代表 寺澤康介
(調査・編集:主席研究員 松岡 仁)
ProFuture代表の寺澤です。
3月13日に就職情報会社の学情が発表した、人事担当者対象の「『入社式』に関する企業調査」結果によると、2023年4月入社の入社式について、「リアルで実施」と回答した企業が前年よりも14.0ポイント増の81.2%に上ったとのことです。「リアルで実施」する企業に入社式の規模を確認したところ、「規模を縮小」は8.2%にとどまり、「コロナ前と同じ規模」で実施する企業が91.8%と9割以上に上っています。着実にコロナ前の生活に戻りつつあることをうれしく思います。
2023年3月13日以降、新型コロナウイルス感染症対策としてのマスク着用は「個人の判断」と緩和されましたが、同調査では「リアルで実施」する企業に対して、「入社式でのマスクの着脱」についても聞いところ、「マスク着用を求める予定」が50.0%で最多となり、「個人の判断に委ねる予定」 13.1%にとどまり、「マスクなしを容認する予定」は4.1%だったとのこと。「新入社員に『個人判断』を委ねても判断しにくいと思うので、会社として指針を出す予定」という人事担当者のコメントにあるように、会社の対応としては妥当な結果だと思います。
大企業では内定充足率90%以上が7割
今回は、HR総研が人事採用担当者を対象に2023年3月6~21日に実施した「2024年新卒採用動向調査」(2023年卒採用の設問含む)の結果を速報として紹介します。
まずは、2024年卒採用の前に「2023年4月入社の内定充足率」を確認します。こちらの集計に当たっては、2023年卒採用を実施しなかった企業は除いています。入社式を数週間後に控えた3月時点での調査ですので、ほぼ最終的な数字に近いかと思われます。
全体では、「100%以上」が33%で最も多く、次いで「90~100%未満」21%が続きます[図表1]。両者を合計した「90%以上」(以下同じ)の割合は54%と半数を超えています。その一方で、「0%」9%、「30%未満」4%、「30~50%未満」6%を合計した採用計画数の「50%未満」(以下同じ)の企業がほぼ2割もあり、採用に非常に苦戦している様子がうかがえます。
[図表1]2023年4月入社の内定充足率
資料出所:HR総研「2024年新卒採用動向調査」(2023年3月、以下図表も同じ)
従業員規模別に見ると、1001名以上の大企業では「90%以上」は69%と7割近くにもなるのに対して、301~1000名以下の中堅企業では56%、300名以下の中小企業では43%と、規模が小さくなるにつれ、その割合は低くなります。
一方、「50%未満」の割合は、大企業6%、中堅企業8%に対して、中小企業では32%と3割を超えています。中でも目を引くのは、大企業や中堅企業では1社もなかった「0%」の企業が2割も占めていることです。改めて、中小企業が置かれている厳しい採用環境をうかがい知ることができます。
では、この内定充足率は前年と比べてどうだったのでしょうか。「2023年4月入社の内定充足率の前年比較」の結果を見ると、全体では「ほぼ変化なし」が56%と半数以上を占めます[図表2]。「大きく向上した」と「やや向上した」を合わせた「向上派」(以下同じ)19%に対して、「大きく低下した」と「やや低下した」を合わせた「低下派」(以下同じ)25%と、「低下派」が上回る結果になっています。
コロナ禍からの経済回復基調の中で大卒求人倍率(リクルートワークス研究所)は22年卒の1.50倍から23年卒は1.58倍に上昇し、学生の売り手市場の色合いが強くなっていることをうかがわせます。
[図表2]2023年4月入社の内定充足率の前年比較
従業員規模別に見ると、大企業では73%と4分の3近い企業が「ほぼ変化なし」とし、「低下派」は16%にとどまります。中小企業は、全体と同じ56%が「ほぼ変化なし」とし、「低下派」は27%と大企業よりも10ポイント以上多くなっています。一方、中堅企業では、「ほぼ変化なし」とする企業は39%と4割に満たず、「向上派」が28%とどの規模よりも多くなっている半面、「低下派」はさらに多い33%と3割を超えます。中堅企業は、企業によって状況が大きく異なることが分かります。
さらなる売り手市場は必至
