2023年07月28日掲載

BOOK REVIEW - 『Q&A 越境ワークの法務・労務・税務ガイドブック』

宇賀神 崇、フェアコンサルティンググループ 編 
A5判/376ページ/3600円+税/日本法令 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 本書の「越境ワーク」とは、一時帰国中の海外駐在員、配偶者の海外転勤に帯同する従業員など、会社の所在国とは別の国から、従業員がリモートで仕事を行うことを指す。“海外で働く”という観点では、「出向・転籍(海外転勤)」と「越境ワーク」は同じである一方で、“海外に所属する拠点があるかどうか”を見ると、両者は大きく異なり、実務上のポイントも変わる。そこで、弁護士・社会保険労務士・税理士・公認会計士等の専門家総勢40名が、「越境ワーク」における法務・労務・税務面のリスクをQ&A形式で解説している。

■ 本書は、「法務編」「労務編」「税務編」と大きく三つに分かれ、「法務編」は、越境ワークの定義と概要、ビザ、雇用契約書等の形態などを扱い、“ビザが問題となる場合”“雇用契約書上の就労場所の書き方”“準拠法の考え方と対応”等を説明する。「労務編」は、賃金、労働・社会保険、労働時間管理や安全配慮義務等の労務管理について、“賃金支払い時の留意点や支払い方法”“国別の送金可否や労働・社会保険の加入義務”などに触れる。「税務編」は、海外・日本で越境ワークする個人の課税をメインとして、“課税関係を考える上での基本的視点と国別の状況”“国別の二重課税の防止”などを解説する。

■ 日本はもちろん、アメリカ、中国本土、香港、台湾、タイ、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インド、ドイツ、メキシコの情報を国別に取り上げている点も本書の特徴である。上記のとおり、実務面で問題となるケースについて140問にわたるQ&Aを掲載するほか、“労働法規の適用における判断枠組み”“PE(支店、事業所、工場など事業を行う一定の場所等のこと)リスクの考え方”等、重要な理論を四つの「コラム」で記している。まだ各国の法制度が想定していない、新たな働き方である「越境ワーク」における論点や情報が網羅されている本書は、人事実務担当者の力強い味方となるだろう。

Q&A越境ワークの法務・労務・税務ガイドブック

内容紹介
越境ワークの無限の可能性とリスクについて、総勢40名にも及ぶ専門家が、これまでの実務経験と知見を融合し解説!

会社が所在する国ではない他国から、国境をまたいで従業員がリモートで仕事を行う「越境ワーク」。この働き方は、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、世界中で一気に広まった。

コロナ感染が落ち着き始めても、地域やオフィスに縛られない自由な働き方が求められ、仕事と家庭、プライべートの両立実現のために、この新しい働き方は積極的かつ恒常的に活用されつつある。

本書では、総勢40名にも及ぶ弁護士、税理士、公認会計士、社会保険労務士等の専門家が、これまでの実務経験と叡知を結集し、従来の国境をまたぐ働き方(海外赴任や出向、出張等)との違いやビザに関する問題、課税リスク、従業員の労務管理や社会保険関係の諸問題を、Q&A形式で解説している。