2024年03月13日掲載

人事労務関係の税務相談 - 第5回 社宅関係 ~社宅の水道光熱費を会社が負担する場合、給与課税は必要?

アクタス税理士法人

飯塚和正 いいづか かずまさ
パートナー 税理士

藤田益浩 ふじた ますひろ
ディレクター 税理士

Q1 社員に社宅を貸与する場合

 当社は社員のための社宅を所有しており、賃貸料を徴収した上で貸与をしています。社員から徴収している賃貸料については、相場よりも低い価額ですが、給与課税は必要ですか。

A 原則として給与として課税することになるが、実際に受け取っている賃貸料が、通常の賃貸料相当額の50%相当額以上である場合は、課税する必要はない

 会社が、社員に無償または低額の賃貸料で社宅を貸与する場合には、本来受け取るべき通常の賃貸料相当額と実際に徴収している賃貸料との差額は、社員に対する経済的利益の供与となり、原則として、給与として課税することになる(所基通36-15)。
 ただし、実際に受け取っている賃貸料が、通常の賃貸料相当額の50%相当額以上である場合には、その経済的利益の供与については課税する必要はない(同36-47)。
 なお、「通常の賃貸料相当額」は、原則として次の算式により計算した金額となる(同36-41)。

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Q2 社員に家屋を無償で貸与する場合

 当社は、職務の遂行上、勤務場所付近に住み込みが必要となる社員に家屋や部屋を無償で用意しています。このようなやむを得ない場合においても、社宅として取り扱われますか。

A 勤務場所付近に住み込みが必要となる理由が非課税となる条件に該当する場合には、社宅の貸与について給与として課税をする必要はない

 社員が、職務の遂行上やむを得ない事情により、会社から家屋の貸与を受け、指定された場所に居住する場合には、その居住による経済的利益は非課税とされている(所令21条4号)。
 具体的には、次のような家屋等の貸与が非課税となる(所基通9-9)。

(1)船舶乗組員に対して提供した船室

(2)早朝または深夜に出退勤をする社員に対し、その作業に従事させる必要上、提供した家屋または部屋

(3)通常の勤務時間外においても勤務を要することを常例とする看護師や守衛等、その職務の遂行上、勤務場所を離れて居住することが困難な社員に対し、その職務に従事させる必要上から提供した家屋または部屋

(4)次の家屋または部屋

イ 早朝または深夜に勤務することを常例とするホテルや旅館等の業種で、住み込みの社員に対して提供した部屋

ロ 季節的労働に従事する期間、その勤務場所に住み込む社員に対して提供した部屋

ハ 鉱山の掘採場に勤務する社員に対して提供した家屋または部屋

ニ 工場寄宿舎等で事業所等の構内またはこれに隣接する場所に設置されているものの部屋

 ご質問のケースにおいて、「職務の遂行上、勤務場所付近に住み込みが必要」となる理由が上記の非課税となる条件に該当する場合には、社宅の貸与について、給与として課税する必要はない。
 上記条件に該当しない場合には、Q1の取り扱いをすることになる。

Q3 社員が負担すべき敷金等を会社が負担する場合

 業務の都合上、社員に地方転勤してもらうことがあります。転勤に伴う住居は社員に選んでもらい、契約は社員自身が行っています。権利金、敷金等の負担は会社で行いますが、注意すべき点はありますか。

A 社員契約の物件に対して会社が負担する場合には、社員に対する給与として課税する

1.転勤に伴い会社が負担する敷金等
 社員の転勤に伴い、社員の引っ越し費用を会社が負担する場合には、通常必要と認められる範囲内のものであれば、非課税とされる旅費に該当するため給与として課税する必要はない(所法9条1項4号)。
 ご質問のケースでは、賃貸借契約は社員自身で結んでおり、権利金や敷金を負担すべきは社員ということになる。そのため、これを会社が負担する場合には、それが実費相当額であったとしても、社員に対する給与として課税することになる。

2.会社契約の場合の取り扱い
 会社が社員に貸与するために会社契約により借家を借り上げて、その借り上げに係る権利金や敷金を会社が負担した場合には、社員に対する給与課税はないことになる。

