2023年07月28日掲載

BOOK REVIEW - 『日本の人事労務研究』

梅崎 修、江夏幾多郎 編著 
A5判/280ページ/3600円+税/中央経済社 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 本書は、日本労務学会の設立50周年を記念するプロジェクトの一環として出版されたものである。日本におけるこれまでの人事労務領域の出来事や変化に対し、その時々の研究者がどう向き合ってきたのかを振り返る。労働経済学、経営学、社会学など、学会に所属するさまざまな分野の研究者らが人事労務研究を回顧(レビュー)し、将来の研究の在り方を展望する。

■ 第1部では、日本の人事労務研究の「これまで」を振り返り、近年の研究が直面している課題について問題提起し、「これから」を展望していく。第2部では、過去50年にわたり蓄積されてきた人事労務研究のレビューを行い、先人たちがどのような社会的現実と向き合い、どのような研究をしたのかについて整理する。ここで収録されているのは、経済学や社会学、心理学、経営学、労働・職場調査という観点から、それぞれの分野の研究者が議論を行い、大会シンポジウムで発表した内容を論文に取りまとめたものである。第3部では、日本労務学会の創設時にどのような研究者が集まってきたのか、そしてどのような議論がされてきたのか、50年の歴史を辿(たど)る。

■ 本書の冒頭でも指摘されているとおり、人事労務の現場では、しばしば同じ出来事が繰り返されてきた。例えば、「年功序列」を打破するために導入された職能資格制度は、今では年功序列を体現するものとなっている。出来事の繰り返し自体が問題だというわけではないが、同じような失敗を繰り返さないためにも、歴史を振り返ることは重要であろう。本書は研究の歴史を精緻に振り返ったものであるが、研究の対象となっているのは、人事労務の現場で起きている事象である。研究者だけでなく、人事労務の実務に携わる方にとっても何らかの示唆を得られるはずだ。

日本の人事労務研究

内容紹介
精緻な回顧にもとづく展望の書!

日本の研究者たちは、人事労務をどう考えてきたのか。
今後、なにを考えるべきなのか。

様々な学問領域で、あるいはそれらを跨ぐ形で展開されてきた日本の人事労務研究を振り返り、その成果を踏まえて将来の研究のあり方を展望。

日本労務学会50周年記念の集大成。