2023年12月22日掲載

BOOK REVIEW - 『人事で一番大切なこと』

西尾 太 著
フォー・ノーツ株式会社 代表取締役社長、「人事の学校」主宰 
四六判/288ページ/1800円+税/日本実業出版社 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 「いい人が採用できない」「入社後定着せずに辞めてしまう」「社員が育たない」――人事における悩みはさまざまである。昨今では、これらの問題を解決するためにジョブ型人事制度への変更を検討する企業も少なくないが、“制度はあくまで手段であり、まずは企業の「考え方」を定めることが重要である”と著者は言う。本書は、そうした“企業人事の考え方”である「人事ポリシー」の策定の仕方や活用法にスポットを当てており、これまで500社以上の制度設計・導入を行ってきた著者の知見が凝縮された一冊となっている。

■ 本書は六つのChapterで構成されている。Chapter1では人事施策の失敗事例を多数取り上げ、Chapter2では人事における「考え方」を決めることの重要性を説く。Chapter3~5において、本書の肝である「人事ポリシー」を扱っており、つくり方や整理の仕方、活用例について、図表などを交えて詳細に説明している。Chapter6では、「人事部門のポリシー」をテーマとし、人事ポリシーに基づいて“人事部門独自の”ポリシーを定めることの重要性が語られている。いずれのChapterにおいても、長年人事部長を経験してきた著者ならではの事例や実践例が数多く紹介され、納得感を持って読み進むことのできる構成となっている。

■ 本書の見どころといえば、人事ポリシーを定める上で必要となる詳細なフレーム提示であろう(Chapter4)。ここでは、自社で働く人に対する考え方――働く目的、何を大事にして評価するか、何に対して給与・賞与を払うか等――を網羅的に要素分けした上で、各要素の定め方のポイントについて順を追って丁寧に説明している。また、続くChapter5では、そうして定めた人事ポリシーをどのように評価制度や採用活動に落とし込んでいくかが述べられており、著者の体験を含む豊富な具体例が示されているため、大変実用的である。実務に悩む人事担当者にとって、間違いなく本書は一つの道しるべとなるであろう。

人事で一番大切なこと

内容紹介
なぜ、いい人が採れないのか
採れても辞めてしまうのか?

企業人事は失敗があってはならないものですが、実際は多くの企業で「人事の失敗」が起きています。とりわけ「“いい人”が採用できない」「採用しても定着しない」という採用の失敗は、日本の企業の大半が経験しています。そして、「成功戦略」は語られても「失敗戦略」が語られないのが人事の世界でもあります。

そこで本書では、著者だからこそ知っている「人事のよくある失敗」とその原因を紹介。そして人事の失敗を回避するためにいちばん大切な「人事ポリシー」について、設定・運用の手法まで丁寧に説明します。