2024年02月07日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2024年2月

ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介

(調査・編集:主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 今年も昨年に続き、大卒初任給引き上げのニュースが出始めました。第一生命ホールディングスでは、転居を伴う転勤がある大卒の内勤職の場合、現在の27万6000円から約16%引き上げて、2024年4月入社の新卒社員の初任給は32万1000円になるとのことです。2020年4月以来、4年ぶりの引き上げとのことですが、32万1000円には基本給のほか一定時間の残業代に相当する勤務手当等が含まれるようで、基本給と手当の内訳については公表されていません。
 他の生命保険各社も引き上げを明らかにしており、それぞれ一定時間の残業代を含めて、日本生命保険が30万1000円(基本給24万1000円、3万円増)、住友生命保険が28万5000円(基本給23万5000円、2万5000円増)、明治安田生命保険が29万4820円(基本給は公開なし)などとなっており、国内大手の金融機関の初任給が30万円前後となる時代が訪れています。
 大手金融機関は、以前から他業種や他規模の金融機関と比べて入社後の昇給幅の高さは指摘されていましたが、これまで初任給については他社とあまり差をつけない運用がされてきていました。今回の初任給引き上げの動きから、近年の人材獲得競争をはじめ、それだけ各社を取り巻く環境の変化の大きさがうかがえます。
 ただし、表面的な初任給の大幅引き上げで大喜びの就活学生に対しては、賞与の算定はあくまでも基本給部分だけで、手当部分は含まれないことをしっかり説明してあげてほしいものです。

1day仕事体験が主流の中堅・中小企業

 さて、今回は、前回に引き続きHR総研が実施した「2024年&2025年新卒採用動向調査」(2023年11月29日~12月8日)の結果をお届けします。ぜひご参考にしてください。
 前回は、2025年卒採用向けにすでに実施した対面形式のインターンシップについて取り上げましたので、今回はオンライン形式のインターンシップに関するデータから見ていきましょう。
 まずは、オンライン形式のインターンシップ・仕事体験(以下、インターンシップ)の日数タイプですが、従業員規模別に見てみると、1001名以上の大企業では「半日程度」が33%で最多ではあるものの、「1日程度」、「2~3日程度」、「1週間程度」がいずれも26%となっており、「半日程度」が突出して多いわけではなく、さまざまな日数タイプのインターンシップが実施されていることが分かります[図表1]。これに対して、301~1000名の中堅企業では「半日程度」が67%、300名以下の中小企業では71%と7割を超えるなど、他の日数タイプを大きく引き離しています。また、大企業では26%あった「1週間程度」は、中堅企業、中小企業ともにゼロです。中堅企業・中小企業では、セミナーや会社説明会に近い内容がインターンシップとして展開されていることをうかがわせる結果となっています。
 その一方で、中小企業では「3週間~1カ月程度」のインターンシップを実施した割合が、大企業の4%を大きく上回る14%に達しているのが注目されます。プログラム内容に興味が湧きますね。

[図表1]オンライン形式のインターンシップの日数タイプ

資料出所:HR総研「2024年&2025年新卒採用動向調査」(2023年11月29日~12月8日、以下同じ)

[注]「1カ月以上」という回答はなかった。

 次に、オンライン形式のインターンシップで実施された内容タイプを見てみましょう。大企業では、「ケースワーク/グループワーク」が81%と大半の企業で導入されているのに対して、中堅企業、中小企業ではそれぞれ44%、43%と半数を下回ります[図表2]。逆に、大企業で59%の「業界・事業紹介」については、中小企業で71%、中堅企業に至っては94%とほとんどの企業において実施されています。
 大企業では、対面形式だけでなくオンライン形式でも44%が実施している「実務体験(全員同じ)」が、中堅企業では6%、中小企業に至ってはゼロとなっています。前述した日数タイプで「半日程度」が突出しており、セミナーや会社説明会に近い内容が展開されているのではと記しましたが、それを裏付けるデータと言えるでしょう。

