2024年03月22日掲載

BOOK REVIEW - 『進化するキャリアオーナーシップ』

株式会社富士通ラーニングメディア 著
富士通株式会社、田中研之輔 監修 
A5判/205ページ/2000円+税/FOM出版(富士通ラーニングメディア) 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 「キャリアオーナーシップ」とは、個人が自ら生き方や学び方、働き方を考え、キャリア形成の(かじ)を取ることを指す。「キャリア自律」と呼ばれることもあり、「人材版伊藤レポート」で言及されるなど注目を浴びる考え方だ。本書では、組織と個人がキャリア開発に関する意識を共有し、ともに成長できるサイクルの実現に向け取り組んできた富士通グループによる実践事例を多角的に取り上げ、有識者との対談やインタビュー、討論会を通し、キャリアオーナーシップと人的資本経営に迫る。

■ 第1章と第4章は、本書の監修を務める田中研之輔氏(法政大学キャリアデザイン学部 教授)と富士通CHRO平松浩樹氏の対談である。第1章は対談の前半で、キャリアオーナーシップの本質と、求められる理由を研究と実務の両視点から語り合う。続く第2章は、同社で人事の立場から施策を推進する阿萬野(あまの) (すすむ)氏のインタビューと、現場で実践する立場である同社社員4人の討論会を掲載する。同社が進めるキャリアオーナーシップの支援プログラムに対する、双方の思いが明らかになる。第3章は、同社グループの社員以外も数多く登場し、「同社グループ社員同士」、「勤続年数の長い会社員と複数回の転職を経た会社員」、「フリーランスと会社員」という三つの切り口によるクロストークが繰り広げられる。それぞれ異なる立場からキャリアに対する思いを語り合う内容だ。

■ 田中氏と平松氏による対談の後半となる第4章では、いかにキャリアオーナーシップを組織成長に結び付けるかについて、企業経営の視点から考えを深める。さらに、個人がキャリアオーナーシップを発揮するために、組織と関わる上で意識すべきこととは何かについても考えていく。従業員個人と企業のキャリアに対する認識や捉え方の違いが問題となることも多い中、両者の視点からキャリア形成を考える、示唆に富む一冊だ。

進化するキャリアオーナーシップ

内容紹介
富士通の実践から学ぶ自分らしく生きるためのキャリア戦略

本書は、これからのビジネスパーソンに欠かせない「キャリアオーナーシップ」についての考え方と、今の企業経営の上で重要な「人的資本経営」について、そのかかわりをお伝えする書籍です。

個人と企業が「未来を共に創る」とはどういうことなのか、富士通の平松CHROと法政大学の田中教授による対談を中心に、富士通社員や他企業に勤務する個人の方にもフォーカスを当て、インタビューや事例を交えて生の声を取り上げています。