はるゆき 1983年生まれ。伝え方のコツを発信。現役の営業部長だからこそ語れる、現場目線のリアリティある内容が好評を博している。著書に『伝え方のすべて』(KADOKAWA、2022年) |
「そんなつもりで言ったわけではないのに……」
伝え方を間違えて、同僚との関係がギクシャクしてしまった。あなたも、一度はそんな経験があるのではないか。もちろん、私にも経験がある。
「伝え方」は人間関係において重要だが、学校などの場で教わる機会がない。コミュニケーションの要であるにもかかわらず、実戦で鍛えていかなければならない。
伝え方を間違えて、社会人としての信頼を失ったり、会社に大きな損害を与えることもあり得る。そんなことにならぬよう、本記事でご紹介する「伝え方」のコツ5選を活用してほしい。
<仕事を円滑にする「伝え方」のコツ5選>
① 即否定しない
② PREP法で話す
③ 数字で語る
④ クッション言葉を使う
⑤ 相づちを打つ
① 即否定しない
良好な人間関係を保つには、正しいことをそのまま伝えればいいわけではない。相手からの投げかけに返答する際には「伝え方」をわきまえなければ、関係に大きな亀裂が入る。
例えば、上司が新しいビジネスの担当に、あなたを指名したとする。
上司 :「新しいビジネスを始めようと思う。ぜひ、君に担当してほしい」
あなた:「忙しいので、無理です」
上司 :「は…?」
これでは上司との関係が悪化する。即否定せず、まずは相手を受け入れる姿勢を取ってほしい。
あなた:「はい、分かりました。ただ、今ちょっと仕事量が多めなので、優先順位をご相談させてください」
上司 :「分かった。それなら、一緒に考えよう」
何かを依頼されたとき、一言目に「NO」で返すのはやめよう。まずは「はい」と、相手の言葉を受け入れる。その次に現状を伝え、慎重な意見や見直しを求めよう。
② PREP法で話す
物事を報告するときは、結論から話そう。報告を受ける側にとって、相手が何を言いたいのか最後まで聞かないと分からないのは、大きなストレスだ。
おすすめは、PREP(プレップ)法という構成。
Point(結論)→Reason(理由)→Example(具体例)→Point(結論)の順番で話すのだ。
※頭文字をとって、PREP法
部下が上司へ報告する際、PREP法を用いず、結論後回しで報告するとこうなる。
あなた:「さきほどA社からお電話をいただきました。先方は怒っていらっしゃるようでした。・・・(中略)・・・・A社のクレーム対応を優先させたいです。よって、資料作りの期日を、7月1日に変更していただけますか(結論)」
結論を後回しにすると、説明が言い訳に聞こえる。
しかし、PREP法を用いると、こうなる。
あなた:「資料作りの期日を、7月1日に変更していただけますか(結論)。他に優先すべき事案が発生したためです(理由)。A社からクレームが発生しており、対応を急がなければいけません(具体例)。よって、資料作りの期日を、7月1日に変更していただけますか(結論)」
PREP法を活用し、結論・理由・具体例を順序立てて説明しよう。極論、ビジネスシーンでは9割方PREP法で話をすれば、間違いない。
③ 数字で語る
商品のプレゼンテーションなど、アピールする必要のある場面では、「数字」で語ろう。数字以外の言葉をいくら並べても、相手にされないと思ってほしい。
商談で、「御社の強みは何ですか?」と聞かれたとする。数字を用いずアピールすると、こうなる。
あなた:「業界で長い経験があるリーディングカンパニーです。お客さまから喜びの声も多数いただいています。ご注文から短納期で納品いたします」
耳当たりの良い言葉が並んでいるが、具体性に欠ける。どこの会社でも言えるような内容だと言わざるを得ない。
ここに数字を加えると、訴求力が高まる。
あなた:「業界で30年の実績があります。累計契約社数は1000社で、業界1位です。お客さま満足度アンケートでは9割以上の方にご満足いただいております。また、ご注文から1週間以内に納品いたします」
数字があることで、どんな会社か、ぐっとイメージがしやすくなる。
④ クッション言葉を使う
ビジネスでは、言いにくいことを伝えなければならない場面に出くわすことがある。納期を早めてほしい、頼んでいる仕事がキャンセルになった…。重要だが、相手の気持ちを考えると言いにくい、しかし、伝えないわけにはいかない。
そんなとき便利なのが「クッション言葉」。本題に入る前に使う言葉で、相手のショックを和らげることができる。
あなた:「こちらの都合になり恐縮ですが、打ち合わせ日程を変更していただけますか?」
「こちらの都合になり恐縮ですが」という前置きが、クッション言葉だ。単刀直入に伝えられるよりも、気持ちに余裕をもって話を聞くことができる。
伝え方がまずいために周囲とのトラブルが絶えない人は、クッション言葉を使えていないケースが多い。特に今は、ハラスメントに敏感な時代。クッション言葉を使って相手の気持ちをなだめ、無用なトラブルを防ぐことが大切だ。
シチュエーション別に使いやすいクッション言葉をご紹介する。
⑤ 相づちを打つ
コミュニケーションを円滑にするために、話し上手になる必要はない。聞き上手のほうがずっと、相手と良好な関係を築くことができる。
聞き上手になるために欠かせないのが「相づち」だ。相づちは会話のリズムをつくる。相づちがなければ、話し手は話しにくく、「会話が盛り上がっていない」と感じて、途中で話を止めてしまうこともある。
仕事は、話しやすい人に集まる。取引先にせよ、上司にせよ、テンポよく楽しく話せる人のところに、よい仕事をもっていきたいと思うのが人情である。相づち一つで、良い仕事がまわってくるチャンスが広がる。
相づちにも、バリエーションが必要だ。次に紹介する相づち21選を活用してほしい。
<相づち21選>
● 褒め要素を入れるとき
- 面白いですね
- すごいですね
- 素敵ですね
- 素晴らしいです
- それは最高ですね
- 勉強になります
- ぜひまた教えてほしいです
● 褒められたとき
- 励みになります
- とんでもないことです
● 驚きを伝えたいとき
- まさか
- そうなのですね
- そんなにですか
- 信じられないです
- そんなことがあるのですね
- それは知りませんでした
● 相手に同意するとき
- おっしゃるとおりです
- ごもっともです
- 確かにそうですね
- 私もそう思います
- よく分かります
- 興味深いですね
本記事では、仕事を円滑にする「伝え方」のコツ5選をご紹介した。一つひとつはすぐに使える簡単なテクニックではあるものの、すべてを実践できている人は意外と多くない。うまく使いこなせられれば、上司や同僚、社外の人との関係を良好にしたり、無用なトラブルを防いだりすることもできる。ぜひ、あなたのビジネスの役に立ててほしい。