さて、ここからは2024年卒採用の状況を見ていきます。まずは、「2024年卒の採用計画数の前年比較」です。
全体では、「前年並み」が40%で最も多く、「未定」と「採用なし」を合わせると33%あるものの、「増やす」24%に対して「減らす」はわずか3%にとどまり、「増やす」とする企業が20ポイント以上も上回ります[図表3]。
[図表3]2024年卒の採用計画数の前年比較
従業員規模別で見ても、「減らす」はいずれの規模においても2~6%にとどまり、「増やす」とする企業は中小企業でこそ18%と2割に満たないものの、大企業35%、中堅企業でも30%と3割以上となっており、圧倒的に「増やす」企業のほうが多くなっています。
前年同時期に実施した「2023年新卒採用動向調査」の結果を見ると、「増やす」と回答した割合は、中堅企業の27%と中小企業の13%は今回調査と数ポイントの違いでしかありませんが、大企業が14%にとどまっていたことを考えると、2024年卒採用で「増やす」と回答した割合は実に2.5倍にも達します。
2023年卒採用の大卒求人倍率は、前記のとおり前年比で0.08ポイントアップでしたが、2024年卒採用の求人倍率は前回以上のアップ率になることは間違いないでしょう。2023年卒採用で苦戦を強いられた企業にとっては、さらに厳しい年になりそうです。
採用計画数をアップする企業が多くなっていますが、新卒採用活動に投じる採用予算に変化はあるのでしょうか。「2024年新卒採用活動予算の前年比較」を聞いてみたところ、全体では「ほぼ変わらない」が70%で最多となっており、「かなり増える見込み(20%以上)」と「やや増える見込み(20%未満)」を合わせた「予算増額派」(以下同じ)は26%、「かなり減る見込み(20%以上)」と「やや減る見込み(20%未満)」を合わせた「予算減額派」(以下同じ)は4%にとどまります[図表4]。
[図表4]2024年新卒採用活動予算の前年比較
従業員規模別で見ると、「予算増額派」は大企業で36%、中堅企業で20%、中小企業で24%となっており、一方の「予算減額派」は中堅企業では11%あるものの、中小企業ではわずか1%、大企業に至っては1社もなしという結果になりました。採用計画数がアップした企業の多くは採用予算も増額されているものと推測されます。
内定辞退対策は内定前が大事
次に、「2024年卒採用における課題」について聞いた結果が[図表5]です。全体の数値が10%以上の項目について、その降順で並べています。全体では「ターゲット層の応募者を集めたい」47%、「内定辞退者を減らしたい」33%、「応募者の数を集めたい」30%、「大学との関係を強化したい」26%などが多くなっています。
[図表5]2024年卒採用における課題(複数回答)
[注]「全体」で10%以上の項目のみを掲載。
従業員規模別に特徴を挙げてみると、大企業では「内定辞退者を減らしたい」(44%)が「ターゲット層の応募者を集めたい」(40%)を押さえてトップとなっているほか、3位には「応募者の数を集めたい」と並んで「採用方法を見直したい」(ともに27%)が入っています。「採用方法を見直したい」は、中堅企業で15%、中小企業9%であることと比べると、その多さが分かります。従来からのメンバーシップ型採用一辺倒に代えてジョブ型採用(職種別採用)の導入や、逆求人サイトやリファラル採用などのダイレクトソーシングの導入、キャリア採用で行われている個別処遇の導入、通年採用の導入など、見直すべき観点は少なくありません。
中堅企業では、「採用ホームページをもっとよくしたい」26%(大企業7%、中小企業15%)と「セミナーの内容を魅力的にしたい」23%(大企業11%、中小企業8%)の割合が高いことが目に留まります。内定者が大企業と競合することが少なくない中堅企業にとって、大企業と伍することができるように、ホームページやセミナーをブラッシュアップして、しっかりと情報を届けることで応募者の志望度を高めたいということなのかもしれません。
中小企業では、「内定辞退者を減らしたい」(24%)が他の規模(大企業44%、中堅企業38%)よりも低く、それよりも「大学との関係を強化したい」(28%)のほうが上回っています。「内定辞退」を心配する以前に、まずは応募者を集めることが優先だということなのでしょう。
