2024年01月16日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2024年1月

ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介

(調査・編集:主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 政府は、2023年12月8日に開催された「就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議」において、2025年度卒業・修了予定者(現2年生/学部4年生)の日程について、新たな就活ルールの適用を確認しました。既に2023年4月に示されていたとおり、従来と同様、「採用広報開始3月1日、採用選考開始6月1日、正式内定開始10月1日」の日程を原則としながらも、人工知能(AI)などの高い専門的知識や能力を有すると判断された学生については、採用広報期間を短縮して、3月からの選考活動を認めるというものです。ただし、こちらには前提条件がついており、卒業・修了年度に入る直前の春休み以降に実施される2週間以上の高度専門型インターンシップを経ていることが求められ、さらに、新卒一括採用に係る全体の採用計画、学生に求める学修成果水準・専門的能力を公表することが要件として追加されています。

 「卒業・修了年度に入る直前の春休み以降」となると、1月以降に実施される冬期インターンシップのみが対象となり、夏期インターンシップや近年増えている秋期インターンシップは対象とならないことになります。また、2024年卒学生の就職活動では、3月は既に面接選考のピークとなっており、文系も理系も7割以上の学生が面接を受けています(本連載「2023年10月」参照)。3月時点では、既に就職活動を終えている学生もいるような実状の中で、高度人材についての選考開始時期を3月に早めるという今回のルール変更は、どんな意味を持つのか、甚だ疑問としか言いようがないですね。
 HR総研では、価値ある情報をこれからもしっかりとお届けしてまいります。本年も何とぞよろしくお願いいたします。

2024年卒の採用計画達成は4分の1

 さて今回は、HR総研が実施した「2024年&2025年新卒採用動向調査」(2023年11月29日~12月8日)の結果をお届けします。ぜひご参考にしてください。
 まずは、終盤に差し掛かった2024年卒採用の現状から見ていきましょう。2024年4月入社の採用計画に対する2023年12月初旬時点での内定者充足率を見ると、全体では計画数を達成した「100%以上」を選択した割合は25%と、ちょうど4分の1にとどまります[図表1]。「90~100%未満」(20%)と「80~90%未満」(11%)までを加えた、「採用計画数に対して8割以上」(以下同じ)の割合でようやく過半数に達します。バブル期において、“採用計画数確保が最優先”という採用方針から、採用基準を極端に下げてまで採用計画数を追わない採用方針に変えた企業が多く見られましたが、2024年卒採用も企業にとって厳しい結果になっていることは明白です。内定者が1人もいない「0%」の企業も1割あり、「採用計画数に対して5割以下」(「0%」~「30~50%未満」の合計、以下同じ)という企業が25%で、全体の4分の1になります。

[図表1]2024年4月入社の採用計画に対する内定者充足率

資料出所:HR総研「2024年&2025年新卒採用動向調査」(2023年12月、以下図表も同じ)

 従業員規模別で見ると、「採用計画数に対して8割以上」の企業は、1001名以上の大企業でこそ76%と4分の3に達しますが、301~1000名の中堅企業と300名以下の中小企業では、それぞれ46%、47%と半数を下回る状況になっています。逆に、「採用計画数に対して5割以下」の割合は、大企業ではわずか9%ですが、中堅企業では24%、中小企業に至っては38%と4割近くにも達し、従業員規模が小さくなるほど採用活動により苦戦している様子が分かります。

2024年卒採用継続企業が大手でも5割

 では、採用活動を継続している企業の割合はどうなっているのでしょうか。こちらは意外な結果となっています。
 2024年卒採用の活動継続状況を従業員規模別に並べてみた結果が[図表2]です。採用計画数の達成状況では、規模による差異がはっきり表れていましたが、こちらでは規模にかかわらず、採用活動を終了した企業と継続している企業が見事に半々となっています。大企業でも半数が採用活動を継続していることも驚きですが、採用計画が未達であっても2024年卒採用を終了してしまった中堅・中小企業が多いことにも驚きます。
 採用計画が未達で終了した企業は、キャリア採用にシフトしたか、あるいは2024年卒採用は諦めて、次の2025年卒採用にシフトしたということなのでしょう。ここからも、採用計画達成が“必達目標”とは捉えられていない企業の方針の変化が見て取れます。

