代表 寺澤康介
(調査・編集:主席研究員 松岡 仁)
ProFuture代表の寺澤です。
就職みらい研究所(株式会社リクルート)は、2024年3月卒業予定の大学4年生および大学院2年生を対象に、「働きたい組織の特徴」に関する調査を実施しました。この調査では、学生が支持する「働きたい組織の特徴」を、「経営スタイル」「貢献と報酬の関係」「成長スタイル」「ワークスタイル」「コミュニケーションスタイル」の五つの観点に分類し、全29項目にわたる項目ごとに、対立する意見AとBのどちらの考えに近いかを回答するという形式をとっています。
大学生と大学院生における多数派の傾向はほぼ同じですが、全29項目の中で1項目だけ多数派が異なる項目があります。それは、「貢献と報酬の関係」の中の項目8に関するもので、「A:給与は高いが、個人間で待遇に大きく差がついたり、降格になったりする可能性は大きい」、「B:給与は低いが、個人間で待遇に大きく差がついたり、降格になったりする可能性は小さい」という項目です。この項目では、大学生はBが多数派であり、大学院生はAが多数派という結果となりました。ただし、項目9において、「A:評価の良し悪しによって給与が大きく変化する」、「B:評価の良し悪しによって給与があまり変化せず、安定的な収入が得られる」では、どちらもBが多数派となっており、項目11の「A:入社直後の給与は低いが、長く働き続けることで後々高い給与をもらえるようになる」、「B:入社直後から高めの給与をもらえるが、長く勤め続けてもあまり給与が増えない」でも、どちらもAが7割以上を占めるなど、現代の若者が競争をあまり好まない、保守的な意識が垣間見える結果となっています。
前年と変わらぬ面接社数
さて、今回は前回に引き続き、HR総研が「楽天みん就」と共同で実施した「2024年卒学生の就職活動動向調査」(2023年6月1~12日)の結果を紹介します。
まずは、面接を受けた企業数について、文系・理系別に2023年卒のデータと比較しながら見ていきましょう。文系において最も多かったのは、2023年卒と同じく「10~14社」で、その割合は20%に上ります[図表1]。次いで、「4~6社」が19%、「7~9社」が15%と続きます。いくつかのポイントにわずかな差異が見られますが、全体的な傾向は2023年卒とほぼ変わりません。「10~14社」から「30社以上」までを合計した「10社以上」で比較してみても、2023年卒と2024年卒ではどちらも45%で変化がありません。したがって、面接社数は前年とほぼ変わらないといえるでしょう。
[図表1]面接社数の2年比較(文系)
資料出所:HR総研「2024年卒学生の就活動向調査」(2023年6月、以下図表も同じ)
次に理系を見てみると、最も多かったのは「4~6社」の29%で、それに次いで「1~3社」が24%となっており、それぞれ28%、23%だった2023年卒とほぼ同じ割合です[図表2]。また、「10社以上」の割合も比較してみると、2023年卒が29%に対して、2024年卒も28%とほぼ同じです。文系と同様に前年との比較ではあまり変化は見られません。
文系と理系を比較すると、理系は「1~3社」と「4~6社」の合計が53%と過半数に達し、一方で「10社以上」は3割未満です。これに対して、文系はそれぞれ33%と45%で、面接を受けた社数においては大きな差が見られ、理系のほうが文系よりも面接を受けている企業数は少ないことが分かります。
[図表2]面接社数の2年比較(理系)
最終面接は対面形式への回帰が進行中
次に、コロナ禍が落ち着いて面接の形式に変化があったかどうかを見てみましょう。まず、一次面接を受けた企業について、面接の形式の割合として最も近いものを選んでもらった結果が[図表3]です。「オンライン:対面=10:0」と回答した割合が文系・理系ともに最も多く、文系では39%、理系では53%と半数以上を占めました。次いで、「オンライン:対面=8~9:1~2」が文系で32%、理系で22%となり、両者を合計した「オンライン形式が8割以上」の割合は、文系で71%、理系でも75%といずれも7割を超えています。
[図表3]一次面接のオンライン・対面比率
一方、「オンライン:対面=0:10」と「オンライン:対面=1~2:8~9」を合計した「オンライン形式が2割以下」の割合は、文系で8%、理系でも10%にとどまりました。一次面接においては、オンライン形式が依然として主流であり、受験者数の多さや会場の手配、面接官の調整などを考慮すると、オンライン形式のほうが効率的であると考えられます。また、遠方からの学生が参加しやすい点も、オンライン形式が選択される理由の一つでしょう。
