2023年08月10日掲載

BOOK REVIEW - 『変革せよ! 企業人事部 テレワークがもたらした働き方革命』

白木三秀 著
早稲田大学名誉教授、国士舘大学大学院客員教授、
早稲田大学トランスナショナルHRM研究所顧問 

新書判/218ページ/900円+税/早稲田大学出版部 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ グローバル化が進む中で日本企業は、高度経済成長期に築かれた「企業が従業員に対し長期の雇用と生活を保障する代わりに、従業員は企業内における配置・昇進や処遇に関する決定権限を会社に委ねる」という暗黙裡の関係の変容を迫られてきた。さらに、コロナ禍におけるテレワークの普及で日本国内のみならず海外で働くケース(「越境テレワーク」など)も増え、働き方は多様化している。これらの変化を受け、「テレワーク」を切り口に、人的資源管理研究の第一人者が、今後の人事部のあるべき姿を提言したものが本書である。

■ 第1章は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック後に起きたテレワークの進展および労働や人事業務への影響について、各種統計データ等を見ながら概観する。そして、本書の大部分を占める第2~3章は、メーカー4社のグローバル人事担当者のインタビュー内容、家族の海外赴任に帯同する配偶者4人の座談会の様子を紹介。それぞれが抱える諸課題や今後の展望についてリアルな声を掲載している。第4章では、パンデミックによるテレワークが労働と人事権に与えた影響について、労働側の弁護士の意見を基に、法的に解説する。

■ 第5章は、「これからの人材開発と人事ドメイン」と題し、前章までの内容を踏まえて企業と従業員の在り方とその中での人事部の役割について考察していく。考察に当たっては、人事部の持つ人的資源管理の機能を確認した上で、環境や価値観の変化により人事権が制約を受けていること、人的資本データの開示などの新たな対応、VUCA時代に求められる従業員および人事担当者のコンピテンシーなどに触れる。これまでの働き方の変化を振り返るとともに、グローバル対応を進める上でのヒントとして、本書を活用いただきたい。

変革せよ! 企業人事部 テレワークがもたらした働き方革命

内容紹介
日本企業の人事部の今後あるべき姿について、人的資源管理研究の第一人者が提言。HR担当者、必読の一冊。

コロナ禍におけるテレワークの普及は、人びとの働き方だけでなく、企業の人事(HR)部門にも大きな地殻変動を引き起こした。

すなわち、従業員の採用・育成・評価・処遇といった従来の業務を越えて、従業員一人一人が望む働き方をふまえ、その人にふさわしいキャリア形成を支援する役割がHR部門に求められるようになったのである。

こうした動きは以前からあったが、この流れを決定的にしたのがテレワークの普及であった。テレワークが人びとの働き方や人事部の現場に与えたインパクトを、データのほか、HR部門担当者や「駐妻」たちとの座談会を通じて明らかにする。また、テレワークに従事する従業員の労働時間規制の問題や、正社員の配置転換命令にみられる企業人事権が今後どのように変わるのか、という法的問題についても考察する。