安全サポート株式会社 代表取締役
四六判/242ページ/1400円+税/ディスカヴァー・トゥエンティワン
BOOK REVIEW ―人事パーソンへオススメの新刊
■ 表題の「海外に送り出した社員の命をどう守る?」というテーマは、各国に拠点を置き、各地に社員を派遣している企業にとって、永遠の使命である。特に近年では、コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻を経て、海外での危機管理の重要性はさらに高まっている。本書は、企業の海外危機管理の在り方、危機管理担当者が知っておくべきノウハウや事態別シミュレーション、駐在員や拠点長・出張者が知っておくべき安全対策などについて、幅広く解説している。
■ 本書は全6章構成。第1章では、海外派遣者の危機管理において企業が保持すべき姿勢、果たすべき役割について論じている。第2章では、海外危機管理担当者が取り組むべき平時の予防や準備、危機管理のマネジメントを明示する。その上で、第3章では緊急時のシミュレーションと会社の判断、第4章では海外派遣者自身が取るべき安全対策を扱う。これら二つの章には、事例を用いたQ&Aが多数収録されているため、第1、2章での学びを確認し、自らの知識へと定着するのに役立てられる。
■ 著者の有坂氏は、住友海上火災保険(現・三井住友海上火災保険)のデュッセルドルフ駐在員を経てミュンヘン事務所長に就任し、1999年には外務省に出向するなど、海外での豊富な危機管理実績とノウハウを有する。本書では、各章に有坂氏の経験に基づく注意点が多く取り上げられており、「空港での犯罪被害」「暴動の発生」などの各事例を読み進めながら、読者は海外での危機管理を当事者意識を持って捉えることができる。治安上注意が必要な国を扱う第5章、近時の重大事案などを扱う第6章も含め、海外での危機管理における基礎知識から対策、姿勢や心構えまでを広く学べる1冊だ。
海外に送り出した社員の命をどう守る? 在るべき企業の海外危機管理 内容紹介 イスラエルとパレスチナの問題、ロシアのウクライナ侵攻、台湾有事、パンデミック…… 本書は、軍事のプロではなく、自身も企業の危機管理担当者であった著者だから語れる企業のリアルな現状を踏まえた提案がまとめられている。 |