続いて、最終面接を一度でも受けたことのある学生を対象に、面接の形式の割合として最も近いものを選んでもらった結果が[図表4]です。一次面接とは異なり、「オンライン:対面=0:10」と回答した割合が最も多く、文系では44%、理系でも34%に達しました。また、「オンライン:対面=1~2:8~9」と回答した割合も文系では19%、理系でも13%と、いずれも高い水準を示し、両者を合計した「オンライン形式が2割以下」の割合は、文系で63%と6割を超え、理系でも47%と半数近くに上りました。一方、「オンライン:対面=10:0」と「オンライン:対面=8~9:1~2」を合計した「オンライン形式が8割以上」の割合は、文系では20%、理系では26%と、文系と理系で差が見られます。理系学生の多忙さを考慮して、往復の移動時間がなく、拘束時間を短縮できるオンライン形式が選択される割合が多いと推測されます。
[図表4]最終面接のオンライン・対面比率
2021年卒採用や2022年卒採用など、コロナ禍の前半では大企業を中心に最終面接までオンライン形式で面接が行われる企業が数多くありましたが、企業や学生からは動機づけや選考の制約があるという声も多く寄せられました。そのため、2023年卒採用からは対面形式への回帰が進んできたといえますが、2024年卒採用ではさらにその傾向が強まったといえそうです。
対面派の文系とオンライン派の理系
では、学生は「オンライン形式」と「対面形式」、どちらの面接形態を望んでいるのでしょうか。望ましい面接形態について聞いてみたところ、文系学生の中では「対面形式」を支持する割合が37%で、「オンライン形式」(32%)を支持する割合よりも高いことが分かりました[図表5]。一方、理系学生は「オンライン形式」を支持する割合が37%に対して、「対面形式」を支持する割合は28%と、3割を下回っています。したがって、企業が理系学生に対して「オンライン形式」での最終面接をいまも採用している背後には、これらの学生の選好も影響している可能性があることが示唆されていますね。
[図表5]好ましい面接形態
学生がそれぞれの面接形態を支持する理由を以下に抜粋して紹介します。
【オンライン形式】
- リラックスして臨める、就活生・面接官ともに時間やお金をかけなくてよい、無駄が省ける(文系・上位私立大)
- 交通費や手間が省けるので、対面形式だった場合に移動に費やしていた時間を他社の選考や説明会などに充てることができ、時間を有意義に使えることがとてもありがたかった(文系・上位私立大)
- どこにいても面接を受けられる(文系・上位私立大)
- 時間の融通が利きやすく、本社が遠方にある企業でも受けることができる(文系・上位私立大)
- 対面と比べて緊張しないため。入室などのルールがないため(文系・その他国公立大)
- 1日にいくつも面接を入れられるから(文系・早慶大クラス)
- スーツやパンプスなど、面接内容以外の不安要素がない。一次面接から対面の会社は入社後にオンラインでの働き方ができない印象を受けた(文系・早慶大クラス)
- 地方に住んでいるため、対面で東京や大阪まで行くのに丸1日以上費やす必要があり、効率が悪い(理系・旧帝大クラス)
- 上半身だけきっちりした格好であればOKだから(理系・上位私立大)
- カンニングペーパーを見ることができるため。自分の顔も画面に映るため、笑顔や表情を確認しながら面接を受けられるため(理系・上位国公立大)
- 学会と日程が重なる場合があり、対面だと参加できなかったから(理系・上位国公立大)
- 交通費がかからないことはもちろん、時間ギリギリまで伝えたい内容の概要を頭に入れることができるし、対面面接での礼儀作法みたいなものに気を取られすぎて、本当に伝えたいことがうまく伝えられなかったら嫌だから(理系・その他私立大)
- 地元企業を受けていないため、オンラインのほうが移動に時間がかからない(理系・その他国公立大)
- オンラインのほうが時間的拘束も少なく、メモを取りながら面接を受けられる(理系・早慶大クラス)
【対面形式】
- 直接会ったほうが本来の自分自身の姿でお話しできるため(文系・上位私立大)
- 対面のほうが場の雰囲気をより正確に感じ取りやすい(文系・上位私立大)
- 実際の会社の雰囲気や社員の方々の雰囲気を感じることができたから(文系・上位私立大)
- 表情、しぐさ等も加点要素になり得るため。目を見て話せることで、アピールにもつなげられる(文系・上位私立大)
- 通信トラブル等の心配がない(文系・早慶大クラス)
- オンラインだと自分も相手も堅い印象になりがちで、対面ほど場が和まない(文系・旧帝大クラス)
- オンラインと比べて緊張したが実際の業務では対面で接客するので、より職場の雰囲気や人事の方の印象が伝わってきたから(文系・その他私立大)
- 会話が互い違いにならないこと。相手の目を見て話せたほうが緊張しないこと(文系・中堅私立大)