[図表2]オンライン形式のインターンシップの内容タイプ

 そのほか、「社員との交流」が大企業では22%にとどまるのに対して、中小企業43%、中堅企業では67%と7割近くにまで達するのも大きな違いです。

インターンシップを採用選考に活用する大企業が急増

 インターンシップと採用選考をどう結びつけているのかを確認した結果が[図表3]です。「選考と結びつける」と回答したのは、大企業が46%、中堅企業が37%、中小企業が39%となっており、大企業が中堅企業・中小企業を上回ります。「選考とは結びつけないが、優秀な学生においては考慮する」の割合も、大企業が38%で他の規模よりも多く、両者を合計した「何らかの選考と関係する」(以下同じ)の割合は、大企業では85%にも及び、中堅企業・中小企業とは15~20%の開きがあります。大企業のほうがインターンシップを選考に活用していることが分かります。もっとも、中堅・中小企業が実施しているセミナー・会社説明会に近い内容では、参加した学生が優秀かどうかを評価できるだけの材料が得られていないからとも考えられます。

[図表3]インターンシップと選考との関係

 こちらに面白いデータがあります[図表4]。大企業におけるインターンシップと選考の関係を経年比較してみたところ、今回の2025年卒採用では85%にも達している「何らかの選考と結びつける」の割合は、コロナ禍真っ最中の2022年卒採用の調査では69%、コロナ禍前の2019年卒採用の調査では56%となっており、大企業ではインターンシップを選考に活用する割合が年々高まっていることが分かります。特に「選考と結びつける」と回答した割合は、2019年卒採用の22%から、コロナ禍以降は選考時期の早期化に合わせて46%に跳ね上がっています。

[図表4]大企業におけるインターンシップと選考との関係(経年比較)

 次に、「選考と結びつける」と「選考とは結びつけないが、優秀な学生においては考慮する」と回答した企業だけを対象に、対面形式とオンライン形式で学生の見極めやすさに違いはあるのかを聞いてみました[図表5]。その結果、全体では「対面形式のほうが見極めやすい」が75%と4分の3を占め、残り25%は「同程度である」と回答し、「オンライン形式のほうが見極めやすい」はゼロでした。以前、面接についても対面形式とオンライン形式の違いを聞いたことがありましたが、その際には面接相手の服装や体つき、身ぶり手ぶりといった非言語情報に惑わされることなく、言語情報(発言内容)に集中でき、オンライン形式ならではのメリットを挙げる声もありました。しかし、インターンシップは少し違うようです。従業員規模別に見ると、「対面形式のほうが見極めやすい」の割合は、大企業では58%、中堅企業では81%、中小企業に至っては100%と、規模が小さくなるほど対面形式を推す声が多くなっています。

[図表5]インターンシップの実施形式による学生の見極めやすさ

[注]「オンライン形式のほうが見極めやすい」という回答はなかった。

 では、学生をより見極めやすいとされる対面形式でのインターンシップは増えているのでしょうか。対面形式でのインターンシップの実施割合を前年と比較してもらったところ、企業規模にかかわらず、7割前後の企業が「変わらない」と回答したものの、2~3割程度の企業が「増加している」と回答し、「減少している」との回答は中小企業の一部で見られただけでした[図表6]。インターンシップの対面回帰は着実に進行しているようです。

[図表6]対面形式のインターンシップ実施割合の前年比較

解禁半年前にピークを迎える大企業のセミナー・説明会

 次に、セミナー・会社説明会の開催時期について、従業員規模別に見てみましょう。これまでは、就活ルール上での採用広報解禁である「3月」がピークになることが通例でしたが、今回の結果を見る限り、中堅企業・中小企業では「2024年3月」がピークであるものの、大企業ではピークにはなっていません[図表7]。「2024年3月」は、中堅企業の50%に対して、大企業は26%と半分程度にとどまります。大企業では、その半年近くも前の「2023年11月」が34%で最多となっており、次いで「2023年10月」が32%で続きます。「2023年8月」には既に26%となった後、目立った大きな山はなく、30%前後が「2024年4月」まで続きます。
 中堅企業は、ピークの「2024年3月」以外にも「2024年1月」45%、「2024年2月」40%など、他の規模よりも高い割合を示しています。一方、中小企業では、「2024年3月」は38%でピークとなっていますが、それ以外に30%を超える月はなく、全体的に低い割合となっています。「個別企業セミナーは開催しない」とする中小企業が28%と3割近くに及ぶことも特徴となっています。

