岸田文雄首相は25日、配偶者に扶養されるパート従業員らが社会保険料の負担を避けるため働く時間を抑える「年収の壁」に関し、10月から対策を実施すると述べた。従業員の保険料を肩代わりする企業に、1人当たり最大50万円を支給する補助金の新設を表明した。手取りが減らないようにする手当を創設する考えも示した。「支援強化パッケージを週内に決定する」とした。
従業員101人以上の企業では、年収106万円を境に従業員の保険料負担が発生する。50万円の補助金のほかに「106万円の壁」への対策として創設する手当は、手取りが減少しないよう企業が従業員に支給する「社会保険適用促進手当」。社会保険料の算定から外して保険料負担が生じないようにする。
首相は「壁を超えても給与収入の増加に応じて手取りが増加するようにしていく」と官邸で記者団に語った。
10月から最低賃金が各地で引き上げられるため、年収の壁を意識して労働時間を抑える動きが広がる可能性がある。人手不足に悩む企業が対応を求めていた。
1人当たり最大50万円の補助金は、促進手当の支払いや賃上げを行った企業に支給し、対象人数に上限は設けない。
従業員100人以下の企業では、年収が130万円を超えると扶養から外れる。残業などによる一時的な増収の場合、扶養内にとどまれる現行の制度の要件を明確にして、連続2年まで扶養を維持できるようにすることも対策に盛り込む方針。
このほか、一部の企業で配偶者手当が支給されなくなる「103万円の壁」対策も進める。配偶者手当の見直し手順などを示した資料を作成し、企業に働きかける。
対策により、既に一定以上の年収で保険料を負担する人との間で不公平が生じる懸念がある。政府は2025年に予定する年金制度改正に向けた議論の中で、制度の見直しを検討する。
(共同通信社)