奨学金返済、企業肩代わり 社員を支援、離職防止も 21年開始、千社近く利用

 社員が大学生時代に借りた日本学生支援機構の奨学金を企業が返済する「奨学金返還支援制度」を導入する企業が増えている。制度開始は2021年4月で、今年7月末時点では972社が利用し、千社の大台に乗る勢いだ。機構は「建設業や製造業などで人手不足が深刻化しており、求人の際にアピールできる」と分析。離職防止にも効果があるとみている。
 機構によると、かつて社員の奨学金返済を支える方法は、給与に一定額を上乗せ支給する方法が主流だった。新制度では、肩代わりする金額や、月払いか一括払いかなどは企業側が決める。企業が直接機構に送金し、法人税の控除も受けられる。
 注意点として、企業の送金が滞った場合は社員が残りを返済する義務を負う。一方、社員が離職した後、企業がそれまで送金した分を本人に請求する恐れがあるとして、機構はそうした行為をしないよう企業側に伝えている。
 制度を利用する建設会社の松本土建(長野県松本市)では、社員の返済額のうち月2万円を最大15年間補助する。担当者は「経済的負担を軽くできるとPRすることで優秀な人材を集めやすくしたい。定着も図れるだろう」と狙いを語る。
 機械製造の三井三池製作所(東京)は、入社5年以内の社員(総合職)に総額100万円を上限として補助。設計業務を担う理系人材の採用が課題で、担当者は「説明会の参加者から制度について質問が出ることがあり、食いつきが良い」と手応えを語る。入社4年目で今春から支援を受ける坂本竜平さん(35)は「貯蓄を増やすことができ、将来設計がしやすくなった」と喜ぶ。
 機構によると、制度の利用者数は、社員ベースで21年度813人、22年度1708人、23年度(7月末時点)2057人と伸び続けている。
(共同通信社)