- 人事担当者との会話はオンライン上でも問題なく取れるが、担当者の雰囲気や面接時の態度、面接前後に通る会社の雰囲気、会社の周りの街の様子(入社することになったら通勤するので非常に大切だと思う)などはオンラインでは得られない(文系・中堅私立大)
- 話すタイミングや表情などをつかみやすい(理系・上位私立大)
- オンラインだと目線の位置が定まらない(理系・上位国公立大)
- 対面のほうが自分をアピールしやすい(理系・上位国公立大)
- インターンに参加していない会社だと、一度も会社や会社の人と会わずに入社することに不安を覚えたため(理系・上位国公立大)
- 誠意がより伝わる。会社見学も同時にできるため企業を見定める材料が増える(理系・上位国公立大)
- オンラインだと思いが伝わらず、場の雰囲気なども察しづらいことから、逆に緊張する。また、オンラインは一人ひとりが話す時間が対面より区切られているため、コミュニケーションという感じがせずやりづらかった(理系・その他私立大)
面接ピークは「本年3月」
今度は、面接を受けた時期について、文系・理系別に2023年卒と比較してみましょう。
まずは文系からです。2024年卒採用では早期化が叫ばれましたが、驚くべきことに「前年(2022年)10月」までの期間では、2023年卒と大幅な数字の変動は見られませんでした[図表6]。2023年卒を上回り始めたのは、2023年卒の14%から2024年卒で17%に増加した「前年11月」からとなります。その後、「本年(2023年)3月」まで、3~5ポイントほど2024年卒が2023年卒の数字を上回りました。ところが、「本年4月」になると、2023年卒では78%でピークに達していたのに対し、2024年卒では5ポイント低い73%で、2023年卒を下回る結果となりました。ピークも「本年4月」ではなく、「本年3月」の74%という結果でした。その後、「本年5月」では2023年卒68%→2024年卒58%、「今年6月」では2023年卒38%→2024年卒26%と、2023年卒から大幅に減少しています。
[図表6]面接を受けた時期の2年比較(文系、複数回答)
次に理系を見てみましょう。こちらも早期については、「前年(2022年)9月」まで2023年卒の数字を上回る月は見られませんでした[図表7]。それどころか、「前年6月」から「前年8月」までは2023年卒採用を下回る結果となりました。しかし、「前年10月」になって初めて、2023年卒の6%に対して、2024年卒は10%と4ポイントほど上回り、以降は、「前年11月」で7ポイント、そして「前年12月」で10ポイントを維持し、「本年2月」まで2023年卒を上回り続けました。ただし、文系よりも1カ月早く、「本年3月」には2023年卒を下回り始め、その後、2023年卒を上回ることはありませんでした。面接のピークは両年ともに「本年3月」でしたが、2023年卒の76%に対して、2024年卒は71%と5ポイント低くなっています。「本年6月」には16%にまで低下し、文系よりも減少スピードが早くなっています。
[図表7]面接を受けた時期の2年比較(理系、複数回答)
文系・理系ともに、前年夏までの超早期における面接は2023年卒から増加しておらず、前年の秋口から徐々に2023年卒を上回り始め、3月に面接のピークを迎えた後は急激に面接受験者が減少しています。面接受験者は、6月には文系で26%、理系ではさらに少ない16%まで減少してしまいましたので、理系学生の選考に当たっては、遅くとも5月までの面接を目指す必要がありそうです。
面接を志望度向上の重要な場に
今回の調査において、「面接」に関連して、「企業の社員や人事に言ってほしくなかった言葉」と「質問したいけれど、自分から質問するのは勇気が要った、もしくは質問できなかったこと」をフリーコメントで回答してもらっています。参考までに、それぞれ一部を抽出して紹介します。面接官の印象が学生の志望度に大きな影響を与えることが分かっています。以下の意見などを参考に、「面接」を通じた他社との差別化を検討してみる価値があるかもしれません。
【企業の社員や人事に言ってほしくなかった言葉】
- 志望理由を何度も聞かれ、詰まりながらも何とか答えたことに対して、「あなたの頭の中にピースはあるんだろうけど、それが組み立てられてないよね。まあそのピースも足りてないけど」(文系・上位私立大)
- 私の自己PRに対して「それ、就活生10人いたら10人が言うことだよ」(文系・上位私立大)
- 質問に対する返答をした後に「あ、もう終わりですか?」(文系・上位私立大)
- 「○○大学ということは、第一志望は別?」(文系・上位私立大)
- 「後悔しないように、最後まで選択肢を狭めることなく就活に取り組んでほしい」(文系・その他国公立大)
- ガクチカを答えた後、面接官に「それが一番頑張ったことですか?」と聞かれた(文系・その他国公立大)
