正職員の定年を迎えて嘱託職員で再雇用された後、基本給などの賃金が大幅に減額されたのは不当な待遇格差だとして、名古屋自動車学校(名古屋市)に勤めていた男性2人が定年前との差額分の支給などを学校側に求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は20日、審理を名古屋高裁に差し戻した。減額の一部を違法とした一、二審判決を破棄した。
正職員と再雇用者の待遇差を巡っては、最高裁が賞与や各種手当などで既に判断を示してきたが、賃金のベースとなる基本給に関しては持ち越された形。差し戻し後の審理で改めて今回の減額の妥当性が判断される。
第1小法廷は労働契約法20条が禁じる「有期雇用による不合理な格差」に関し、基本給も該当する場合があり得ると言及。だが、今回のケースでは正職員と嘱託職員の労働条件の違いや基本給の性質、支給の目的などを高裁までの段階で十分に検討しておらず、不合理な格差に当たるかどうかをさらに審理を尽くすべきだと判断した。
一、二審判決によると、男性2人の基本給は正職員の退職時に月額約16万~18万円だったが、嘱託職員として再雇用後に半額以下の約7万~8万円に減額された。
2020年の一審名古屋地裁判決は再雇用後の基本給が「定年時の60%の水準を下回る部分」を不合理な待遇格差に当たると判断。職務内容に変更がないのに、若い正職員の支給水準も下回るのは労働者の生活保障の観点から看過しがたいと指摘し、学校側に約625万円の支払いを命じていた。22年の二審名古屋高裁判決も支持した。
(共同通信社)