2023年09月22日掲載

BOOK REVIEW - 『人財トランスフォーメーション 日本企業の未来を変える意識・制度・行動の変革』

安部慶喜、柳剛洋、金弘潤一郎 共著
四六判/256ページ/1800円+税/日経BP 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 90年代初頭のバブル崩壊から続く長い日本経済の停滞は、ついに”失われた30年”となった。そして、このままでは“失われた40年”になる可能性も否定できない――。著者らは、この長期停滞の原因について、「『ひと』を十分に生かすことができなかった」ことにあると分析する。VUCAの時代において、企業に必要なのはDXやSX(サステナビリティー・トランスフォーメーション)などの抜本的な改革であり、そのための最大の課題が「人財」の変革だという。本書は、人的資本経営が注目される今、日本企業が取り組むべき「人財トランスフォーメーション(人財X)」を説いていく。

■ まず、第1章では、これまでの30年間を振り返り、日本企業が本当に「ひとを大切に」してきたのかを問い直す。その中で、人財への投資やエンゲージメントが先進国・世界でも最低水準であるといった、不都合な真実も明かされる。続く第2章は、戦後の日本における人事制度の本質的な問題に踏み込む。そして、今から欧米を模倣しても勝てないとの結論から、日本型の「人財X」を提唱する。人財Xを、“現状の人財を経営戦略、パーパス・経営理念、時代背景から定義した「求める人財像」に変革すること”と定義し、第3章で、その考え方・進め方を解説していく。特に、この章で提起される、「メンバーシップ型」でも「ジョブ型」でもない新たな日本型人事制度のコンセプトは、本書の核ともいえるものであり、自社の人事制度の設計・運用の見直しなど、さまざまな場面で役立つものだろう。

■ 第4章では、「人材版伊藤レポート」で知られる伊藤邦雄氏(一橋大学名誉教授)との対談が収録されている。過去の日本型モデル、今の欧米型モデルよりも進化した、人的資本経営の「モデル3.0」の提言は示唆に富んでいる。経営戦略と人財戦略の連動といった視座の高い内容に加え、具体的な人事制度の在り方を深掘りした本書は、人事担当者必携の一冊だ。

人財トランスフォーメーション 日本企業の未来を変える意識・制度・行動の変革

内容紹介
『メンバーシップ型』でも『ジョブ型』でもない、
2つを超越した人的資本経営の姿がここにある

DX、SX、新規事業創出、働き方改革…。様々な改革が声高に叫ばれていますが、今、日本企業に本当に必要なのは抜本的な変革です。そしてその変革を実現するうえで最大の課題は「ひと」、つまり "人財"の変革が不十分なことです。

では日本企業が新たな成長フェーズに向かうための"人財"の変革とは。

本書では日本特有の雇用環境を踏まえた"人財"の変革、「人財トランスフォーメーション」の進め方を解説します。