今度は「2024年新卒採用でより重要になると思われる施策」を見てみましょう。こちらも全体の数値が10%以上の項目について、その降順で並べています。全体では、「自社セミナー・説明会」37%、「自社採用ホームページ」36%が多くなっています[図表6]。
[図表6]2024年新卒採用でより重要になると思われる施策(複数回答)
[注]「全体」で10%以上の項目のみを掲載。
これらは前項の中堅企業でポイントが高かった2項目であり、従業員規模別で見ると、やはり中堅企業ではそれぞれ47%、45%と非常に高い割合となっています。そのほか中堅企業では、「キャリアセンターとの関係強化」「学内企業セミナー(3月以降)」「理系研究室訪問」といった大学関連の施策がいずれも26%と、他の規模よりも割合が高くなっています。キャンパスに学生が戻ってきた大学との関係を強化することに活路を見いだそうとする姿が垣間見えます。
もう一つ注目したいのは、全体で3位に入った「対面型インターンシップ」(25%)です。大企業では、「自社セミナー・説明会」(33%)と並んでトップになっています。インターンシップのもう一つの形式である「オンライン型インターンシップ」は、全体で12%、大企業でも13%にとどまります。開催のしやすさは「オンライン型」ですが、学生へのグリップ力を考えると、面接と同様にインターンシップも「対面型」のほうが望ましいと考えられていると推測されます。
前項で多くの企業が「内定辞退者を減らしたい」を課題として挙げましたが、こちらの「内定者フォロー」は上位ではあるものの全体では21%で、「自社セミナー・説明会」等とはポイントの開きがあります。内定辞退を「内定者フォロー」で低減させようとするのではなく、採用広報や選考段階までのところでより志望度を高め、グリップを効かせることを狙っているものと思われます。それが、「自社セミナー・説明会」であり、「自社採用ホームページ」であり、「対面型」なのでしょう。
インターンシップ応募者集めで苦戦する企業
ここからはインターンシップについて見ていきます。まずは、「2024年卒採用のインターンシップの実施状況」です。全体では、「実施した」(「前年は実施していないが、今年は実施した」と「前年同様に実施した」の合計、以下同じ)60%に対して、「実施していない」(「前年は実施したが、今年は実施していない」と「前年同様に実施していな」の合計、以下同じ)は40%でした[図表7]。
[図表7]2024年卒採用のインターンシップの実施状況
ただ、従業員規模により実施割合は大きく異なり、大企業では「実施した」が82%と8割を超えるのに対して、中堅企業では64%、中小企業では46%と半数に届いていません。ただし、前年同時期調査の2023年卒採用向けインターンシップの実施割合を見ると、大企業71%、中堅企業60%、中小企業38%となっており、大企業だけでなく中小企業での実施割合が大きく伸びていることが分かります。
前述のようにインターンシップ実施企業が増える中、各企業のインターンシップへの参加者数はどうなっているのでしょうか。「インターンシップ参加者数の前年比較」を聞いてみたところ、全体では「前年より少ない」(「前年より少ない(参加者が5割未満)」と「前年より少ない(参加者が5割以上)」の合計、以下同じ)が22%であるのに対して、「前年より多い」(「前年より多い(参加者が2倍未満)」と「前年より多い(参加者が2倍以上)」の合計、以下同じ)は14%と、「前年より少ない」企業のほうが多くなっています[図表8]。
[図表8]インターンシップ参加者数の前年比較
この傾向は大企業においても同様で、「前年より多い」の16%に対して「前年より少ない」は24%と、1.5倍にも及んでいます。中堅企業も大企業同様、「前年より少ない」のほうが多くなっていますが、中小企業だけは「前年より少ない」と「前年より多い」がともに15%で拮抗する結果となっています。
インターンシップの前倒しと対面型の増加
「インターンシップの開催時期」について、2023年卒向けインターンシップと比較したのが[図表9]です。2024年卒採用では、冬期休暇中であるにもかかわらず「3年生1月(2023年1月)」(23年卒採用40%→24年卒採用30%)や「3年生2月(2023年2月)」(同32%→同22%)はいずれも10ポイントも減少し、同様に「3年生9月(2022年9月)」(同40%→同30%)も10ポイント減少しています。
