BOOK REVIEW - 『採用広報から、スカウト文章、面接術まで　「本当にほしい人材」が集まる中途採用の定石』

■ 株式会社リクルートが公表している「転職時の賃金変動状況」（2023年7－9月期）を見ると、「前職と比べ賃金が1割以上増加した転職決定者数の割合」は35.3％であり、本統計の始点である2002年4－6月期以降、最高値を更新しているという。このような転職時賃金の上昇のみならず、採用手法の変化など、中途採用を巡る環境は著しく変化しており、対応に戸惑う企業も多いのではないだろうか。本書は、2015年の創業以来、350社以上の採用代行・支援を手掛けてきた筆者が、今の時代ならではの中途採用の新しい“定石”を解説するものだ。

■ 中途採用がうまくいく会社といかない会社の差は、採用に対する戦略、職場づくり、採用広報などの幅広い領域で取り組み内容が異なることに起因すると筆者は言う。本書の序盤では、企業が有する採用に関する悩みを列挙し、求職者から選ばれる企業になるための採用戦略立案のステップを細かに解説する一方、良い職場づくりや会社の印象をコントロールする術、採用のターゲットづくりの方法にも触れていく。また、中盤～終盤では、採用広報の基本に触れた上で、人材紹介やリファラル等の求人手法の特徴を説明し、求人媒体の募集文やスカウト文章の作成、具体的な面接方法などの実践的メソッドも提供している。

■ そのほか、巻末付録には“創業したてのスタートアップ”や“資金調達したベンチャー企業”、“ITエンジニア”“地方都市の中小企業”の四つのケースに分けた採用方針の立て方を紹介している。本書は、筆者の経験や考え・試行錯誤してきたことを言語化し、中途採用を成功させるためのノウハウを余すところなく提供しているが、中途採用のみならず新卒採用でも流用できるテクニックも含まれている。新たに採用を始める際の指南書や、自社の採用を見直すきっかけとして本書を活用いただきたい。