BOOK REVIEW - 『中小企業も実践できる　従業員エンゲージメントの教科書』

■ 人的資本経営を推進する動きが加速する中で、その中核を成す概念の一つが「従業員エンゲージメント」であろう。ただ、いざ従業員エンゲージメントを向上させようと社内調査等を行ってみても、「肝心の改善や向上に向けたアクションにつながっていない」といった悩みを持つ担当者は多いのではないだろうか。本書では、ES（従業員満足度）やエンゲージメントに特化したコンサルティング会社の代表として、16年間、500社以上の企業に関与してきた筆者が、従業員エンゲージメント向上に寄与する各種施策を解説している。

■ 本書は第1章から第9章まであり、従業員エンゲージメントの基礎知識や従業員エンゲージメントが高まっていかない理由、向上へのステップ等が述べられている。従業員エンゲージメントに関する理論・施策・事例の3要素で構成されている点も、本書の大きな特長だ。特筆すべきは事例の充実度で、星野リゾートやチロルチョコ、モスフードサービス等、著者がこれまで関与してきた顧客企業を中心に10社の事例が実名で紹介されている。

■ 各社で行われた調査やコンサルティングの現場で得てきた著者の持つ知見が詰まっているという意味で、本書の内容は“実践のためのガイドブック”としての色合いが強い。業種や規模を問わない汎用(はんよう)性の高い事例がピックアップされていることから、中小企業の経営者や担当者でも、本書から得たノウハウを現場で実践しやすいだろう。また、従業員エンゲージメントの“入門書”としても読みやすく、活用しやすいと思われることから、本テーマについての初学者もぜひ手に取ってみてほしい。