[図表9]インターンシップ開催時期(複数回答)
一方、夏期休暇に当たる「3年生8月(2022年8月)」は23年卒採用の42%から57%へと大きく15ポイントも伸びたのをはじめ、「3年生6月以前(2022年6月以前)」は同16%→同22%、「3年生11月(2022年11月)」も同23%→同30%と伸びています。かつては、3月1日からのプレエントリー受付開始を前に、プレエントリー促進の一環として「3年生1月」や「3年生2月」に駆け込み的にインターンシップを開催する例が数多く見られましたが、今や全く様相が異なっています。もはやインターンシップはプレエントリー促進ではなく、早期選考への母集団形成の意味合いが強くなっており、「3年生1月」や「3年生2月」ではもう遅いということなのでしょう。
以前は、夏期休暇と冬期休暇の間の授業期間に当たる「3年10月」~「3年12月」にインターンシップを開催する割合は少なかったものですが、今ではオンラインでの開催も当たり前になったことから、学業への影響は少ないとして、どの月も30%程度の企業が開催しています。それどころか、「3年生12月」はかつての「3年生1月」や「3年生2月」に代わって、「3年生8月」に次ぐ二つ目のピークにまでなっているなど、明らかにインターンシップ開催時期の前倒し傾向が見られます。
前述の「2024年新卒採用でより重要になると思われる施策」で全体の3位となった「対面型インターンシップ」について、その実施割合を前年比較で答えてもらったのが[図表10]です。
[図表10]対面型インターンシップ実施割合の前年比較
全体では、「変化なし」が66%と3分の2を占めますが、「減少した」(「大きく減少した」と「やや減少した」の合計、以下同じ)は9%と1割にも満たないのに対して、「増加した」(「大きく増加した」と「やや増加した」の合計、以下同じ)は25%と大きく上回ります。
従業員規模別で見ると、大企業では「増加した」が30%にも達し、中小企業でも18%と2割近くになります。中小企業の数値が大企業よりも低いのは、もともと「対面型」で実施していた割合が高かったためと推測されます。「対面型インターンシップ」を「2024年新卒採用でより重要になると思われる施策」として、自社にも当てはめた企業が少なくないことが分かります。
学内企業セミナー参加数は拡大傾向
ここでは、「プレエントリー数の前年比較」の結果を紹介します。全体では、「前年同時期より少ない(3割以上少ない)」14%、「前年同時期より少ない(1~2割程度少ない)」24%で、合わせて38%と4割近い企業が「前年同時期よりも少ない」(以下同じ)と回答しています[図表11]。一方、「前年同時期より多い」はわずか9%です。
[図表11]プレエントリー数の前年比較
従業員規模別に見た場合、大企業ほど「前年同時期より多い」とする企業が多いわけではありません。大企業は全体と同じ9%にとどまり、これより多かったのは意外にも中小企業の11%です。ただ、「前年同時期よりも少ない」と回答した企業は、大企業が24%で最も少なく、中小企業40%、中堅企業に至っては48%と半数近くにも上ります。さらに「前年同時期より少ない(3割以上少ない)」と「前年同時期より少ない(1~2割程度少ない)」に分けて比較すると、規模による差異はもっと際立ってきます。大企業で「前年同時期より少ない(3割以上少ない)」とした企業はわずか4%しかなく、一方の中堅・中小企業では17~18%と2割近くにもなっています。
ただ、多くの企業で、昨年から実施してきたインターンシップへの応募はプレエントリーではなく、あくまでも自社の採用ホームページや3月1日以降に就職ナビからあったエントリーのみをプレエントリーとしてカウントしているものと推測されます。その結果、インターンシップ応募者に再度のプレエントリーを求めない限り、「前年同時期よりも少ない」との回答割合が多くなっていることにもうなずけます。
