青山学院大学経営学部・大学院経営学部経営学科 教授
A5判/336ページ/3500円+税/創成社
BOOK REVIEW ―人事パーソンへオススメの新刊
■ 企業間競争の激化に伴い、「人」に重点を置いた年功序列や職能資格制度等の施策から、「職務」に重点を置いたジョブ型雇用等の施策への移行が注目されている。この状況について、従業員の「専門性」を重視する方向に転換しつつあるとも言い換えられるだろう。本書は、人的資源管理やキャリアデザインに精通する筆者が、働く人の専門性に対する意識の分析を通し、多様な分野における専門性の共通部分を明確化した研究書である。
■ 一般的な定義だと、「専門」とは限られた分野に集中して従事する行動および状態とその対象を指す。それに対して「専門性」は、仕事を遂行する能力という概念でもある一方、その高低を測定できる(量的に把握し比較できる)という点で「専門」との違いがある。本書の第Ⅰ部では、専門性や専門性意識(自身の専門性に対する意識)の定義について先行研究等からまとめた上で、これらに影響する要因等を紹介する。第Ⅱ部では専門性意識に関する実証分析を扱っており、質問票調査による分析を行うための尺度の作成や、専門性意識とキャリア上の戦略や行動との関係、職務と専門性意識の関係を検討・分析している。
■ これらを踏まえた第Ⅲ部では、従業員の専門性を向上させるための専門性マネジメントの捉え方を見た上で、保育士と看護師における専門性意識および専門性マネジメントの在り方を検討している。終章では、研究から得られた知見を基に、今後の能力開発に求められる施策や方向性を提言しており、企業における能力開発担当にとって有意な内容となっている。現在、リスキリングや学び直しに注目が集まっているが、それらで獲得すべきものは単なるスキルの寄せ集めではなく、専門知識を含む専門性だと筆者は指摘する。自社および自身の専門性について考えるきっかけとして、本書を手に取っていただきたい。
働く人の専門性と専門性意識 ─組織の専門性マネジメントの観点から─ 内容紹介 企業間競争が激化している現代、多くの企業は、社員の知識や専門性を重視する方向に転換しつつあります。そうした変化により、様々な業種、職種や部署で専門性が求められる仕事が増えています。また多くの調査から、働く人が、専門性向上を志向するようになってきました。 本書は、類書のような分野や職業・職種ごとの専門性を考えるだけでなく、働く人の専門性に対する意識の分析を通し、多様な分野における専門性の共通部分の明確化と橋渡しを志向しました。 |