[図表7]セミナー・会社説明会の開催時期

 セミナー・会社説明会の実施形式についても確認してみましょう。全体では、「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」が37%で最多であり、残りの形式は約20%で拮抗(きっこう)していますが、規模によっても異なるようです[図表8]。大企業と中堅企業では、全体と同じく「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」がそれぞれ40%、50%で最多となっていますが、中小企業だけは「対面形式のみで実施」が39%で最も多く、「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」は22%にとどまります。ただ、「対面形式のみで実施」と「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」を合わせた「対面派」と、「オンライン形式のみで実施」と「オンライン形式を主軸に対面形式でも一部実施」を合わせた「オンライン派」での比較では、いずれの規模も「対面派」が50%以上を占め、多数派となっています。セミナー・会社説明会における対面形式への回帰は、規模を問わず、着実に進行していると言えます。

[図表8]セミナー・会社説明会の実施形式

ChatGPTの普及が「より面接重視」の採用を加速

 2022年12月に登場したChatGPTをはじめ、採用・就職活動におけるAI活用が話題になることが増えています。では、採用活動に一体どのくらいAIは活用されているのでしょうか。採用選考活動におけるAIの導入状況をまとめた結果が[図表9]です。
 「検討中」と回答した企業がどの企業規模でも6割前後に達し、はっきり「活用しない」とする企業は大企業で17%と2割を下回り、中堅企業・中小企業ではいずれも31%となっています。
 既に活用している企業の割合においては、中堅企業・中小企業ではいずれも少数でしたが、大企業では「書類選考(エントリーシート)のみに活用する」(6%)、「面接選考のみに活用する」(2%)を抑えて、「書類選考(エントリーシート)と面接選考の両方に活用する」が19%と2割近くにも及ぶことが分かりました。エントリーシートの選考におけるAI導入は、ソフトバンクがIBMの「Watson」の活用を始めた2017年(2018年卒採用)から徐々に広がりを見せていましたが、面接(動画面接)でのAI活用もエントリーシート選考に近いところまで、既に進んでいるようです。

[図表9]選考活動へのAIの導入状況

 2024年卒の就活生では、エントリーシート作成にChatGPTを活用した学生の割合は17%でした(HR総研×楽天みん就「2024年卒学生の就職活動動向調査」2023年6月1~12日。文系理系別の利用状況は、本連載「2023年9月」参照)。しかし、ChatGPTを活用してエントリーシート作成サービスを提供する就活サイトが現れたり、ChatGPTやその活用方法の認知がさらに広がりを見せたりしている中で、2025年卒学生におけるChatGPTの活用率は確実にさらに高くなることでしょう。企業は、その対策をどのように考えているのでしょうか。
 エントリーシートにおけるChatGPT対策を確認したところ、全体では62%が「様子を見ている」、29%が「対策する予定はない」とし、「対策をしている」と「今後、対策する予定」を合わせた「何らかの対策を予定する」(以下同じ)は8%にとどまりました[図表10]。エントリーシートが多く集まる大企業においては、看過できない問題だと考える企業が少なくなく、「何らかの対策を予定する」と回答した企業は20%に及びます。対策の内容をフリーコメントで求めたところ、「使用しないで自分の考えを書くようにと一文加える予定」といった学生の良心に呼び掛けるだけの対策もあれば、「こちらもChatGPTで一次スクリーニングする」といった、AIにはAIで対抗するといった回答までありました。本当に「ChatGPTで一次スクリーニング」なんて、できるものなのでしょうか。もうこの領域になってくると、素人には何が可能で、何が不可能なのかも分からなくなってきますね。

