青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(青山ビジネススクール)教授
A5判/248ページ/2900円+税/中央経済社
BOOK REVIEW ―人事パーソンへオススメの新刊
■ ジョブ型人事は、2000年前後から“成果主義人事と補完性のある「職務基準」の人事制度”という形で日本国内でも認知度が高まり、各社で導入が進んだ。当時はジョブ型人事のもたらす変化の本質が十分に理解されていなかったが、昨今になって「ジョブ型人事とは何か」という本質的な問いが再度クローズアップされ、理解を深めようとする企業や人事・労務担当者も多いようだ。本書は、2000年から2002年にかけて「賃金制度の日英比較」をテーマに、日英18社を対象とする事例研究を行った著者が、世界標準のジョブ型人事における賃金決定方法やキャリア開発などを解説する。
■ ジョブ型人事について、ジョブ遂行のために必要な人的要件を「見える化」するために、「ジョブに連動した人的要件のマーケット(労働市場)での価値によって、昇進や賃金が決定する『マーケット型人事』」となる――と序章で説明している。その結果、マーケットペイ(市場賃金)が普及し、企業はマーケットペイを基準に賃金を支払う必要がある。こうした認識の下、第1章ではマーケットペイの活用による社員等級や賃金の決定方法、第2章では各ジョブの賃金レベルを直接マーケットペイを参照して決めるマーケットプライシングやマーケットペイデータに関連する事項について、詳しく説明している。
■ 第3章では、日本企業のジョブ型・マーケット型人事のケースを、国内5社の事例を基に紹介する。同章では、自律型人材開発の促進や、組織と個の対等な関係の変化などについても幅広に触れている。序章から第2章までで取り上げた基本知識が、第3章の国内企業事例によって実践的な理解へとつながっていく構成となっている。欧米発のジョブ型(マーケット型)人事の本質やマーケットペイの活用法、日本企業における同人事方式の機能的な運用方法までを網羅した、ジョブ型の理解と実践のための1冊に仕上がっている。
ジョブ型・マーケット型人事と賃金決定――人的資本経営・賃上げ・リスキリングを実現するマネジメント 内容紹介 ジョブ型の普及に伴う人事の変化について、賃金決定、人材・キャリア開発等を解説。 ジョブ型人事の導入企業5社の取組みを通じて、ジョブ型人事が変えるさまざまな側面を具体的に紹介。 序 章 ジョブ型・マーケット型人事が解決する日本の課題 |