業への対応が求められる人事パーソンには心強い一冊となるだろう。

副業・兼業の実務上の問題点と対応

内容紹介
副業・兼業が「普通」の今に効く本!

副業・兼業ガイドラインの解説を中心に実務上の対応を実力派弁護士陣が解説。さらに踏み込んで問題解消に役立つ学説の状況や裁判例も詳細に紹介。副業・兼業をめぐる主要な法律問題について体系的な検討を行い、実務上の指針を示す、充実の1冊。