[図表2]2024年卒採用の活動継続状況

 複数内定を取得した学生が多かったことから、内定辞退が増えた――との声をよく耳にしますが、内定辞退率の実態はどうなのかを確認した結果が[図表3]です。全体で見ると、内定辞退が1人も出なかった「0%」が29%と約3割、「10%未満」が15%、「10~30%未満」が19%で、これらを合計した「内定辞退率3割未満」(以下同じ)の割合は63%と6割を超えます。逆に言えば、「内定辞退率3割以上」の割合が4割近くあるということになります。

[図表3]2024年卒採用の内定辞退率

 従業員規模別に見ると、内定者数の影響が大きいため、「0%」の割合は中小企業が最も高く、56%と過半数に及ぶのに対し、中堅企業では17%、大企業に至ってはわずか7%にとどまります。ただ、「10%未満」の割合は、大企業の28%に対して、中堅企業は12%しかなく、「0~10%未満」の割合では大企業のほうが高くなります。
 中堅企業で割合が最も高かったのは「30~50%未満」の27%であり、大企業では「10%未満」と「30~50%未満」がともに28%で並んでいます。また、どの企業規模でも内定辞退率「100%」という企業が、2~4%あります。
 内定辞退率が「100%」の企業はもちろんのこと、5割を超える企業においては、ターゲットが自社に適合しているか、選考方法や内定出しのタイミングはどうかなどを徹底的に検証してみる必要がありそうです。

半数以上が入社前に配属を告知

 内定辞退と合わせて、入社後の早期退職にも影響を与えているのがいわゆる「配属ガチャ」、つまり、自分の希望と異なる部署や勤務地への配属です。昨今、この「配属ガチャ」による内定辞退や早期退職を抑制するために、本人に配属先を伝えるタイミングを早める動きがあると言われています。その実態を探るべく、今回の調査では配属先を伝えるタイミングについて尋ねてみました。
 その結果、全体では、かつて私たち昭和世代では一般的だった「新入社員研修終了時」(24%)を抑えて、「選考途上」が25%でトップとなりました[図表4]。大企業では7%と少数派にとどまりますが、中堅企業で32%、中小企業では35%に達し、いずれも規模別では最も高い割合となっています。大企業で26%と最も高い「新入社員研修終了時」は、中堅・中小企業においてもそれぞれ20%、25%で、「選考途上」に次いで高い割合となっています。

[図表4]2024年卒採用の配属先を伝える時期

 「内々定から内定式(または10月1日)までの間」は、大企業では13%あるものの、中堅企業では5%と少なく、中小企業ではゼロになっています。そのほか、「内定式(または10月1日)後、年内」と「年明けから入社式までの間」、そして「新入社員研修期間中」がほぼ同程度の割合になっています。

 配属先を伝えるタイミングについて、「入社式」を起点に、「入社前」(「選考途上」~「年明けから入社式までの間」の合計)と「入社後」(「入社式当日」~「新入社員研修終了時」)で比較してみた結果が[図表5]です。「入社前」が全体では54%と半数を超え、大企業と中小企業ではいずれも51%で約半数、中堅企業では63%と6割を超えていることが分かりました。この設問は今回初めて聞いたものになりますので、過去との数値比較ができないものの、私は配属告知タイミングが随分早まっているものと感じています。今後、この動きはさらに広がっていくものと思われます。

[図表5]2024年卒採用の配属先を伝える時期(入社前後比較)

[注][図表4]の「その他」を除いて集計

2024年度も初任給アップが続く

 政府の働きかけや物価高の影響もあり、2023年度は本当に久しぶりに初任給アップの動きが広がりました。あるメガバンクでは、16年ぶりの初任給改定ということで一気に5万円のアップとなるなど、引き上げ額も話題となったものです。2024年の春闘を前に、政府は経団連などの団体に対して引き続き賃金アップを要請しており、2024年度の新卒初任給についてもアップの動きは変わらないものと思われます。
 2024年4月入社者の初任給改定の予定を確認したところ、全体では「変わらない」が56%で最も多いものの、残り44%の企業では増額を予定しています[図表6]。増額幅の割合で最も高かったのは「5千円から1万円未満の増額予定」の20%で、次いで「5千円未満の増額予定」14%などとなっています。

