2023年11月24日掲載

BOOK REVIEW - 『実践ダイバーシティマネジメント 多様なチームを率いるツールとスキル』

パトリシア“ティッシ”ロビンソン 著
一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻教授 
伊藤清彦、岸田典子、鈴木有香、鈴木桂子 訳 

A5判/304ページ/2800円+税/日本経済新聞出版 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 今や多くの企業でダイバーシティ経営が推進されており、年齢、ジェンダー、国籍、専門領域などにおいて、多様なメンバーと仕事をともにする場面も増えた。それゆえにマネジメントに頭を悩ませている管理職やリーダーも多く存在することだろう。本書は、20年以上にわたり日米の有名企業で実践的なダイバーシティマネジメントのトレーニングを行ってきた著者が、チームの多様性と集合知を活用し、チームの結束やコミュニケーション、コンフリクト(対立)の克服を支援するためのツールやスキルを提示したものである。

■ 本書は全10章から成り、第Ⅰ部である第1章から第7章までは、チームの発展段階の特徴やチーム初期の留意点、チーム内の心理的安全性の確保、発言機会の平等性の促進、フィードバックの与え方や受け取り方など、ダイバーシティ環境におけるリーダーシップの発揮の仕方やチームビルディングの在り方について述べている。また、第Ⅱ部となる第8章から第10章では、チーム内のコンフリクトを和らげるために配慮すべき点やスキルがまとめられ、巻末には各章のテーマに即したチェックリストやFAQが掲載されている。

■ 本書では、章ごとの導入部分に趣向を凝らしており、職場でよく経験する状況を基に架空の登場人物を設定し、物語形式でテーマが展開していく。例えば第1章では、ベンチャー企業を立ち上げたばかりのトオルが、多様な文化背景と専門領域を持つメンバーとプロジェクトを推進していこうとするがうまくいかず、困り果てているエピソードが取り上げられる。こうしたケースに即して、問題解決につながる具体的な手順が紹介される構成となっており、情景がイメージしやすく、さくさくと読み進めていくことができる。「ダイバーシティ」と銘打っているものの、チームマネジメント全般に生かすことのできる実践書となっているため、あらゆるマネジャーやリーダーにお薦めしたい一冊である。

実践ダイバーシティマネジメント 多様なチームを率いるツールとスキル

内容紹介
多様性を活かした強いチームをつくる知恵が満載

年齢、性別、国籍、文化、企業や職務上の背景などが異なるメンバーがチームに共存するダイバーシティ(多様性)。多様性の高いチームはうまく運営できれば最も革新的で効果が上がるが、その運営ノウハウはまだ日本では定着していない。

本書は、チームビルディング、インクルージョン、心理的安全性、発言機会平等性、フィードバック、コンフリクト緩和、ミディエーションなど、ダイバーシティを活かすマネジメントに必要なツールやスキルを、20年以上にわたる教育・研究実績にもとづいて日本企業目線でわかりやすく解説する実用的なテキスト。