Q4 社宅の水道光熱費を負担する場合

 当社の社宅では社員が数人共同生活をしており、その社宅の電気、ガス、水道等の料金は当社が全額負担しています。この場合、給与として課税されますか。

A 料金の額が居住するために通常必要と認められる範囲内のもので、かつ、各人ごとの使用部分に相当する金額が明らかでない場合に限り、給与として課税しなくて差し支えない

 社宅に居住する役員や社員に対して、会社が水道光熱費などを負担する場合は、通常、給与として課税されることになる。
 しかし、所得税の取り扱いにおいて、“その料金の額がその社宅に居住するために通常必要であると認められる範囲内のものであり、かつ、各人ごとの使用部分に相当する金額が明らかでない場合に限り、給与として課税しなくて差し支えない”とされている(所基通36-26)。
 よって、ご質問のように社宅で共同生活をしている社員それぞれの電気料金などの使用状況を把握することは困難であり、また金額も少額であると考えられるので、全額会社負担として問題ない。
 しかし、社員それぞれの使用分が明確に把握できる場合には、使用相当額の水道光熱費は社員それぞれが負担する必要がある。負担していない場合は給与として課税されることになる。

Q5 社宅の家具を貸与する場合

 社員に対して社宅を貸与する際、自社所有のテレビや洗濯機のほかにリース家具など生活必需品も貸し付けています。これらの生活必需品は無償にしていますが、この場合は給与として課税されますか。

A 家具などを無償で貸与する場合は、給与として課税される

1.社宅とともに家具を貸与する場合
 家具などを無償で貸与する場合は、経済的利益を受けたことになり、給与として課税される。
 給与課税される金額の算定は、自社所有の家具などについては、その家具の定額法による減価償却費相当にその家具の維持管理費用を加算した額など合理的な方法で算出した金額になる。
 リース家具などについては、会社が支払うリース料相当額が給与相当額となる。

2.社宅家賃の通常の賃貸料相当額との関係
 自社所有またはリースによる家具を貸与する場合の経済的利益の額は、原則として、社宅の「通常の賃貸料相当額」の計算とは区別して算定することになる。

Q6 社宅と合わせて駐車場も貸与する場合

 マンションを借りて社宅として利用していますが、合わせて駐車場も借り上げ、社員に貸しています。この場合、駐車場代の50%相当額以上を社員が負担していれば給与として課税されないのでしょうか。

A 社員へ貸与する駐車場は、実際に会社が支払う駐車場代と社員から徴収している賃貸料との差額に対して給与課税される

 駐車場は、「住宅」などに該当せず(所基通36-41~47)、賃貸料の50%を社員から受け取っていれば、給与とされないという、Q1と同様の取り扱い(同36-47)はできない。
 したがって、社員へ貸与する駐車場については、社宅家賃と異なり、社員本人がいくら負担しているかにかかわらず、実際に会社が支払う駐車場代と社員から徴収している賃貸料との差額に対して、給与課税されることになる(同36-15)。
 ただし、駐車場代が個々の契約により明確になっておらず、マンションの管理費などに含まれている場合については、Q1のように社宅家賃に含めて判断することとなる。

執筆者プロフィール

飯塚和正 いいづか かずまさ
アクタス税理士法人
パートナー 税理士

中堅・中小法人から上場企業に対する税務コンサルティング業務を中心に、会計や経営、経理に関するコンサルティング業務に従事。「お客様の身になって考える」ことを常に意識し、お客様の成長と発展のために必要となるコンサルティングサービスの提供を心掛けている。
藤田益浩 ふじた ますひろ
アクタス税理士法人
ディレクター 税理士

中堅・中小企業への税務コンサルティングを中心に取り組んでいる。同族企業経営者の身近なアドバイザーとして、法人・個人双方の立場で親身なコンサルティングを提供。税務や会計に関するセミナー講師も多数行っている。

法人プロフィール

アクタス 税理士法人
アクタスグループは、税理士など約230名で構成する会計事務所グループで、東京(赤坂、立川)、大阪および長野の計4拠点で活動している。中核の「アクタス税理士法人」では、税務相談・申告、国際税務、組織再編、企業再生、相続申告など専門性の高い税務コンサルティングサービスを提供している。