[図表6]2024年4月入社者の初任給の前年比較

[注]「3万円以上の増額予定」という回答はなかった。

 従業員規模別に見ると、「変わらない」の割合は中堅企業68%、中小企業60%と6割以上なのに対して、大企業は39%と4割以下になっており、2024年度も初任給アップに関しては大企業が全体を引き上げる形となっています。
 増額幅の割合で最も高いのは、大企業と中小企業では全体と同じ「5千円から1万円未満の増額予定」で、それぞれ28%、20%となっています。それに対して、中堅企業では「5千円未満の増額予定」が17%で最も高く、「5千円から1万円未満の増額予定」は10%にとどまります。
 今回、「3万円以上の増額予定」と回答した企業は1社もありませんでしたが、「1万円以上の増額予定」(「1万円から2万円未満の増額予定」と「2万円から3万円未満の増額予定」の合計)とした企業が、大企業と中小企業ではいずれも13%だったのに対して、中堅企業では4%にとどまるなど、増額幅は中堅企業が他の企業規模に遅れをとっているようです。

さらに競争が激化しそうな2025年卒採用

 ここからはいよいよ2025年卒採用の動向を見ていきましょう。まずは、2024年卒採用と比較した採用計画数の増減です。全体では、「前年並み」が51%と半数を占める中、「増やす」の16%に対して、「減らす」はわずか3%にとどまり、「増やす」企業のほうが多くなっています[図表7]
 従業員規模別に見てみると、いずれの企業規模でも「前年並み」が最も多く、大企業と中堅企業ではそれぞれ64%、60%と6割を超えます。一方、中小企業では「前年並み」は39%にとどまり、「未定」21%、「採用なし」29%となっています。「増やす」の割合は、中小企業では8%にとどまるものの、大企業と中堅企業ではどちらも23%と4分の1近くを占めます。一方、「減らす」は大企業ではゼロ、中堅企業で5%、中小企業でも3%と少数派となっています。
 このように、依然として、企業の採用意欲は高止まりしていることが分かります。2024年卒採用と同様、いえそれ以上に厳しい採用戦線になることが推測されます。

[図表7]2025年卒採用の計画数の前年比較

 次に、ここ数年で採用ターゲット層の学生の変化を感じているかを尋ねてみたところ、全体では、「あまり変化していない」39%、「まったく変化していない」13%で、これらを合計した「変化していない」派(以下同じ)は52%と半数を超えるものの、「大きく変化してきている」3%、「やや変化してきている」26%を合計した「変化している」派(以下同じ)の割合も29%と3割近くあることが分かります[図表8]。また、従業員規模別に見てもこの傾向は大きくは変わらず、「変化している」派が最も少ない中小企業でも25%、最も多い大企業では34%となっています。

[図表8]ターゲット層の学生の変化

 「変化している」派を対象に、ターゲット層が変化してきていると感じる主な理由を尋ねたところ、大企業で最も多かったのは「事業変革に伴う人材要件の変更」で52%、次いで「DX推進等による理系人材のニーズ増加」が41%となっています[図表9]
 中堅企業では、大企業と同じく「事業変革に伴う人材要件の変更」が44%で最も多いほか、同率で「入社後のミスマッチ防止対策」が並びました。一方、中小企業では、「事業変革に伴う人材要件の変更」(34%)に代わり、「入社後のミスマッチ防止対策」が41%で最も多くなっています。
 大企業では41%だった「DX推進等による理系人材のニーズ増加」は、中堅企業では28%、中小企業ではさらにその半分の14%となるなど、従業員規模が小さくなるほど、まだDX推進に注力できていない様子がうかがえます。あるいは、そういう人材を社内に囲い込むのではなく、外部に委託する前提で考えている企業が多いのかもしれません。

[図表9]ターゲット層が変化してきている主な理由(複数回答)

大企業は自社ホームページでインターン募集

 ここからは、2025年卒採用に向けたインターンシップについての結果を紹介します。まずは、インターンシップの実施状況ですが、全体では「前年は実施していないが、今年は実施する」が5%、「前年同様に実施する」が58%と、合わせて63%の企業が「実施する」(以下同じ)と回答しています[図表10]。従業員規模別に見てみると、大企業では「実施する」が83%、中堅企業では72%といずれも7割を超えるのに対して、中小企業では44%と半数を下回っています。「前年は実施したが、今年は実施しない」とする企業も5%あるなど、中小企業ではインターンシップの実施は負担が大きく、積極的になれない企業が多いことが推測されます。