- 面接が結果的に落ちていたのにもかかわらず、その前に「直すところがなかった! すごくよかったよ」と言われたこと(文系・上位国公立大)
- アルバイトを短く多く経験したために、就職後もすぐやめてしまうのではないかと言われたこと(文系・中堅私立大)
- ガクチカを「遊びだ」とバカにされた(文系・その他私立大)
- 「あなたの志望する職とあなたの研究は何も関係ないですよね、どうするんですか」(理系・旧帝大クラス)
- 質疑応答の際に説教じみたことを10分くらい言われたので、こちらにも落ち度はあったかもしれないが、志望度は大きく下がった(理系・その他国公立大)
- 自身の研究の仮説に対して、「私はそうは思わない」と言われた(理系・その他国公立大)
- 「君もグループ会社のほうなら活かせそうだから、そっちの選考なら内定もらえると思うよ」(理系・その他国公立大)
- 自由応募で出願できたが、最終選考前に「推薦書が必要だ」と後から言われたこと(理系・その他国公立大)
- 希望を出していない職種について、興味はあるか聞かれたこと(理系・その他国公立大)
- 入社理由を真面目に聞いたら、社員が笑いながら「ノリ」と返されて次の質問に移ったこと(理系・上位私立大)
- 会社の強みを聞いた時に、「人がいいこと」と答える企業が多かったこと(理系・上位国公立大)
【質問したかったが、質問しづらかった(質問できなかった)こと】
- 福利厚生、実際の残業時間、若手の裁量(文系・中堅私立大)
- モデル年収(文系・早慶大クラス)
- 働き方について。リモートワークの比率や給与面(文系・早慶大クラス)
- 給与や福利厚生についての質問は自分自身非常に重要だと思っていながらも、遠慮の気持ちから質問することができなかった(文系・早慶大クラス)
- どのくらいの確率で転勤を任されるのか(文系・上位私立大)
- 月収の金額、平均勤続年数が短い理由(文系・上位私立大)
- 自分の面接態度はどうだったかということや、自分の回答したキャリアプランは実際に就職後にその会社で実現可能なものであるかどうか(文系・上位私立大)
- 聞くことによって不利な評価が付くと思ったから、具体的な労働条件等については質問できなかった(文系・上位私立大)
- 副業が可能かどうか(文系・その他国公立大)
- 会社の改善点や会社に持っている不満など(文系・その他私立大)
- 昇級や給料のこと。初任給は募集要項に書いてあるが、入社年数を重ねた時に給料がどれくらいもらえるのか分からないため、気になるが、聞きづらい(理系・その他国公立大)
- 3年以内の離職率などに関しては聞きにくい印象がある。また、採用人数の設定や経営状況に関する質問はできなかった(理系・その他国公立大)
- 年収がどのように上がっていくのかについての質問(理系・その他国公立大)
- 福利厚生の詳細内容(家賃補助や昇給率など)(理系・上位私立大)
- 社員寮は家具付きなのか、友達や家族を呼んでも大丈夫かなど、込み入った話を聞くことができなかった(理系・上位国公立大)
- 副業や女性の活躍度について聞きたかったが、副業に関しては本業にやる気がないかを聞かれてしまうのではないかと思い、女性のことに関しては面接官に女性社員がいることが少なく、聞いても本当のことを話していただけないのではないかと感じた(理系・上位国公立大)
- 産休前後の職場の雰囲気、子育てしながらの仕事の状況(理系・上位国公立大)
- 勤務地の希望がどれだけ通るのか(理系・早慶大クラス)
学生が質問したくても質問しづらいと感じる項目は、企業側から質問される前に積極的に開示することで、他社との大きな差別化になると同時に、好感度・志望度のアップも図れそうです。
文系・理系ともに増える重複内定者
さて、ここからは「内定」に関する調査結果を紹介します。まずは、内定社数を文系・理系別に2023年卒と比較してみました。文系において、「0社(未内定)」の割合は2023年卒とほとんど変わらないものの、「1社」の割合は2023年卒の29%から22%へと大幅に減少し、「2社」が23%で最も多くなりました[図表8]。「3社」もわずかに増加し、「4~6社」は13%から18%へと5ポイント増加するなど、2社以上の内定を保有する学生(重複内定者)は6割にも達し、1人当たりの内定社数は明らかに増加していることが分かります。
[図表8]内定社数の2年比較(文系)
理系においては、「0社」が2023年卒の12%から10%へと減少し、「1社」は33%から23%へと10ポイントも減少しました[図表9]。これに対し、「2社」は23%から31%へ大幅に増加し、「4~6社」も12%から17%へと増加しました。重複内定者は文系よりもさらに多く、67%と全体の3分の2にも達するなど、文系と同様に1人当たりの内定社数は明らかに増加傾向にあります。