[図表10]エントリーシートにおけるChatGPT対策

 ChatGPTが広がってきたからというわけではありませんが、以前からエントリーシートが就活学生に与えている負荷の大きさが問題視されてきました。近年は、書類選考を合格した実際のエントリーシート例が、企業別に就活サイト上で公開されるなどの影響から、従来以上に内容の似通ったエントリーシートばかりが増えるなど、エントリーシートの是非や有効性が問われ始めています。そこで、今後のエントリーシートの導入取りやめ意向について聞いてみました[図表11]
 その結果、エントリーシート導入率の高い大企業では、「取りやめる予定はない」と回答したのは79%と約8割に及ぶものの、「25卒採用から取りやめる(予定)」6%、「今後、取りやめることを検討している」11%を合わせた2割近い企業が、取りやめを視野に入れていることが判明しました。ChatGPTは、うまく活用すればビジネス上、非常に便利なツールである反面、本人の思考や文章力などを測る採用選考時のエントリーシートにおいては、本来それが持つ意味を根底から覆してしまうツールにもなり得ます。エントリーシートが本来の役割を果たせないとなると、これまで以上に面接のウエートが高まらざるを得ないということでしょう。

[図表11]エントリーシートの導入取りやめ意向

人事は学生の何を見ているのか

 では、企業が面接で重視している質問や、確認したい能力はどんなものなのでしょうか。フリーコメントで回答してもらいましたので、その一部を抜粋して紹介します。

【企業が面接で重視している質問】

ものの考え方を確認できるような質問(1001名以上、メーカー)

入社してどのような職種で何をしたいか(1001名以上、IT・ソフトウェア)

彼らが感じるやりがいと目指していること(1001名以上、IT・ソフトウェア)

当社でなければならない理由、当社にどれくらいの熱意があるか(301~1000名、メーカー)

自分の考えがあるか、コロナの間どうしていたか(301~1000名、金融)

失敗談や課題解決のために取り組んだこと(301~1000名、サービス)

困難に直面した時の対応(300名以下、メーカー)

自主的に取り組んだ内容(300名以下、メーカー)

自分が何になりたいのか、どうしたいのか等、将来のこと(300名以下、メーカー)

目標を達成するためにどんな努力をしたか(301~1000名、メーカー)

受け身の姿勢ではないか、自発的に行動できるタイプか(300名以下、メーカー)

自分の強みや失敗談をヒアリングし、学生のコンピテンシーを探る(300名以下、メーカー)

コロナ禍での過ごし方、取り組んだこと(300名以下、メーカー)

人生観を探る質問。どんなことが幸せか、人生における仕事の重要度の割合など(300名以下、メーカー)

社会性、他の人との関わりを持った経験(300名以下、IT・ソフトウェア)

チームで仕事をすることに抵抗がないか(300名以下、IT・ソフトウェア)

希望する職種で働いているイメージを喚起する質問(300名以下、サービス)

チームで成果を出すためにどんな取り組みを行ったのか(300名以下、サービス)

【確認したい能力など】

リアルな場でのコミュニケーション力(1001名以上、メーカー)

チャレンジ経験(1001名以上、メーカー)

人柄の良さと地頭の良さ(1001名以上、サービス)

コミュニケーション力とストレス耐性(1001名以上、サービス)

ストレス耐性(301~1000名、メーカー)

自律性(300名以下、IT・ソフトウェア)

働く上での意欲、成長意欲(300名以下、サービス)

コミュニケーションの取り方と語学能力(300名以下、サービス)

 また、質問ではありませんが、次のようなコメントもありましたので紹介します。

学生に寄り添った面接、会話を重視する(301~1000名、メーカー)

会社の実情を話すようにしている(301~1000名、運輸)

面接官側に「Z世代の特徴」を事前にレクチャーし、「今までの常識を変えてほしい」と伝えている(301~1000名、商社・流通)

