2023年09月08日掲載

BOOK REVIEW - 『安全配慮義務の実務と対応 ―今、企業に求められる安全配慮とは―』

安西愈 監修、木村恵子 編著
荻谷聡史、田島潤一郎、 宮島朝子、平田健二、島野寛之 共著
A5判/300ページ/3500円+税/労働調査会 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 安全配慮義務は、「労働契約の付随義務として使用者が労働者に対し、その生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるように必要な配慮をする義務」とされ、あまねく企業に求められるものである。近年では、長時間労働による過労死や過労自殺が社会問題となったほか、いじめ・ハラスメントといった人間関係上の違法行為、感染症のような企業外発生源の伝染疾患など、対象領域も拡大している。加えて、個別事案ごとの判断が必要な場面も頻発し、企業としても対応に苦慮するケースは多い。

■ 本書では、第1章にて安全配慮義務の基本(法的性質、具体的な義務の内容など)を概観した上で、次章以降で企業が知っておくべき安全配慮義務について、多角的な視点から掘り下げていく。特に第2章では、Q&A形式で個別ケースへの対応方法や違法性判断のポイント等を解説しており、取り上げるテーマも建設・製造現場での事故や有害化学物質の取り扱い作業、受動喫煙、熱中症、長時間労働、ハラスメント、自然災害・感染症、外国人労働者、テレワーク――と、多岐にわたる。また、ケースごとに「最低限これは必要!」という対応策が示されているほか、詳しく知りたい人向けのコラム「もう一歩深く」が各所にちりばめられている構成も、実務家にとって役立つ点といえる。

■ 労働災害が発生した場合には、行政への対応が必要になるだけでなく、安全配慮義務違反が認められると多額の損害賠償責任を負う可能性もある。そこで、最終第3章では、損害賠償の算定方法や行政対応等を深掘りする。本書は、労働法の大家である安西愈弁護士が監修し、安西法律事務所に所属する第一線の弁護士陣が執筆している点も特徴である。安全配慮義務は、昨今、重要な経営課題の一つにもなっており、リスク管理の観点でも、手元に置いておきたい一冊だろう。

安全配慮義務の実務と対応 ―今、企業に求められる安全配慮とは―

内容紹介
安全配慮義務の全体像を網羅。
多種多様な事案における判例法理を整理し、実務対応上の留意点をわかりやすく解説!

「安全配慮義務」について法律面と実務面の双方から解説した書籍。

安全配慮義務の概括的な説明を行った上で、安全配慮義務が問題となり得るケースをQ&A形式で解説。

さらに、安全配慮義務をめぐる実務上の対応として、損害賠償額の算定方法や労働災害に伴う行政対応等についても触れる。