上智大学経済学部 教授
A5判/232ページ/2800円+税/千倉書房
BOOK REVIEW ―人事パーソンへオススメの新刊
■ 近年、ジョブ・クラフティングという考え方が人事労務領域において関心を集めるようになっている。ジョブ・クラフティングとは、従業員個人が「自らの仕事のタスク境界や関係性の境界においてなす物理的・認知的変化」と定義され、これを行った結果として、従事する仕事の意味ややりがいを高めることができると考えられている。本書は、「従業員の自発的行動」であるジョブ・クラフティングを、組織のマネジメントの影響を受ける行動でもあると位置づけた上で、その影響を明らかにしていく学術書である。
■ 本書の構成は、第Ⅰ部(第1~4章)と、第Ⅱ部(第5~7章)に分かれている。まず第Ⅰ部では、「組織が従業員の仕事のやりがいを引き出すには、どのような職務設計を行うと良いのか」という問いに対して、経営管理論とその近接領域の研究知見を含めて検討する。①組織が画一的に職務充実を行うことが従業員の仕事のやりがいに結び付くとは必ずしも限らない、②従業員と仕事の間の不適合を解消するには循環的な職務設計が重要であり、これを実現するキーワードの一つがジョブ・クラフティングである――等が提示される。第Ⅱ部では、「自発的行動であるジョブ・クラフティングを組織がどのように促すことができるのか」という問いに答えていく。研究結果を基に、「組織による人事施策の設計と管理者によるリーダーシップの発揮によって間接的に促すことができる」と主張している。
■ 本書は理論的志向の強い学術書であると同時に、実務的な問題意識の解消につながる知見も数多く含まれている。人事部員や、部下の自発性を引き出したい管理職、産業保健の専門職が読むことで、ジョブ・クラフティングを組織内で強力に浸透させていくための実践的なヒントが得られるだろう。
内容紹介 ――JCの「マネジメント」を探求する、JC研究の決定版。 |