次に、前述の「2024年新卒採用でより重要になると思われる施策」において、特に中堅企業で割合が高い「学内企業セミナー」について、参加大学数を前年比較してもらったところ、全体では「減らす」はわずか2%にとどまり、「増やす」は24%と4社に1社にまで及ぶことが分かりました[図表12]。
[図表12]学内企業セミナー参加数の前年比較
企業規模が大きくなるほど「増やす」とした割合は高くなり、中小企業18%に対して、中堅企業26%、大企業28%という結果になりました。コロナ禍でキャンパスが閉鎖、あるいはそれに近い状態のときには、「学内企業セミナー」も限られた企業にのみオンライン開催が認められ、そうでない企業は「学内企業セミナー」参加の道が閉ざされてしまいました。キャリアセンター担当者も在宅勤務となり、企業側としてはキャリアセンターとのコミュニケーションを取りたくても思うように取れない日々が続きましたが、ようやくコロナ禍以前に近い状態にまでキャリアセンターの活動状況も回復し、再び「大学との関係構築」が企業の大きなテーマになってきているようです。
大企業のセミナー・説明会は1~3月がピーク
次は、各企業が独自で開催する「個別企業セミナー・会社説明会の開催時期」です。3月1日の採用広報解禁日はもはや有名無実化しているとはいえ、セミナー・会社説明会の開催月としては、「2023年3月」がすべての従業員規模の企業で最多となっており、大企業、中堅企業ではそれぞれ53%、57%と半数以上の企業が開催していることが分かります[図表13]。
[図表13]個別企業セミナー・会社説明会の開催時期(複数回答)
大企業では、「2023年3月」に次いで「2023年2月」44%、「2023年1月」42%と続き、「2023年1~3月」が最も大きな山となり、「2023年4月」になると「2023年3月」と比べて一気に17ポイントも少ない36%となり、「2023年6月」には22%にまで低下します。それと比べると、「2022年10月以前」で早くも27%を記録し、「2022年11月」と「2022年12月」はともに31%と、「2023年5月」の33%と遜色ないほどの割合になっていることから、大企業がいかに早期から採用活動を展開しているかをうかがうことができます。
中堅企業は大企業と比較すると早期の割合はやや低めで、「2023年4月」と「2023年5月」がともに51%、「2023年6月」も45%となるなど、かなりの割合の企業が「2023年3~6月」にセミナー・会社説明会を開催するとしており、3月以降に本格化する様子が見てとれます。
一方、中小企業はまた異なる傾向を見せています。「2023年3月」は最多とはいえ、35%と大企業や中堅企業と比較するとその割合はそれほど高くなく、「2023年4月」が32%でそれに続きますが、「個別企業セミナーは開催しない」企業が33%にも及ぶのです。3社に1社は会社説明会を開催することなく、個別での面談を挟むのか、あるいは即選考から入っていくようです。
大企業の8割が3月までに面接選考を開始
インターンシップ参加者を対象にした早期選考が話題になっていますが、実際の面接選考はいつから始めている企業が多いのでしょうか。「面接選考の開始時期」を聞いたところ、全体では「2023年3月」が21%で最多、次いで「2023年4月」が16%で続きます[図表14]。次に多いのは「2023年7月以降」(14%)ですが、こちらは後述する中小企業の数値に引っ張られた結果です。面接選考開始のピークである「2023年3月」以前に面接選考を開始した企業は61%と6割を超え、「2023年1月」以前に開始した企業が既に31%と3割を超えています。
[図表14]面接選考の開始時期
従業員規模別に見ると、規模による違いがはっきりと表れます。大企業では、最多は全体と同じく「2023年3月」(29%)ですが、「2022年10月以前」とする企業が13%もあるのをはじめ、「2023年1月」以前に面接を開始した企業が44%に達し、「2023年3月」までを合計すると80%にも達します。いかに早期化が進行しているかが分かります。
