慶應義塾大学大学院商学研究科教授
四六判/316ページ/2000円+税/ 日本経済新聞出版
BOOK REVIEW ―人事パーソンへオススメの新刊
■ 企業を取り巻く環境が大きく変化する中、雇用・人事システムを変革していく必要性は高まっており、「ジョブ型雇用」への転換や「人的資本経営」「テレワーク」「ウェルビーイング」などの、近年注目を集める課題に取り組む企業は少なくない。しかし、その意義や取り組み方について、必ずしも十分な理解が行き渡っているとはいえないと著者は指摘する。こうした状況を受け、働き方の根本に関わる問題への誤解や先入観を正し、変革に取り組むに当たって必要な土台(学問的なベース・フレームワーク・考え方)を解説することが、本書の狙いとなっている。
■ 本書は大きく分けて「理論・教科書編」と「実践・戦略編」のパートで構成されている。まず、前半の理論・教科書編では、「ジョブ型雇用」にまつわる誤解を解きほぐすとともに、内外の雇用・人事システムについて、人的資源管理を経済学の視点から分析する「人事の経済学」と、「ジョブ型・メンバーシップ型」というフレームワークに基づいて解説する。「実践・戦略編」では、企業が環境変化に適応するためにはどのような変革が必要なのか、「ジョブ型雇用」「テレワーク」「『ジリツ』(自立・自律)人材の採用・育成・評価」「組織内人材の多様化とパーパス経営の推進」「従業員のウェルビーイングの向上」という方向性を示し、移行に向けた戦略を描いていく。
■ 著者は、企業を取り巻く環境変化への対応として、「メンバーシップ型無限定正社員」システムから、職務・勤務地・労働時間のいずれかが限定された広義のジョブ型雇用に移行することが必要であると主張する。なぜ今ジョブ型を志向する必要があるのか、雇用・人事システムへの理解を深めた上で論じた本書は、人事担当者として必読の一冊である。
内容紹介 ジョブ型雇用、人的資本経営、テレワークなど日本企業の人事担当者は様々な課題に取り組んでいるが、その意義や取り組み方について必ずしも十分な理解が行き渡っているとはいえない。 それは、議論を行うための共通の土台であるフレームワークに大きな隔たりがあるからだ。人事の経済学は、雇用・人事システムがどのように機能しているのか、その基本的なメカニズム、その背後にある理論を知るために企業の人事担当者が理解しておくべきフレームワークだ。 本書は、人事の経済学と雇用システムを解説し、雇用・人事システム変革の際にベースとして考慮すべき戦略を明らかにする実務家必読の書。 |