2023年09月22日掲載

BOOK REVIEW - 『マンガでよくわかる 1on1大全』

世古詞一 著、英賀千尋 作画
A5判/256ページ/1700円+税/かんき出版 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ コミュニケーションや育成の狙いをもって上司と部下の1on1ミーティング(以下、1on1)を取り入れる企業は多い。しかし、上司が一方的に話してしまう、部下が何を話したら良いか分かっていないなど、うまくいかないケースも多いと著者は述べる。本書は、『シリコンバレー式 最強の育て方―人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング―』(かんき出版)を2017年に出版して以降、1on1に関する講演や研修、動画提供を多く行ってきた著者が、1on1の意義や効果的な進め方のノウハウを説く一冊である。

■ 1on1は対話であり、概念の説明よりも実際のやり取りを見るほうがイメージしやすいという考えから、本書は1on1の場面を描いたマンガを中心に構成されている。課長と3名の部下が、各人3回の1on1を通してそれぞれの課題を発見し、成長するストーリーだ。マンガの後に続く解説では、1on1各回のポイントを「上司向け」「部下向け」「両者向け」の内容に整理して詳解し、読者の立場に応じて読み進められる工夫がなされている。1on1は上司向けの情報や研修が多いが、本来は部下が主体となる取り組みであり、上司との対話とフィードバックを通して自律的に成長を目指す場であると著者は指摘する。

■ 上司は1on1の目的を理解していない部下に対しどんなスタンスで接するべきか、部下は上司への要望を明確に伝えるためにどんな段階を踏んで考えを整理すべきかなど、ストーリーはテーマに沿って双方の視点から描かれる。役割を認識して自ら主体的に取り組む「自律型部下」、部下のポテンシャルを最大限に引き出す「支援型上司」となるための考え方やスキルが掘り下げられている本書は、1on1導入の準備に活用できるだけでなく、上司や部下が自身を振り返るきっかけにもなるだろう。

マンガでよくわかる 1on1大全

内容紹介
『シリコンバレー式最強の育て方』の著者が書いた、
今までになかった上司にも部下にも役に立つ決定版

相手の立場を理解することは、効果的な対話をする上でとても参考になります。上司の方は部下側の役割を認識することで、気持ちが楽になる部分があるでしょう。

部下の方は、上司の役割や大変な部分も理解することで、より主体的に取り組んでいけるでしょう。また、上司の方は、上司側の対応方法やスキルなどを部下の方も知ってしまうことで、ネタバレする感覚や恥ずかしさを覚えるかもしれません。

しかし、自分がうまくできていない部分を含めて、部下の方にさらけ出して共有することで、場に心理的安全性が生まれます。すると、部下の方もとても話をしやすくなるのです。

ぜひ本書を、上司と部下双方でご覧いただき、効果的な対話の一助にしてください。(本書「―はじめに」より)