中堅企業を見ると、最多はやはり「2023年3月」で28%と大企業と同レベルです。ただし、「2022年10月以前」などの超早期は大企業とは程遠い割合となっており、「2023年1月」以前に面接を開始した企業は2割以下(19%)です。「2023年3月」までを合計すると全体とほぼ同じ60%です。大企業とのもう一つの違いは、「2023年4月」開始企業の多さです。大企業はピークの「2023年3月」と比較して20ポイントも少ない9%に落ち込むのに対して、中堅企業では「2023年3月」と比較して7ポイント差しかない21%もあります。「2023年3月」と「2023年4月」を合わせると5割近くにもなり、この2カ月間をピークと呼ぶほうがいいのかもしれません。
一方、中小企業はというと、最多は「2023年7月以降」の22%で、この数値が全体の数値を押し上げる形となっています。次いで多いのは「2023年3月」(13%)ではなく、「2023年4月」(16%)です。「2023年1月」以前に面接を開始した企業は中堅企業よりも多い31%となりますが、「2023年3月」までを合計しても52%と何とか5割を超えたところです。逆にいえば、「2023年4月」以降に面接を開始する企業が半数近くあるということです。大企業や中堅企業の選考が落ち着いたところで、面接選考を本格化しようという狙いなのでしょう。
大企業の6割が3月までに内定出しを開始
最後に、気になる「内定出し開始時期」を確認します。全体では、「2023年7月以降」が23%で最も多くなりますが、こちらも前項と同じく中小企業の数値に引っ張られた結果となっています[図表15]。次いで、「2023年3月」18%、「2023年5月」14%、「2023年4月」13%と、「2023年3月」から「2023年5月」に集中し、この3カ月間に内定を出し始める企業が44%に達します。「2022年10月以前」6%をはじめ、超早期から内定を出し始めている会社も少なくなく、採用広報解禁の3月を待たずに「2023年2月」までに内定出しを開始した企業は26%と4分の1以上にもなります。
[図表15]内定出し開始時期
従業員規模別に見ると、前項の面接選考の開始時期に合わせるような結果となっています。大企業で最も多いのは「2023年3月」18%、次いで「2023年5月」16%と続きますが、「2023年1月」と「2023年2月」がどちらも13%と多く、「2023年1月」から「2023年3月」の3カ月間に内定を出し始めた企業が44%に達します。また、「2023年2月」までに内定出しを開始した企業も42%と4割を超え、「2023年3月」を合わせれば6割(60%)の企業が既に内定出しを開始しています。かつて、経団連が「採用選考に関する指針」を主導していた時代には、形式的とはいえ採用選考解禁の6月1日に最終面接を実施して即日内定出しをしていたものですが、もはや隔世の感があります。
中堅企業の最多は「2023年3月」と「2023年5月」がともに21%で並び、「2023年4月」(13%)、「2023年2月」と「2023年6月」(ともに11%)が続きます。「2023年2月」から「2023年6月」に内定出しを開始する企業が77%と8割近くにも及びます。超早期に面接を開始した企業が少なかったため、「2023年2月」までに内定を出し始めた企業も全体と同じ26%と、大企業よりは20ポイント近く低くなっています。
中小企業では、「2023年7月以降」が38%と4割近くを占めて最多となっています。次いで、「2023年4月」16%、「2023年3月」15%が続きます。「2023年1月」以前に面接を開始した企業は中堅企業よりも多かったものの、「2023年2月」までに内定を出し始めた企業は18%と、逆に中堅企業よりも低い割合となっています。面接は始めたものの、早期の内定出しは控えている様子がうかがえます。
早く内定を出した場合、後から内定を出した大企業・中堅企業にひっくり返されるというリスクはありながらも、面接選考期間があまりにも長期化するのも学生の志望度・モチベーションの低下につながるリスクがあり、難しいところですね。
寺澤 康介 てらざわ こうすけ ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長 86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。 著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。 https://www.hrpro.co.jp/ |