BOOK REVIEW - 『仕事のできる人を「辞めさせない」15分マネジメント術　離職を防ぐために今やるべきこと』

■ 「15分」――24時間は1440分、その約1％の時間で、離職率を下げるためのマネジメントができるというのが本書の主張である。今日、各組織の長やマネージャーは、組織を統括しながら自らプレーヤーとしての業務にも注力する。そんな中、じっくり腰を据えて部下と向き合う時間を取れない、と悩む人も多いだろう。本書は、アパレル専門店チェーンやコンビニエンスストアのFC店で、マネージャーや経営者として14年間の実務実績を有する著者が、限られた時間の中で効率よく部下を育て、マネジメントを行うための手法を伝える一冊だ。

■ 本書はミーティング、採用、人材育成、応用編の4部構成で、各部の根底に「マネジメントする側の意識と行動を変えることの重要性」がある。ミーティングでは、聞く力（質問力）の向上に重点を置く。NG質問も交えながら、部下との対話例を場面別にまとめている。採用では、求人広告の作成や採用面接の要点、定着率向上のための出勤初日の準備など、辞めない人を採用する方法や採用人材の定着までを解説している。人材育成では、スタッフに仕事を任せきるまでの教育を、注意点を踏まえながら説明する。各項目に具体例を充実させ、図表を積極的に活用するなど、内容を理解しやすくなる工夫が随所に見られる。

■ 「あなたは、スタッフの話を、たとえ5分間でもじっくりと聞いたことはありますか？」――本書の1センテンスにはっとするリーダーも多いのではないか。優秀な若手人材の流出は企業にとって大きな損失だが、身近なコミュニケーションが流出防止の起点となる。自社の1on1ミーティングの運用で、なかなか成果が上がらないと苦心する人事担当者にとっても、本書はさまざまなヒントを与えてくれるはずだ。