株式会社オフィスあん 代表取締役、株式会社人事のまなび場 代表取締役
四六判/336ページ/2000円+税/日本法令
BOOK REVIEW ―人事パーソンへオススメの新刊
■ 組織の活動を積極的に阻害するなど、明らかな問題社員の場合、退職勧奨や解雇を進める上での手続き等に重きが置かれがちだ。一方で、仕事面や人間関係面の想像力に欠ける行動によって上司・同僚らに負担を強いてしまうような、本書のテーマである問題社員“未満”(以下、「未満」社員)の場合、上司は彼らとの向き合い方や育成方法に悩むケースがほとんどであろう。筆者はこの点に着目し、一番の問題は、「未満」社員に振り回される周囲の同僚や組織全体、そして何より上司自身が、時間と労力を奪われ、疲弊することにあると指摘する。本書では、そうした「未満」社員の対応に悩む上司や人事担当者に対し、社会保険労務士・人事コンサルタントとして活躍する筆者が、心理学の理論を援用しつつ、多角的なアプローチと実践事例を紹介している。
■ 本書は6章構成。第1章ではわれわれが働く現代の特徴を俯瞰的に捉えて提示し、第2章では、「未満」社員がもたらす周囲の人々への影響や、彼らと向き合う際の心理的スタンスに言及している。第3章では、「未満」社員の対応を考える大前提として、問題社員を解雇する上での手続きや等級制度の在り方、社員の評価方法などに触れ、第4章以降で本題である「未満」社員に対する具体的なアプローチや心構えについて詳説する構成となっている。
■ 本書の魅力は理論的かつ豊富な実践例であろう。第4章では、「未満」社員に欠けている能力を「タスク想像力」と「対人想像力」の二つに分けた上で、上司に求められる振る舞い方を解説している。前者では“解釈の余地を与えない”“やらないことを明確にする”といった具体的指示の重要性を説き、後者では交流分析の「人生態度」という心理学理論を基に、対人関係における心理状態を4パターンに分類し、「未満」社員の心理を踏まえた対応方法を理論立ててまとめている。第6章で紹介されている18もの個別事例も、現場でよく目にするケースばかりで非常に実践的である。筆者がセミナーで使用しているチェックリストも多数掲載しているため、管理職研修の教材として活用するのも有益だろう。
内容紹介 解雇や懲戒に至るような「問題社員」ではないまでも、会社、上司、周囲に迷惑をかけたり、ミスを繰り返して仕事がすすまないなど、やっかいな存在の「問題社員〝未満〟」と言えるような社員に対して、上司や会社の人事部門がどう接していけば改善を図れるのか。 社会保険労務士、人事コンサルタントとしての著者の経験とエリック・バーンの「交流分析」の手法をベースに、上司・人事担当者が「問題社員〝未満〟」にどう向き合っていくべきかをわかりやすく説いた本。 |