大企業の半数は年内に面接開始

 続いて、面接選考の開始時期について確認してみましょう[図表12]。中堅企業では、採用広報の解禁時期である「2024年3月」が21%で最多となっています。中小企業の最多は「2024年7月以降」の30%ではあるものの、「2024年3月」も23%とそれに次ぐ高い割合となっています。これに対して大企業では、「2024年3月」が最多とはいえ、「2023年12月」や「2024年2月」などの他の多くの月と同じ13%にとどまり、面接開始のピークという感じではありません。
  時期を区切って集計してみると、「2023年6月以前」から「2023年12月」までを合計した「年内」に面接を開始する企業が、大企業で45%と半数に近く、中堅企業で31%、中小企業で16%と、規模が小さくなるにつれ割合は低くなっています。「2024年1月」と「2024年2月」を加えて「採用広報解禁前(2024年2月まで)」まで広げると、大企業では66%と3分の2に達し、中堅企業は48%で半数近く、中小企業では28%とまだ3割に満たない状態となっています。大企業が選考を先行して実施し、次いで中堅企業、そして中小企業が追いかけるという流れは今年も続きそうです。

[図表12]面接選考の開始時期

 次に、面接の実施形式はどうでしょうか。全体では、「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」が最多で42%、次いで「オンライン形式を主軸に対面形式でも一部実施」が27%と続きます[図表13]。ただ、「対面形式のみで実施」も21%と高く、「対面形式のみで実施」と「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」を合わせた「対面派」(以下同じ)は63%と6割を超えます。

[図表13]面接の実施形式

 従業員規模別で見ると、いずれの規模でも「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」が最多であることは変わりません。ただ、中小企業は34%で最も低い割合にとどまり、「対面形式のみで実施」(33%)と拮抗する形になっています。「対面派」の割合では、中堅企業が69%で最も多く、中小企業が67%でそれに続きます。大企業においても「対面派」は54%で半数を超えているものの、「オンライン形式を主軸に対面形式でも一部実施」と「オンライン形式のみで実施」を合わせた「オンライン派」が38%で、他の規模よりも高い割合となっています。一次・二次面接はオンライン形式で実施し、最終面接だけは対面形式で実施するというパターンの企業も、大企業ではまだまだ多そうです。

大企業の3割が内定出しを前倒し

 最後に内定を出し始めるタイミングについても確認してみましょう。大企業と中堅企業では、「2024年4月」が最多で、それぞれ15%、17%となっています[図表14]。中小企業においては、最多は「2024年7月以降」の31%であるものの、「2024年4月」も19%で二番目に高くなっています。内定出し開始のピークは、「2024年4月」だと言ってよさそうです。

[図表14]内定出しの開始時期

 ただし、大企業と中堅企業では最多である「2024年4月」もそれほど高い割合ではなく、「2023年6月以前」から順次分散的に内定出しが開始される様相を呈しています。
 「2023年6月以前」からの累計で見てみると、「採用広報解禁前」に大企業で47%、中堅企業でも45%と半数近くが内定を出し始めているのに対して、中小企業では22%と、それらの半分以下にとどまります。内定出しのピークである「2024年4月」までの累計で、中小企業はようやく55%と、半数を超えることになります。一方、大企業と中堅企業では、「2024年4月」にはそれぞれ74%、71%と7割を超えるまで進むことになりそうです。[図表12]で見たように、面接選考の開始時期では大企業よりも遅れを取っていた中堅企業ですが、内定出しのタイミングでは大企業に追い付く形になっています。中堅企業のほうが、1人当たりの選考期間(選考ステップ)が短いのではないかと考えられます。

 では、この内定を出し始めるタイミングは前年と比較して早くなっているのでしょうか。内定出しの開始時期について、前年との比較を聞いた結果が[図表15]です。いずれの企業規模でも最多は「ほとんど変わらない」で、68~81%となっています。「遅くなる」と回答した企業は3%以下にとどまり、残りの企業は「早まる」と回答しています。その割合は、大企業で30%、中堅企業で26%、中小企業で16%と、規模が大きくなるほど「早まる」割合が高くなっています。
 中でも「早まる(1カ月超)」とする割合が、大企業と中小企業で11%、中堅企業に至っては19%に及びます。中堅企業においては、面接以上に内定出しを早めようとしている企業が多いことがうかがえます。2025年卒採用における内定出しのスケジュールは、2024年卒採用と比較してもさらに早まることは必至のようです。

[図表15]内定出しの開始時期の前年比較

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
1986年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。2007年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
https://www.hrpro.co.jp/