[図表9]内定社数の2年比較(理系)
次に、内定取得時期について、文系・理系別に2023年卒と比較してみましょう。複数の内定を持つ学生には、それぞれの内定月をすべて選択してもらいました。
文系において、「本年4月後半」が32%でピークではあるものの、「本年3月後半」(28%)から「本年5月後半」(30%)までがほぼ同程度の高水準で推移しています[図表10]。一方、「前年10月」までの早期の内定取得については2023年卒と大きな変化はありませんでしたが、「前年11月」からは増加傾向が顕著で、「本年2月」には2023年卒の10%から14%へ、「本年3月後半」には17%から28%へと大幅に増加しました。ただし、「本年5月後半」には33%から30%へと一転して減少に転じ、「本年6月前半」には23%から14%へと急落しました。内定取得時期において、早期には大きな変化は見られなかったものの、昨年秋以降は明らかな前倒し傾向が現れました。
[図表10]内定取得時期の2年比較(文系、複数回答)
理系においても、やはり早期の内定取得には大きな変化はありませんでしたが、2023年卒と比較して文系よりも1カ月早い「前年10月」から増加傾向が始まり、「前年12月」には2023年卒の3%から8%へ、「本年1月」には6%ら13%へと増加しました[図表11]。ピークは文系と同じく「本年4月後半」(32%)でありながら、「本年5月前半」には21%から18%へと早い段階で減少に転じ、「本年6月前半」には9%と1桁台にまで低下しています。面接時期と同様に、内定の取得についても文系よりも早いペースで進行していますので、理系の選考時期には特に注意が必要です。
[図表11]内定取得時期の2年比較(理系、複数回答)
2社以上に内定承諾した学生が3割
内定を取得した学生を対象に、内定先への内定承諾の連絡状況を調査した結果を[図表12]に示します。文系・理系ともに最も多いのは、「内定した1社だけに内定承諾した」で、それぞれ53%、57%と過半数になっています。最終的に入社できるのは1社であるため、通常は複数の企業に内定承諾することは望ましいことではありませんが、「内定したすべての企業に内定承諾した」と「内定した一部(2社以上)の企業に内定承諾した」を合わせた割合は、文系で27%、理系で28%と、3割近くにも達しています。内定先からは、内定時期によって内定承諾の期限を設定されることが多いため、本命企業の選考が進まないまま、内定先企業からの内定承諾期限に追われるケースも出るでしょう。そのような場合には、いったん内定承諾してしまうことも少なくないでしょうし、選考・内定時期がほぼ同じでも、6月時点ではまだ入社先企業を確定できない学生も一定数いることが予想されます。
[図表12]内定承諾の状況
もう一つ、内定取得者に内定承諾時の意識についても確認してみました。「内定承諾した企業に入社することを、強く希望している」が文系・理系ともに圧倒的に多く、それぞれ61%、74%と6~7割以上に達しています[図表13]。ただし、「内定承諾した企業に入社するつもりだが、まだ他の企業も考えたい」とする学生が文系で31%、理系で20%と2~3割もいるとともに、さらには「入社する企業を絞り込めておらず、とりあえず承諾しておく」がいずれも7%も存在します。
企業の観点からすると、学生から内定承諾があったとしても、まだ安心しきれない状況であることが浮き彫りとなっています。
[図表13]内定承諾時の意識
最後に、内定取得者の就職活動の終了意向についての調査結果を紹介します。最も多かったのは、文系・理系ともに「第1志望の企業に内定したので終了する」で、それぞれ54%、63%と5~6割以上の学生が選択しています[図表14]。「第1志望の企業ではなかったが内定したので終了する」との回答も、文系で13%、理系で14%存在し、これらを合計した「就活を終了する学生」は、文系67%、理系では8割近くの77%に達しています。一方、「第1志望の企業に内定したがまだ他も見たいので継続する」と「第1志望の企業に内定していないので継続する」を合計した「就活を継続する学生」もそれぞれ32%、21%という結果となっており、ここからも内定承諾が絶対的な終了の意味を持たないことが分かります。
[図表14]就職活動の終了意向
寺澤 康介 てらざわ こうすけ ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長 86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。 著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。 https://www.hrpro.co.jp/ |