[図表10]2025年卒採用に向けたインターンシップの実施状況

 インターンシップの実施時期では、ピークは「2023年8月」で57%となっており、次いで「2023年9月」45%、「2023年12月」44%、「2024年1月」42%などが多くなっています[図表11]
 かつては3月1日の採用広報(会社説明会・エントリー)解禁を直前に控え、駆け込み的に2月に実施する企業が非常に多く、年間を通じてのピークであった時代もありましたが、今回の調査では「2024年2月」は32%にとどまり、「2023年10月」(34%)や「2023年11月」(33%)よりも少なくなっています。3月1日の重みが随分と軽くなってしまった感があります。

[図表11]2025年卒採用に向けたインターンシップの実施時期

 次に、インターンシップの募集方法について見てみると、中堅企業と中小企業では「就職ナビ」とする企業が最も多く、それぞれ73%、61%となっています[図表12]。かつては、大企業においても募集方法で最も多いのは「就職ナビ」でしたが、今回の調査では「就職ナビ」(54%)よりも「自社ホームページ」(62%)のほうが多くなっています。「就職ナビ」が就職情報会社と大学団体との申し合わせで、オープン日・インターンシップ申込日について大学3年の6月1日以降との縛りを受けているのに対して、「自社ホームページ」であれば何の制約を受けることもなく、いつでも募集告知を開始できる点が重要視されているものと推測できます。
 もっとも、近年では「就職ナビ」も専用アプリによるインターンシップ募集告知を先行させたり、オープン日自体も5月中にフライングしたりするなど、実質的にはかなり緩い縛りになってきているようではあります。なお、中堅企業においても「自社ホームページ」の活用は57%と6割近くに達しているのに対して、中小企業ではまだその半分に近い32%にとどまり、「就職ナビ」頼みの実態がうかがえます。

[図表12]インターンシップの募集方法

 その他、規模による違いを見てみると、大企業は「大学キャリアセンター」や「大学研究室・ゼミ」といった大学ルートによる告知を積極的に行っていることが分かります。

インターンシップで独自路線を行く中堅企業

 最後に、既に2023年12月までに実施したインターンシップの形式と、対面形式で実施した場合の日数タイプについて見てみましょう。
 実施したインターンシップの形式は、全体で見ると「すべて対面形式で実施」が42%、「対面形式とオンライン形式を混合して実施」が44%で拮抗(きっこう)しており、コロナ禍でもてはやされた「すべてオンライン形式で実施」は15%にとどまっています[図表13]

[図表13]実施したインターンシップの形式

 従業員規模別に見ると、規模による違いが明確に現れました。大企業では、最も多かったのは「対面形式とオンライン形式を混合して実施」で64%となる一方、「すべて対面形式で実施」は25%、「すべてオンライン形式で実施」は11%と1割程度でした。中堅企業でも「対面形式とオンライン形式を混合して実施」が最も多かったものの39%にとどまり、「すべて対面形式で実施」(36%)とそれほど大きな開きはありません。「すべてオンライン形式で実施」が25%と、他の企業規模の2~3倍となっていることも特徴です。「オンラインから再び対面へ」という時代の変化についていけていない企業が少なくないようです。一方、中小企業は「すべて対面形式で実施」が72%と圧倒的な割合を占め、「すべてオンライン形式で実施」は8%と1割を下回るなど、「対面形式」に大きく(かじ)を切っている様子が分かります。

 対面形式で実施したインターンシップの日数タイプを見てみると、大企業は「1週間程度」が最も多く41%、次いで「1日程度」が38%、「2~3日程度」が25%で続きます[図表14]

[図表14]対面形式のインターンシップの日数タイプ

 中小企業においても、最も多かったのは「1週間程度」の35%であり、次は「1日程度」が30%、「2~3日程度」と「2週間程度」がともに22%で続くなど、大企業と極めて近い傾向となっています。それに対して中堅企業では、「1週間程度」はわずか10%にとどまり、「1日程度」が最も多い43%、次いで「2~3日程度」38%、「半日程度」が29%となるなど、他の企業規模とはまったく異なる結果となっています。「対面形式」でインターンシップを実施したとしても、三省合意の要件に沿った「1週間以上」のプログラムはあまり視野に入れていないものと推測されます。

 次回は、今回の調査の続きを報告します。

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
1986年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。2007年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
https://www.hrpro.co.jp/